地球はなぜ生命を宿したのか?暗い太陽のパラドックスへ新たな回答

暗い太陽のパラドックス

地球史前半の太陽は現在より20~30%も暗かったことから、もし地球の大気組成が現在と同じであると仮定すると、20億年前より以前の地球は全体が凍結した状態であったと考えられる。しかし、実際にはそのような地質学的証拠は存在せず,むしろ太古代の地球は現在よりも温暖だった可能性すら示唆されており、矛盾する。これが“暗い太陽のパラドックス”と呼ばれる問題だ。

一般には、過去の大気二酸化炭素濃度は現在よりもずっと高く、その強い温室効果によって温暖環境が維持されてきたと考えれば解決できるものと考えられている。しかし地質学的研究によれば、約22億年前以前の大気二酸化炭素濃度は理論予測よりも低く、二酸化炭素だけでは温室効果が足りない可能性が指摘されている。二酸化炭素の温室効果を補うものとして、メタンが有力視されているが、いまだに完全な解決には至っていない。

12月11付の地球科学分野の論文誌Nature Geoscienceに掲載された論文では、この問題を解決する新しい理論が唱えられている。

温室効果ガスとしてのメタンに着目

当時の地球上には酸素発生型の光合成を行う生物はまだ出現しておらず、地球表層環境は酸素をほとんど含まない条件にあった。生物がエネルギーを獲得するプロセスは酸素を用いず、当時の環境中に豊富に存在していた水素や鉄などを用いる原始的な光合成細菌(水素資化性光合成細菌や鉄酸化光合成細菌など)が基本的なエネルギーの生産を行なっていたと考えられる。

そこで生産された有機物が分解される過程ではメタンが生成される。このメタンがもつ温室効果によって大昔の地球の温暖な気候を説明しようとする試みは以前から行われていた。しかしそのためには、地球内部からの水素の供給率が非常に高くある必要がある。

水素と鉄を利用する細菌

今回の論文では、水素と鉄という異なる電子供与体を利用する複数種の基礎生産者が「共存」する場合には、各基礎生産者が単独で存在する場合と比べてメタン生成率が大幅に増幅されることによって温暖気候が実現していたのではないかと考えられている。

研究グループは、海洋微生物生態系モデル、大気光化学モデルおよび気候モデルを結合させた数値モデルを開発し、水素資化性光合成細菌と鉄酸化光合成細菌がそれぞれ単独に基礎生産を行う場合と、両者が共存する場合について、数値シミュレーションを行った。

その結果、水素資化性光合成細菌のみのケースや鉄酸化光合成細菌のみのケースでは、地球内部からの水素や鉄の供給率が非常に高くない限り大気へのメタン供給率が低いため温暖気候は実現できないが、両者の共存系を想定した場合、大気へのメタン供給率は、それぞれが単独の場合の和にはならず、非線形的に増幅される結果、地球内部からの供給率にはほとんど依らずに温暖気候が実現可能なことが明らかになった(図)。

図 東京大学プレスリリース(http://www.s.u-tokyo.ac.jp/ja/info/5678/)より

暗い太陽のパラドックスの理解は、地球がなぜ生命を宿す惑星になったのかという問題の理解に直結する。さらに、酸素非発生型光合成は酸素発生型光合成に比べて原始的であることから、宇宙ではより普遍的な存在である可能性があるため、太陽系以外の地球型惑星に生命が存在するための条件を議論するための基礎的知見を与えることが期待できる。

論文:
Ozaki et al., Effects of primitive photosynthesis on Earth’s early climate system (Nature Geoscience) www.nature.com/articles/s41561-017-0031-2

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