
こんにちは、Shojinmeat Projectの田中です。
皆さん研究生活を楽しんでいますか?
日頃の実験によって新しいものができたり、
分からなかったことが解明されるのは楽しいものですよね。
一方で、研究室のみでの生活に不満を感じている方も多いのではないでしょうか?
もっと多くの人と研究(分野)の面白さを共有したい。
異分野の研究者の知見が欲しい。一般の方と意見交換をしてみたい。
思いは人それぞれでしょう。
しかし、学会やシンポジウム以外のどこに機会があるか、思いつかない方も多いでしょう。
そこで今回は私の実体験をもとに、新しい研究発信の場の提案したいと思います。
それは・・・・・・
言えば同人誌即売会です。下の画像は去年のコミックマーケット(コミケ)です。
私は去年の夏から、「純粋培養肉(純肉)」の研究進捗を同人誌として発表する活動をしています。これは「細胞によるものづくり」を推進する有志団体Shojinmeat Projectの活動です。
出展目的は将来の食糧生産技術についての情報発信、参加者の方との意見交換でした。
2016年冬季コミケ3日目の様子。400部が5時間弱で完売しました。
なぜコミケで研究発表??と疑問に思う方も多いでしょう。
研究発信の場という一面
同人誌即売会=マンガという印象が強いかもしれませんが、評論系同人誌も多く扱われています。科学テーマを扱う評論系サークル※も少なくありません。
有機合成テクニック集、アニメキャラの目の色についての分子生物学的考察、現役ポスドクらが編集した「月刊ポスドク」、美少女人形への人工知能の実装 etc..マニアックなテーマが扱われ、そのバリエーションは増えつつあります。
執筆者の方と話をしてみると、何らかの研究バックグラウンドを持っている場合がほとんどでした。まだ少数派ではありますが、同人誌を通した情報発信を行う研究者がいることは確かです。
実際に出展してみると、買いに来る方々がサークル運営者と交流をしている場面が目立ちます。流行の研究について熱心に聞く一般の方もいます。
同人誌即売会は研究バックグラウンドの有無に関係無く、誰もが科学を楽しみ共有できる場であると分かりました。1種のオープンサイエンスとも言えます。
では、なぜ同人誌即売会がオープンサイエンスの場として成立するのでしょうか?
※評論系の同人誌について詳しく知りたい方は、同人誌委託販売を扱うCOMIC ZINさんのサイトが参考になります。
同人誌即売会が研究発信を面白くする、3つの理由
1.「表現の自由」という強み
同人誌即売会は原則「表現の自由」によって成立しています。
そのため、頒布される同人誌は個人の趣向が明確に反映されます。
通常の科学誌には載せにくい内容(程度は様々です)も扱える点が面白さに直結しています。勿論、科学的に正しいことが前提です。
アニメや漫画のネタを使用したものも多く、結果的に一般層にも研究がリーチしやすいという利点もあります。バイオ研究者で構成されたサークル生命科学同女子会さんの同人誌には良い例であり、一部のファンから支持を得ています。
設営完了! 東Q-39bにてお待ちしております。 pic.twitter.com/bSYRArNs6v
— 生命科学同女子会@冬コミお疲れ様でした! (@girlsjamboree) 2016年12月31日
2.同人誌から垣間見える執筆者の熱意
執筆者の研究実装に対する熱意を作品から感じ取れるのも魅力の一つです。
端的に言えば、「そこまでやるか!」という内容に対する清々しさとも言えます。この点は研究バックグラウンド有無に関係なく楽しめるポイントになっています。
特に情報系研究(AI、機械学習、データ解析)はバイオや化学と比べると、個人レベルの実装ハードルが低い分野のため際立った開発系コンテンツも多くなっています。
声優にまつわるデータ解析を主とする日本声優統計学会さん、画像解析システムを研究するSIG2Dさんの発表はその好例です。
今月9日にある技術書典2でのお品書きが出来ました! C91で出した SIG2D'16 と、既刊の SIG2D '15/'14 を持っていきます。 https://t.co/V4IpCo9zNq pic.twitter.com/8pA3wJyWq0
— SIG2D @ 技術書典2 え-23 (@SIG2D) 2017年4月2日
3.一般参加者のテクノロジーに対する感度の高さ
最後にこれは即売会ならではでありますが、一般の参加者のテクノロジーに対する高い感度が挙げられます。
この背景として、アニメやマンガの影響が挙げられます。
ロボット、人工知能、人工食糧、宇宙開発、VRなど科学技術を扱った創作物は数多く存在します。また、同人誌即売会という場であるが故、同様のコンテンツに触れている方が多いのも事実です。
実際に私が運営したサークルに買いに来た人には、
「同じようなネタを手塚治虫の漫画で見たから・・・」
「人工的に食糧生産して月で生活したい。これからも応援したい。」
とおっしゃる方もいらっしゃいました。
同人誌即売会が切り開くオープンサイエンスへの第一歩
このように同人誌即売会は異分野の研究者の知見を拾うことは勿論のこと、一般の方々と間近で研究を共有できる場です。
学会やシンポジウムのみでは得られない体験です。
面白い研究であっても、それが研究者の世界から外へ出ないのは余りに勿体ない。
少しでも多くの方と研究成果を共有し、実現したいビジョンを共有し、皆で研究を盛り上げていく。
同人誌即売会には、オープンサイエンスの秘訣が詰まっているように感じます。
皆さんも一度足を運んでみては如何でしょうか。
最後に・・・
私は次回の夏のコミケにも出展予定です。抽選が外れなければ、ですが。願わくば会場にてお会いしましょう。
細胞培養で自給自足してそうな人間がいれば、多分私です。
それではまた今度!!