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科学技術政策は「成功」の歴史であるか?-政策が支えた今日の科学技術とその課題

本記事では、科学技術の発展を目指すために国が策定、実行する「科学技術政策」に関して、第1期から現在実行中の第5期までを振り返ります。

今回は、政策そのものが日本の科学技術に与えたインパクトと、研究環境やその発展性に影響している実情などをオーバービューしていきたいと思います。

関心の高まりは政治的優先度の高まりに―「計画」から「法」に

科学技術の促進を図るための調査がおこなわれるようになったのは、1959年に科学技術会議が設置されて以降のこと。科学技術の著しい発展が社会に与えた好影響を踏まえて1986年3月以降に科学技術政策大綱が閣議決定。そののち、科学技術で国際社会と人類全体のために貢献することを目標として掲げ、研究開発基本計画が策定されるようになります。

さらに、1995年には政策における大きな意識改革がありました。科学技術基本法の制定です。これまでは委員会が開かれ計画を立てるといった取り組みが、法によって行使力を増して実施されるようになりました。それ以降、5年ごとに科学技術基本計画が決められるように。これが現在第5期をむかえている科学技術政策です。

 

同政策のはじまりから現在に至るまでの流れを一言で振り返ると

「科学技術について、必要に応じて話し合う体制を作る」

「科学技術について常時検討し、科学技術促進事業運営を活性化させる」

「5年ごとに策定する基本計画を確実に実行し、研究環境の整備を進める」

このような形であるといえるでしょう。高度経済成長期、経済システムや製造業における技術力が日本を米国に次ぐ世界第2位の経済大国へと押し上げたことで、科学技術への注目度は飛躍的に高まりました。その後、IT革命がおこり、一般家庭にもインターネットが普及したことで、今後は情報技術が目覚ましい進歩を遂げることに。こうした変遷から、社会における科学技術分野の需要や関心が時代とともにさまざまな文脈で高まってきたことが伺えます。

政策は時代のトレンドを反映する

これまで5期にわたる各々の期の特徴を、わかりやすく一言で表してみましょう。

第1期(1996~2000) 科学技術の競争力・研究開発能の引き上げを目指す改革

第2期  (2001~2005) 「知」をキーワードに重点分野および産学官連携の強化を図る

第3期  (2006~2010) 重点分野のさらなる強化、および選択と集中による戦略の向上を目指す

第4期  (2011~2015) 社会課題を解決するためのアプローチの強化、科学技術とイノベーションの一体化を推進

第5期  (2016~2020) 先見性・持続性の強化及び国際的課題への貢献を重視している

 

基礎研究分野の研究環境およびインフラの整備からはじまり、続いて知の創造や経済界とのつながりといった点への注目、そして人材の育成やオープンイノベーションを目指した科学技術政策。このように、化学技術政策の目標設定は年々移り変わってきました。

それぞれの期のカラーの違いが感じられると思いますが、これらは各期・各時代の政治・経済・社会的状勢の違いや流れも反映されていることが考えられます。ここで、どのような時代背景・状勢であったのか、おおまかな経済史と科学史も重ねて年表に示しました。

経済史 科学史 近代

http://iwata-yamana.jp/japan_economics_post_war.pdf (参考)

科学が社会を変えるのか、社会が科学を変えるのか。どちらにせよ、双方が強く影響しあう関係であることは間違いありません。年表にまとめたイベントは歴史のほんの一部ですが、施策がどのような時代背景のもとお、どのような課題を見つけてどのようにアプローチしようとしたのかを垣間見ることができると思います。

課題があり、解決目標をたて、アプローチをかける。そうなると、次に気になるのは結果。続いては実際に政策によって得られた結果を中立な目線からご紹介しましょう。

政策に対するポジティブ評価―過去の好実績

さて、科学技術政策を基にした研究開発投資は、研究環境や研究実績にポジティブな影響をもたらしたのでしょうか。また、政策という形をとったことで、経済や社会の発展は実際に、促されたのでしょうか。

いずれの質問についても、答えはYESです。いくつかの具体例を取り上げてみましょう。

科学技術政策第3期から第4期にまたがって施行された「最先端研究開発プログラム(2009~13年)」では、5年間にわたり1000億円のこっかよさんが当てられました。このプログラムで支援をうけた30名の研究者には、iPS細胞研究の第一人者である京都大学の山中伸弥氏、ロボットスーツHALの研究開発を進める筑波大学の山海嘉之氏などが名を連ねます。次世代質量分析装置の開発・製造に力を入れた島津製作所の田中最先端研究所も、莫大な支援金を受けたことで好実績を上げています(島津製作所ウェブサイト)。

