「湿度が高いとインフルに感染しない」は確実か?常識くつがえす研究結果が発表される

冬になって空気が乾燥してくると、途端に感染者が出始めるインフルエンザ。どうしても外せない予定が入っているにもかかわらず感染してしまい、大変な目に……という経験をお持ちの方は多いのではないでしょうか。

インフルエンザ対策には、ワクチン接種やアルコール除菌、マスクの着用、そして湿度を上げることが有効とされており、厚生労働省のウェブサイトにも「加湿器などを使って適切な湿度(50~60%)を保つ」と書かれています。

しかし、このたび、バージニア工科大学とピッツバーグ大学のグループが「湿度が高い環境でもインフルエンザウイルスの感染力は低下しない」という研究結果を発表。Journal of Infectious Desease誌に論文が掲載されています(ページ下部にリンク)。

ウイルスと気道分泌物を混合して実験

空気中をただようインフルエンザウイルスの生態を調べる研究では、その多くがウイルス単体をエアロゾル化して使用しています。今回の研究では、現実の環境を再現するために、インフルエンザと気道分泌物(airway secretions)を混合した液体を使っている点が先行研究と大きく異なる点です。

実験では、A型インフルエンザウイルスのH1N1亜型(Influenza A virus subtype H1N1)と感染者の気道分泌物を混合した液体を実験用ドラム内に噴霧し、1時間後のウイルスの生存率と感染力を調べました。ドラムは内部の空気を撹拌するために一定速度で回転し、内部の湿度は23%〜98%の範囲で7段階に変更されました。

Credit: University of Pittsburgh

※より詳細な実験写真が論文サイト(ページ下部にリンク)に掲載されています

実験の結果、インフルエンザウイルスの細胞感染力は、低湿度・高湿度いずれの環境でも有意に低下しなかったとのこと。論文の著者の一人であるLinsey C. Mar氏は、この研究結果について「驚くべき結果だ。インフルエンザウイルスを含むエアロゾルや液滴の内部でどういうことが起こっているのか、再考するべきかもしれない」と語りました。

研究グループは、再現実験が待たれるとしつつ、今回の研究結果から ①ウイルスが室内に滞留しないように換気を頻繁にすること、②換気装置にはフィルターやUV処理装置などをつけるといった対応が必要だと述べています。

注意!湿度を上げることは無駄ではない

湿度管理がインフルエンザには通用しないかも……という、ちょっと衝撃的な研究結果ですが、シリアスに受け取りすぎなくても大丈夫。これまでの膨大な数の研究から、湿度50〜60%の環境下でインフルエンザの感染者数が大きく低下することが実証されています。さらに、適切な湿度の維持とワクチン接種やアルコール除菌などと組み合わせることで感染リスクを大幅に下げられることは経験的にも明らかです。

気道分泌物がインフルエンザウイルスに対して具体的にどのような影響を与えているのか、また、他のウイルスの型でも同様の現象が再現されるのかなど、現時点では明らかになっていないことも多くあります。そのような状況で、有効な感染対策を「無意味」と断じないようにしましょう。

今後、新たな研究結果が出てきたら、改めて紹介したいと思います。

 

【参考元】

Influenza Virus Infectivity Is Retained in Aerosols and Droplets Independent of Relative Humidity
https://academic.oup.com/jid/advance-article/doi/10.1093/infdis/jiy221/5025997

Flu Virus is Protected by Mucus When Airborne, Regardless of Humidity
http://www.upmc.com/media/NewsReleases/2018/Pages/kormuth-flu-humidity.aspx

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