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研究開発ベンチャー起業のいろは ~政策とその歴史

第1期では研究者の養成や研究施設の整備、研究交流会の推進といった施策への十分な資金投与の拡充を図りました(文部科学省HP)。第2期になると、「新しい知の創造」「知による活力の創出および豊かな社会の創出」という新たな理念が追加されました(文部科学省HP)。第2期におけるこの施策が包括している意図とは何なのでしょうか。本記事では、第2期でメイン施策となった「産学官連携の強化」に着目してみましょう。

経済刺激剤としての科学産業―第2期のキーワードは「産学官連携」

ビジネス イノベーション

「イノベーション・シーズは圧倒的に大学が保有。基礎研究力をもつ大学と産業・ベンチャー企業群の近接性こそが『国際競争力』に直結」-経済産業省作成資料(2001年)より

科学技術政策第2期の開始にあたる2001年は就職氷河期の真っ只中で、社会そのものが将来への漠然とした不安に苛まれていた時期です。雇用情勢の悪化を懸念した政府が考え出したのは、科学技術分野の活性化による社会の再建でした。

 

「将来不安からくる『需要の萎縮』と、潜在需要を開拓できない『イノベーションの欠如』」を解決するべく、新しい産業と雇用機会の拡大、そして経済そのものの活性化のために、科学技術分野をビジネスに発展させる試みが実施されました。大学発ベンチャー企業1000社計画はわかりやすい例でしょう。今回は、この大学発ベンチャーに対する政策や現状、課題に関してお話ししましょう。

この計画は、3年間で大学発のベンチャー企業を文字通り1000社にするというもので、同時に10年間で大学発の特許取得件数を10倍にするというもの。具体的には、民間への技術移転のルールや大学の組織編制など、各種制度の整備、大学教官の特許取得へのインセンティブの付与、あるいは産業人材の教官への活用などが挙げられます(経済産業省作成資料)。

さらに、重点戦略分野として、環境、バイオテクノロジー、情報通信、ナノテクノロジー・材料の4分野に優先的な投資を図るとされました。分野融合的な研究開発を期待する意図があっての施策であると考えられます。

 

The Government of the Start-up, by the Government, for the Society

ネットワーク形成 ビジネス ベンチャー

もともと資本主義や実力主義が主流のアメリカでは、研究開発系の市場におけるベンチャー経済が盛んです(参考)。しかし、概して投資家の裾野が狭い日本でも成り立つものなのでしょうか。実際に政府が考えた制度とそれらの実現可能性について、第2期政策の樹立から現在にかけての評価を通し、見直してみましょう。

前述したように、政府がこの第2期政策で大きな柱のひとつとしたのは、大学発ベンチャー創出促進事業です。まずはじめに政府が着目したのは、地域企業、大学、公的研究機関、技術移転機関(TLO)といった諸機関のネットワークの形成です。創業期のベンチャーにとって、提供されうる諸支援に関する情報や事業会社とのマッチングの機会、そして法的・事務的な知識の3つを得ることは不可欠です。そのためにはベンチャー同士および事業会社とのネットワークの形成が必要不可欠でしょう。

ネットワーク形成のために、先行事例における連携の流れを模範化して示しているほか、外部アクセラレータの紹介などを実施。また、研究発表とは異なるプレゼンスキルをはじめ、ビジネススキルの向上を目指したプログラムの紹介も行っています。TECH PLANTERというシードアクセラレーションプログラムには2013年から109社がプログラムに参加し、2016年には11社が資金調達に成功しています(参考)。

加えて、ベンチャー企業の資金調達のプロセスを円滑化するための政策の1つとして法的な整備も行われました。例として、私募規制の見直しや確定拠出年金制度の導入を実施することで年金資金の活用を推進したことが挙げられます。また、連結納税制度の導入検討や倒産法制の整備などその他の制度の見直しも実施しています。改めて、起業には様々な制度や法律が絡んでいることがうかがえるでしょう。

最新のツール導入でアカデミアと企業の連携を円滑化し、かつ経営面やビジネス関連の法律の問題にも自力で対応できるようにするため、研究開発型ベンチャー企業にむけた相談窓口も紹介されています(参考)。例としては、クラウド型ビジネスチャットツールであるチャットワーク、人工知能を活用した海外発のサービスで法律に関する問題解決ツールであるDo Not Pay、あるいはLINEを活用した弁護士との無料相談など。その他にも経営や法的アドバイスを記した手引きやツールの紹介も記載されています。

