
ゴールデンウィークも明け、外を長時間歩くと汗ばむほどの暑さになってきました。薄着になる機会も増えてくるこれからの季節、お腹周りのお肉が気になる人も多いのではないでしょうか?しかしお腹周りについた脂肪は、見た目が気になる以上に健康にも害を及ぼします。
メタボリックシンドロームとは
通称メタボと略されるメタボリックシンドロームは「内臓脂肪症候群」とも呼ばれ、心臓病や脳卒中の原因となる動脈硬化性疾患をまねきやすい病態です。
日本では、ウエスト周囲径(おへその高さの腹囲)が男性85cm女性90cmを超え、高血圧・高血糖・脂質代謝異常の3つのうち2つに当てはまるとメタボリックシンドロームと診断されます。
メタボリックシンドロームの原因
メタボリックシンドロームを引き起こす原因としては、カロリーの摂りすぎ、運動不足、遺伝、加齢などが報告されていますが、その仕組みは十分に解明されていません。
琉球大学の研究チームは、硝酸塩/亜硝酸塩が長期的に欠乏するとメタボリックシンドロームを引き起こす可能性があることを明らかにしました。
この研究グループは、『食事中の硝酸塩/亜硝酸塩の長期不足がメタボリックシンドロームを引き起こす』という仮説をマウスにおいて検証しました。
その結果、硝酸塩/亜硝酸塩の含有が少ない餌 を 3 か月投与したマウスでは、有意な内臓脂肪蓄積、高脂血症、耐糖能異常が誘発され、18 か月投与したマウスでは、有意な体重増加、高血圧、インスリン抵抗性、血管内皮機能不全が認められ、22 か月投与したマウスでは、急性心筋梗塞死を含む有意な心血管死が引き起こされました。
上記の異常は、内皮型 NO 合成酵素発現の低下、アディポネクチンの低下、並びに腸内細菌叢の異常と有意に関連しており、これらの機序を介してメタボリックシンドローム、血管内皮機能不全、および心血管死が引き起こされていることが示唆されました。
硝酸塩/亜硝酸塩とは?
硝酸塩とは、硝酸ナトリウム(NaNO3)や硝酸カリウム(KNO3)など、硝酸(HNO3)の水素イオン(H+)が陽イオンと置き換えられたもので、硝酸イオン( NO3-)を持つ塩です 。同様に、亜硝酸塩とは亜硝酸イオン( NO2-) をもつ塩です。
硝酸塩や亜硝酸塩は、普段私たちが食べている野菜にも含まれています。特にレタスやほうれん草、春菊などの緑葉野菜に多く含有されています。
(参考:農林水産省HPより)
硝酸塩/亜硝酸塩の新しい役割
硝酸塩/亜硝酸塩が注目された背景には、硝酸塩/亜硝酸塩が生体の恒常性の維持に寄与する一酸化窒素(Nitric Oxide: NO)を与える働きをすること(供与体であること)が近年明らかになったことがあげられます。
一酸化窒素(NO)はガス状の低分子化合物で、生体の恒常性の維持に重要な役割を果たしています。しかしNOは反応性が非常に高く、酸化反応により亜硝酸塩 (NO2-)や硝酸塩(NO3-)に代謝されます。これまで硝酸塩/亜硝酸塩は不活性で単なる NO の代謝産物としての認識しかありませんでした。しかし最近では硝酸塩が還元反応により亜硝酸塩に次いで NO に変換されるという逆の経路が発見されたことで、NO 供与体としての新しい役割が近年注目を集めています。
メタボリックシンドロームを防ぐには、食事量を減らしてカロリーを抑えるだけでなく、野菜もしっかり食べることも大事なのかもしれませんね。
(参考)