また、第2期政策の産学官連携推進事業のひとつ「大学発ベンチャー企業1000社計画」は、2004年にその目標を達成。同時期は研究開発型ベンチャー企業設立のピークにもあたり、毎年100社前後の企業が設立されました。なかには、特許申請や上場を果たした企業もあります(文部科学省資料)。特許申請の促進や上場企業の誕生によって科学技術が社会を活性化したといえる好例でしょう。

政策に批判的な意見と評価―施策に不足したポイント

これまで示してきた実績をみると、政府の働きかけは功を奏していると感じられます。しかし、必ずしもすべてが首尾よく運んだわけではありません。本章では、今までの施策で効果が疑わしいおや、新しく浮き掘りになった課題を見直してみましょう。

科学技術政策予算 実績

内閣府HP参照http://www8.cao.go.jp/cstp/budget/index2.html

まず、予算と実績について。上記のグラフからもわかる通り、第2期以降のすべての機関で投資目標額を達成できていません。

近年、日本のGDPは年々成長傾向にあります。GDP成長率に比例して各政策にかける国家予算も増やすべきところを、いずれの期間においても、科学技術政策に関しては期待できるであろう予算の増額がみられません。消化すべき予算の未達や、予算の伸びそのものの低調具合に対する批判の声が、日本経済団体連合会や産業競争力懇談会など諸機関からあがっています(参考)。

また、技術政策論の専門家で立命館大学教授および日本学術会議連携会員を務める兵藤友博氏は、自身のウェブサイトで「科学技術基本計画の政策は、経済産業の振興をはかる政策と化している」と主張。つまり、科学技術政策が「科学技術そのものを発展させるため」の政策ではなく、「経済や産業を発展させるため」の政策としての性質を帯び始めているのではないかということです。

2018年のノーベル医学生理学省を受賞した本庶佑氏。同士の受賞につながった成果は、1990年から2000年にかけてのものがほとんどであり、20年の歳月をかけてそれらが世界に認められたのです(参考:ノーベル財団Press Release)。また、歴代の受賞者たちも同様の境遇をたどり、長い時間をかけた末にノーベル賞を手にしています。

このように、科学において顕著な成果を上げるには、長い時間と莫大な投資、そして何よりも「先の見えない研究を忍耐強く続けることを是とする価値観」が必須であることがおわかりいただけるでしょう。兵藤氏が「競争的資金の副作用」と呼ぶ現象として、外部資金獲得に必死になった研究者たちが、わかりやすい結果を出そうとして助成を受けることが常態化したと指摘していますが(参考)、この点も見直すべきでしょう。

現在の科学技術政策は、今後も日本人のノーベル賞受賞者を輩出できるシステムとなっているのでしょうか。彼が日本人で最後のノーベル賞受賞者になる可能性はゼロとは言い切れないかもしれません。科学技術政策のありかたに日本の研究の未来がかかっていると言っても過言ではないのです。

政治は科学を、科学は世界を変える

社会 科学 つながり

「科学政策」という言葉の定義づけを初めて行ったのはフランスで、1971年のことです。経済協力開発機構(OECD)のレポートには「科学政策は、科学研究に対する投資、制度、創造性、活用に影響を与える決定を行う際に、十分に検討し一貫した判断を下す基礎となるもの」と定義されています(参考)。

時に世界を騒がせ、社会を動かし、これまでも人類の歴史を彩ってきた科学。時代を変えるような大発見も、実は小さな成果の積み重ねであることが珍しくありません。ひとつひとつの研究や発見がもつ影響力は、決して小さく見積もられるべきではないのです。

科学研究をできる環境そのものも、ないがしろにするべきではありません。学生や大学関係者、はたまた企業や公的研究機関の研究者は、自衛・自立のためにも、国政における科学の立ち位置や政策・支援に関する知識と情報を持っておくことは大事です。

筆者は、科学技術シリーズで取りあげていくこれらの記事が、科学に携わる方、科学の恩恵を受けている全ての人にとって意義のあるものとなることを信じております。

 

 

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