• キャリア
    必要とする人に最適な広告を!株式会社GeeeN若手エンジニアインタビュー
    2018年4月9日
  • キャリア
    いま理系×広告業界が熱い! 採用にもデータをフル活用するセプテーニグループ
    2018年4月2日
  • 学術
    狙い目は「先輩の少ない分野」―AidemyCEOが語る「今、AIプログラミングを学べばトップに立てる理由」とは
    2018年2月24日
  • キャリア
    全ての業界で求められるデータサイエンティストの最先端と魅力に迫る ARISE analytics様インタビュー
    2018年4月5日
フラクタルの研究は自然科学に何をもたらすか

フラクタルとは、部分を拡大・縮小しても同一の幾何的なパターンが現れる図形や構造を指す。シンプルなパターンが再帰的に繰り返されたシダ植物の葉やプログラミングの練習課題で出会うことのできるフラクタル図形は、単に見た目に美しいだけでなく、自然科学全般や一部の社会科学にまで応用されることもある。フラクタルの持つ性質が自然現象の研究にどう利用されるのかを、「自己相似性」と「特徴的な空間スケール」をキーワードに見ていこう。

フラクタルとは

フラクタルの研究の歴史は物理や数学の他の分野に比べて浅く、1970年代からB. B. Mandelbrotが取り組み始めたことがよく知られている[1]。代表的なフラクタル図形であり、彼の名前を冠したマンデルブロ集合(図1)に見られるように、図形の一部を取り出して拡大すると元の図形と同一のパターンが見られる。これは「自己相似的である」と表現され、フラクタルの最も重要な性質の一つだ。

図1 マンデルブロ集合

自己相似的な図形はそれ自身と同じパターンが大きいスケールにも、小さいスケールにも続いている。拡大・縮小によってそのパターンが変化することがないため、たとえば人間の身長おおよそ1.5メートル、マンションの高さおよそ10メートルといった、そのパターンの典型的なサイズを表す「特徴的な空間スケール」が定義できない。よってフラクタル図形は特徴的な空間スケールを持たない図形である、と表現することもできる。

フラクタル図形は、その次元が整数でない場合があるというのも興味深い特徴だ。日常的な感覚では、1次元は線、2次元は面、3次元は立体...と表現される。しかしフラクタル図形に次元の考え方を適用すると、「1.2618...次元の無限に複雑な曲線」といった奇異な性質を持つこともある。線と面の中間、面と立体の中間ともいうべき図形がフラクタルだ。

特徴的な空間スケールを探る

フラクタル図形は特徴的な空間スケールを持たず、どこまで大きい・小さいスケールを見ても自己相似的であることには触れた。しかしそれは理想化された、大きさに制限のない空間上での話であり、実際にわたしたちが生きている世界に存在する図形の多くは大きさに限界がある。

現実世界に存在するフラクタルの例として、海岸線の形状がしばしば引き合いに出されるが、海岸線は地球の大きさを超えることはない。また、海岸を拡大していけば小さな半島やさらに小さな岬といった相似のパターンが現れるが、波打ち際の石一つのスケールまでいくと自己相似的ではなくなる。

このように、現実に存在する図形はフラクタルとしての性質を持つとしてもその空間スケールの範囲は限定されている。これには、図形が存在する空間の広がりの限界や、もしくは図形を拡大するとどこかで図形を構成する最小単位が見えるようになってくるためだ(図2)。

図2 海岸線の拡大と縮小。拡大しすぎると小石や砂粒といった最小構成単位が顕著になり(右上)、縮小しすぎると島や大陸といった図形の大きさの上限が顕著に見えるようになる(左下)。

自然科学では、図形がフラクタルであるようなスケールの範囲に限界があることを逆に利用して研究に役立てようという試みが始まりつつある。大気科学では、すすなどの空気中に漂う微粒子がクラスターを形成する過程や、積乱雲の水平分布のパターンをフラクタルの観点から説明する研究[2],[3]が行われている。

たとえば人工衛星から観測した熱帯の雲について図3のように空間スケールごとに図形の次元を求めたとき、次元が一定である空間スケールの範囲内では図形は特徴的な空間スケールを持たないと言える。逆に言えば、次元が一定の値から外れるところがその図形の特徴的な空間スケールである可能性がある[4]

図3 空間スケールごとのフラクタル次元と自己相似性の破れ

ランダムに見える雲に水平方向の大きさの上限はあるのか、また電極上で成長する金属の結晶のクラスターに最小単位となる大きさはあるのか。こうした自然科学の疑問に答えるために、フラクタルの性質を利用する解析が有用であると考えられており、未開拓ながら興味深い問題として研究が進められている。

フラクタルはいまだ歴史が浅く、発展途上にある研究分野だ。しかし、自然科学を研究するうえでものの形の複雑さを定量的に扱う道具をもたらし、数学と物理学を繋ぐ役割を担うことが大いに期待されている。

参考文献
[1] B. B. Mandelbrot, The Fractal Geometry of Nature (Freeman, San Francisco), 1982
[2] Sorensen, C. M., The Mobility of Fractal Aggregates: A Review. Aerosol Science and Technology, 2011
[3] Cuomo, V., Pietrapertosa, C., Serio, C., and Tramutoli, V., Assessing the impact of cloud morphology on infrared sounder scan geometry. International Journal of Remote Sensing, 1999
[4] 高安秀樹, フラクタルの物理, 物性研究, 1985

関連キーワード
学術の関連記事
  • 地域産業と大学はどう手を結ぶか?ー地域密着型の産学連携事例紹介
  • ビジネス ベンチャー
    研究開発ベンチャー起業のいろは ~政策とその歴史
  • 科学史 近代 経済史
    科学技術政策は「成功」の歴史であるか?-政策が支えた今日の科学技術とその課題
  • 産学官連携の3ステップ「基礎研究・開発研究・商品化」を担う機関は日欧米でどう違うのか
  • フラクタルの研究は自然科学に何をもたらすか
  • 生体分子を「発見する」とは?~推理小説的に読み解く分子生物学~
おすすめの記事