また、その他支援制度として見逃せないのは「税制の改革」。所得に含まれる研究費は本来課せられる税額控除割合分の金額を控除される研究開発制や、出資元の企業が出資額の50%を上限に損失準備金を積み立て、企業の損金算入することを可能にするベンチャー投資促進税制。また、ベンチャー企業への個人投資家に対する税制上の優遇措置をとりきめたエンジェル税制というユニークな名前の制度も、1997年度の税制改正の際に新設されています。

ベンチャー起業と事業企業のマッチング支援-成功例と失敗例―

アドベンチャー ベンチャー 研究室発の技術の実用化や人材確保、資金調達。これらのすべてにおいて、事業会社からの資金的、技術的支援は非常に重要であるといえます。前述の制度・法的整備かげもあってか、実際に第2期政策中の2004年には当初の目標であった1000社の立ち上げを達成しています(大学ベンチャーデータベース)。ただし、政策中に政府が支援したのはそれだけではありません。

第2期政策中にはベンチャー企業立ち上げのためのセミナーや講義等が行われ、2004ンから続くイノベーションジャパン・大学見本市は、そのなかでも特に大規模な産学チングイベントです。ここでは、潜在的ベンチャー企業が投資家や協同事業会社と出会うだけでなく、既に起業済みのベンチャー企業が事業の宣伝をしたり、さらには起業やビジネスのノウハウを指導するセミナーが開かれたりと盛りだくさん。2017年度の成果としては参加団体のうちおよそ4分の1が事業会社と具体的な交渉につなげたそうです(イノベーションジャパン2017HP)。また、推進活動のひとつとして、2015年度以降、優れたベンチャー起業に対し内閣府からの表彰が執り行われています(内閣府HP)。ここでは、オープンイノベーションのさらなる推進のために、今後のロールモデルとなりうる取り組みの発掘と世の中への認知の拡大を図っています。

産学連携を成功させ表彰された事例のひとつとして、産総研発の株式会社イーディービーを見てみましょう。

この企業は産総研のベンチャー創出支援制度と創業後の施設利用、研究者の兼業や技術支援、共同研究、ベンチャーキャピタル(VC、ハイリターンを狙った投資会社)の紹介が事業成功のカギであったとしています(参考)。その結果、同社は2017年度に内閣総理大臣賞を受賞しました(内閣府科学技術政策)。

もうひとつ、最新の目覚ましい成果を上げた研究者をご紹介します。京都大学名誉教授の小久見善八氏は、競合関係にある13企業、13大学、4個的研究機関の垣根を越えて連携体制を構築し「高度解析と電池研究の融合」を果たしました(参考)。この業績を受けて、産業界の視点から特に顕著な功績または功労があったと認められ、昨年2017年に日本経団連会長賞を受賞しています。今後も、基礎研究の大学・研究機関と、豊富な開発実績とエンドユーザーとなる各種メーカーの強みが惜しみなく活かされることが期待されています。

 

しかし、産学官連携はもちろん成功例だけではありません。目覚ましい成果の裏側には多くの失敗例もあります。

研究開発型ベンチャーと事業会社の連携が陥りがちな失敗からみえる政策の限界をみてみましょう(経済産業省:産業技術環境局H29)。産学連携において特に目立つのは、技術や人材の質、提供可能な情報量において、事業会社が要求する水準をベンチャー企業が確保できないことです。

また、相手企業との事業の進め方の違い、与信・情報不足により、意思決定者同士の具体的討議に至らないことや、ビジョンの不一致、利益追求に対する姿勢の相違など、アカデミアと民間企業のあいだでどうしても埋めきれない溝により問題が発生するケースがしばしば見受けられます。マーケットにおけるスピードや新規性を重視する研究室発のベンチャーの社風と、既存顧客やブランドイメージを重視して慎重かつ確実性を重視する事業会社の、相互の社内文化や経営スタイルの違いは、産学連携における大きな課題のひとつです。前述したような相談窓口の紹介やビジネスセミナー等の開催協力などが政策としておこなわれているのも、この問題を解決するためです。

このように、産学連携を果たしたベンチャー企業が政府の期待通りに成長するかは、それぞれの企業の手腕に大きく依存します。しかし、「ベンチャー創出」の点に着目すると、ビジネスセミナー・プログラムに参加したベンチャー企業の資金調達における成功例、産学連携イベントの実勢からも、諸々の公的制度や事業実現支援制度は有効であるといえるでしょ う。

研究者の興味関心の赴くままに心理の追究や知的活動に取り組めるアカデミアの世界は、研究者の居場所として非常に居心地の良い環境ではあります。しかし、研究者依頼は決してそこだけにあるわけではないのです。アカデミアの外の広い世界でも、ビジネスの力によってより多くの人々が科学のすばらしさや力を享受し活用できる機会が増えることは、私自身もいち科学者として嬉しく思います。

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