『Science Exchange』世界中の研究者と「研究のシェア」を 〜LabTech海外事例最前線〜

忙しい研究生活、毎日のように必要な実験に追われ、設備の空きを待つことも少なくないだろう。そんな悩みに応えるのが、世界の研究者と実験・設備をシェアできる『Science Exchange』だ。手間を省けるだけでなく、世界中の研究者とのネットワークもできる。

1.孤独な実験・研究を続けますか?

研究を自分だけで行うには時間が必要なのはもちろん、必要な設備が他の研究者に使われていれば空くまで待たなければならないし、高価な実験道具を買い揃える経済的な負担も大きい。

せっかく買った道具が少ししか使われず、そのまま数年放置されるケースもある。それではさすがにもったいないし、税金の無駄遣いですらある。

また、孤独な研究では行き詰まってしまったときに解決策が見つかりにくい。研究室の仲間も、みんな同じような考えのもとに研究していたり、自分の研究で精一杯であったりすると、協力を求めることが難しい場合も多い。

2.世界中の研究者と実験をシェアしよう

そんな課題を解決してくれるのが、実験を世界中の研究者とシェアできる『Science Exchange』だ。

データベースに登録されている2500以上の研究者・研究機関の中から協力してほしい相手に「実験の代行」や「研究への助言」といった協力を依頼することができる。

研究の見積もりを提出し、承認されて代金を支払えば相手はすぐに作業してくれる。いちいち契約書などを交わすことなく、ネット上で簡単に似た分野の研究をしている世界中の人々に協力を依頼することができ利便性が高い。

現在登録されている研究分野は農学、獣医学、基礎研究、バイオ医薬品、化学、自己治療、食品科学、医療機器に分かれていて生物学関係が中心で、リストを見ながら依頼したい実験に近い専門の研究機関を見つけられる。

実験のサプライヤーの質はISO 9001認証で保証されており、彼ら同士もサービス内で競争があるため、価格は安く抑えられている。月に数回のペースでサプライヤーや新しいサービスは増えてきており、それらはブログで随時紹介されている。

3.研究者同士を結ぶ役割も

Science Exchangeでは自分だけでは困難な実験をアウトソースして時間やお金を節約できるだけでなく、他の研究者と簡単につながることができるのも大きな魅力だ。

設立理念としてはむしろこちらがメインだ。研究者がイノベーションを起こせるようにするため、世界中の科学研究の知見をオープンにすることをビジョンに掲げている。そのため、このサービスを「科学研究のUber」と紹介しているメディアもある。

Science Exchangeはこれまでに世界で数万人が利用している。もう孤独に研究を進める時代は終わりかもしれない。世界中の知見を自分の研究に役立ててみてはいかがだろうか。

4.日本の研究にもっとつながりを

日本では長らく独自で研究を進めることが美徳とされる風潮が強く、研究のシェアという概念がこのままでは受け入れられにくい面もあるだろう。

Science Exchangeに登録されている日本の研究機関も数件とまだ少ないのが現状だ。しかし、研究者の長時間労働や研究費の削減が問題視されている日本で、時間や資金の節約は急務だ。

また日本の研究の課題として海外とのネットワークの弱さはたびたび指摘されている。手軽に海外研究者の知見が得られるScience Exchangeの利用価値は大きいため、少しずつではあるが産業界の研究開発部門を中心として日本の利用者は増えている。

5.まとめ

以上のように、Science Exchangeではネット上で世界中の2500以上の研究者・機関の中から自分の研究に近い分野の協力者を探し、実験を依頼することができる。

設備などをシェアできて実験にかかる時間やお金を節約できるメリットに加え、海外の研究者とのネットワークが容易にできる効果も大きい。設立者が述べているように、Science Exchangeは世界中の研究がオープンなものになるための第一歩となるはずだ。

6.LabTech海外事例最前線

研究の未来をデザインするメディアLab-Onが、研究を加速させる様々なLabTechを紹介する本連載「LabTech海外事例最前線」は毎月新しい調査を報告しています。バックナンバーはこちらから。

連載「LabTech海外事例最前線」
1.『science.ai』に高まる期待:次世代の「Nature」を作るのはあなた?

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