『INSTRUMENTL』で研究資金を効率よく獲得~LabTech海外事例最前線~

研究者にとって、研究資金の獲得は死活問題である。しかし、実際に応募する助成金を探そうとすると、情報が散逸していて見つけにくいことも少なくない。それを解決してくれるのが、Webサービス『INSTRUMENTL(インストゥルメントル)』である。

Google検索は玉石混交

研究資金や助成金を獲得する場合、どのようにして応募先を探すのがよいだろうか。

多くの場合、指導教官や他の研究者からの紹介、大学の掲示板、インターネット検索などを使用することが多いだろう。しかし、人から紹介してもらえるかどうかは運によるところも大きいし、大学の掲示板は情報が整理されていないことも多い。

また、掲示物は大学の職員が貼り出すものなので、研究テーマとしては関連があるのに、自分の学部には関係がないと判断され、掲示してもらえていなかった、といったことも発生する。

Google検索の場合も同じで、気になる情報をクリックしてみると、すでに古い情報であったり、対象者から外れていたり、といったことが起こりうる。掲示板や検索エンジンを使用した情報収集は、必ずしも効率がいいとは言えないのが実情である。

企業・政府から個人まで。研究資金を検索しよう

そういった場合に便利なのが、研究資金の検索・応募支援サービスである『INSTRUMENTL(インストゥルメントル)』だ。自分(やチーム)の情報とプロジェクトについて入力しておけば、マッチしそうな助成金をレコメンドしてくれるという、画期的なサービスである。

米国の企業ということもあり、現状はほとんどの資金提供者が米国を対象としている。しかし、中には世界中、場所を問わず応募できるものもある。環境、地球科学、農業に関する情報がとくに豊富だが、犯罪対策や芸術、リプロダクティブヘルスに関する資金なども数多く登録されており、広い領域をカバーしている。

『INSTRUMENTL』は有料サービスであり「教員・研究室(月額45$)」「非営利団体(月額75$)」「プロ(月額149$)」コースが用意されている。なお、資金提供者と直接連絡が取れるのは「プロ」コースのみで、他のコースは『INSTRUMENTL』を通して連絡することになる。

情報を入力し、あとはレコメンドされるのを待つだけ

登録すると、まずは自分とプロジェクトに関する情報の入力が始まる。個人に関する情報としては、生年月日・国籍を置いている地域・学位などが求められる。また、検索できる資金の中には女性やマイノリティを対象としたものもあるため、それらに応募する意思があるかどうかも選択する。

次に、プロジェクトに関する情報を入力する。豊富なカテゴリから5〜10個にチェックを入れ、希望する資金の規模や用途(奨学金として・学会の開催・アウトリーチ活動など)を選択。あとは、マッチしそうな資金がレコメンドされるのを待つだけである。レコメンドされた資金に関しては、「保存」「無関心」のリアクションを取ることができ、これによってサジェストがさらに正確になるという。

加えて『INSTRUMENTL』にはグラントトラッカーというプロジェクト管理ツールが組み込まれており、「保存」を押した助成金はこれで管理できる。締め切りのリマインダーを受信したり、進捗状況を追跡したり、メモや文書をくっつけて保存しておくことができる。

メモ機能があることによって、自分がどのプロジェクトを、どの助成金に応募したのかという点に混乱することがなくなる。文書を紐付けて保存しておけるのも、関連文書の紛失を防ぐ上で利便性の高い機能である。

日本での今後の可能性に期待

資金提供者の中には、比較的小規模な団体で、情報の見つけにくい団体も多い。実際に資金を獲得した団体のレビューにも「こんな資金提供者がいることすら知らなかった」という声が上がっている。

メジャーな研究資金にはなかなかマッチしにくいテーマであっても、特定の企業や団体にとってはホットなテーマの可能性もある。利便性の高いマッチングサービスは、研究者側だけでなく、有効に資金を使いたい提供者側にもメリットがあると言える。

開発チームが発表している通り、現状はほとんどの資金提供者が米国に拠点を置いている。しかし現在、世界各国の有名大学はこぞってMOOC(オンライン授業)を開講し、留学せずとも学位が取れるシステムを構築している。優秀な人材の獲得がますます激化し、グローバル化していく中で、研究資金の提供者・提供先も、全世界を対象に広がっていくだろうと考えられる。日本での今後の展開が期待される。

LabTech海外事例最前線

研究の未来をデザインするメディアLab-Onが、研究を加速させる様々なLabTechを紹介する本連載「LabTech海外事例最前線」は毎月新しい調査を報告しています。バックナンバーはこちらから。

連載「LabTech海外事例最前線」
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