数学のお兄さんこと横山明日希さんがお笑い数学に本気で取り組む理由 

みなさん数学は好きですか?

読者のみなさんの中には、数学が好きで理系に進んだという人も少なくないかと思います。

確かに難問奇問が解けた時はなんとも言えない爽快感がありますが、数学を楽しむ場は机の上だけとは限りません。今回は、漫才やワークショップを通じて数学の面白さを伝える数学のお兄さんこと横山明日希さんに、数学の楽しみ方と教育の場のあり方について聞きました。

<プロフィール>

横山明日希さん

数学×お笑い、数学×恋愛など、数学と異分野を掛けあわせた独自の切り口で、数学をより身近に感じられる講演やイベントなどを開催している。現在までに全国各地の約200カ所で講演やイベントを実施。また、科学分野でも子供向けの実験教室や大人向けの科学イベントの実施やコミュニティ醸成を行っている。日本お笑い数学協会副会長。
著書に「単位のひみつ モノの数え方」(日東書院本社)、「笑う数学」(KADOKAWA)等がある。

数学のお兄さんは新宿二丁目で誕生した!?

ーー数学のお兄さんとして有名な横山明日希さんですが、数学のお兄さんとして名乗り始めたのはいつごろでしょうか?

ハタチの頃です。大学2年生の時に数学のお兄さんになりました。昔から数字が好きで、大学で数学の勉強をしたいと思い早稲田大学理工学部の数理科学科に進んだのですが、進学してから自分がやりたいことは数学を学問として追求することではないと気がついたんです。当時は「進学に失敗した」と失意にくれていましたが、それでも数学からは離れられず、もんもんとした日々を送っていました。

ーーということは、横山さんとしての数学の楽しみ方は学問と別のところにあったということでしょうか?

そうですね、僕ひとりで数学を楽しむより、数学の楽しさやワクワク感をみんなで共有するのが好きなんだと気づき始めたのです。大学でそういうことを学べないんだったら、学外で数学を使って何かやってみようと考えました。

しかし何からすればいいかわからない。悩んでいた時に新宿の歌舞伎町の居酒屋でたまたま出会ったオネエに相談に乗ってもらったんです。そしたら「あなたの売りは何なの?」と聞かれて「数学が好きってのと、若さやテンションが売りです」と答えたら、「歌のお兄さんとか体操のお兄さんみたいなイメージ?」と言われて(笑)。それで「あ、数学のお兄さんしよう!」と自ら名乗り始めました。

ーーなるほど、『数学のお兄さん』は新宿二丁目で誕生したのですね(笑)!具体的にはどのような活動をはじめたのでしょうか?

最初はどんなことをしているか言えるようにするため、ひたすらネタを集めまくりました。身近な数学ネタとか、数学にまつわる面白い歴史とか、1年ちょっと地道にため続けました。ある程度溜まってからブログの記事にして、1年で100記事くらい出したと思います。あとは友達に会う時に数学の小噺をしたり、ボランティアで人前で数学ネタを披露したりしてました。


キスしやすい身長差は三角比で求められる!数学の無駄遣いをしてみたより

ーーどういった方に数学の話をすることが多かったのでしょうか?

高校生相手に話すことが一番多かったですね。当時は認定NPO法人カタリバという、様々な教育活動を行う団体に所属していたのでそこで高校生に数学の面白さを伝えることをしていました。そこで感じたのは、「教育を受ける場として機能しているのは学校と家だけど、その他に興味を広げられる環境があまりない」ということです。誰でもアクセスできて学問の面白さを伝えられるサードプレイスが新たに必要だと感じました。

ーーサードプレイスは具体的にどういった人向けのものをイメージされていたのですか?

まず初めにアプローチしたいと考えたのは、自分から進んで勉強しようとはしなけれど、機会を与えればのびる中高生でした。そこで大学院を修了した後、進学塾で校舎運営を主務にしつつ数学も教えてました。結果的に生徒数を70人から150人まで増やすことには成功しましたが、サードプレイスとしては自分がしたいこととはほど遠かったのです。どうしても受験指導が中心になってしまうというのと、もっと多くの人に影響を与えられる仕事がしたいと思い、結局1年で辞めてしまいました。

その後は、オンラインでの活動を強化しようと思い、昔から運営していた理系学生のためののコミュニティ』を事業化しようしましたがスケールさせるには時間がかかると判断し、サイバーエージェントに転職し仕事を通してひたすらITの勉強をしました。その間はひたすら仕事のことだけに時間を使っていたので、数学のお兄さん的な活動はあまりできませんでしたがいい勉強になりました。

転機となった日本お笑い数学協会

ーー今ではメディアや講演会で引っ張りだこですが、ここまで来るには様々なご苦労があったのですね。数学のお兄さんとしての活動の転機となった出来事は何かあるのでしょうか?

いやぁ大変でしたね〜(笑)。地道な蓄積を続けた成果なのか、最近では学生向けのイベントや企業での研修会などからお声がけをいただくことは徐々に増えていきました。転機となったのは、一昨年の6月に立ち上げた日本お笑い数学協会です。理系同士のトークイベント『理系ナイト』で吉本の芸人で数学講師もしているタカタ先生と出会い、笑いやエンターテイメントで数学の面白さを伝えようという話になったんです。日本お笑い数学協会はできて1年半ほど経ちましたが、おかげさまでメンバーも増えて、イベントだけでなく動画配信、出張授業もしています。今では僕もメンバーとコンビを組んで漫才したり、1人で漫談したりしています。

ーー仲間が増えることで、気軽に学問に触れられるサードプレイスが増えたのですね。

そうですね。僕がカタリバでやりたかったことも、1人ではできませんでした。しかし仲間が増えたことで、できることは格段に多くなったと思います。

ーー最近は仲間のみなさんと一緒に、初のご著書である『笑う数学』を出版されましたね。

そうなんですよ!日本お笑い数学協会のイベントをテキスト化するべく同人誌『たしかに引きつける!数学小ネタ集』をつくったら評判がよくて、KADOKAWAさんから「書籍化しませんか?」と声かけてもらいました。バカらしいことをマジメに数学的に考察したもの、美しい数字の世界、あんなに苦労して覚えた定理を使わずに解を導き出す方法など、多種多様な数学の話を1冊にまとめています。

数学の先生にとっては実用的でしょうし、数学が好きな人も苦手な人も楽しめるので、笑いながら読んでもらえればと思います。

ーー数学の面白さを伝えるイベントにはどんな方が来られるんですか?

もともと、年齢層を問わず単純に数学を楽しみたい人に向けてイベントをしていました。しかしいざ蓋を開けてみると、学校の先生が意外と沢山来られていたんです。話を聞いてみると、「授業を聞いてもらえない」とか「先生同士のつながりが薄い」といった悩みを抱えている先生が多くいることに気が付きました。自分たちは教育する立場でもあるので、漫才をするだけじゃなくて、「明日から授業に使える」ような、みんなが真似できるネタをやるようになりました。

ーー楽しむだけじゃなくて「誰でも数学のお兄さんになれるような活動」ということでしょうか?ライバルが増えてしまうのでは……?

僕がこれまで数学のお兄さんとして孤軍奮闘していたノウハウを引き継ぐことで、より多くの人に数学の面白さを伝えたい。これが僕がお笑い数学に本気で取り組む理由なんです。だから僕みたいに発信する人が増える事はむしろ嬉しいです。なんなら数学のお兄さんの後継者を育成したいので、興味ある人はTwitterHPから連絡下さい(笑)。

 

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