• キャリア
    必要とする人に最適な広告を!株式会社GeeeN若手エンジニアインタビュー
    2018年4月9日
  • キャリア
    いま理系×広告業界が熱い! 採用にもデータをフル活用するセプテーニグループ
    2018年4月2日
  • 学術
    狙い目は「先輩の少ない分野」―AidemyCEOが語る「今、AIプログラミングを学べばトップに立てる理由」とは
    2018年2月24日
  • キャリア
    全ての業界で求められるデータサイエンティストの最先端と魅力に迫る ARISE analytics様インタビュー
    2018年4月5日
地域産業と大学はどう手を結ぶか?ー地域密着型の産学連携事例紹介

本記事は、科学技術の発展を目指すために国が策定、実行する「科学技術政策」に関して、第1期から現在実行中の第5期までを振り返る連載企画です。

最近、地方大学にみられる地域密着型の講義や研究のスタイル。自然環境や地域産業とのつながりの中で、大学はその立ち位置をどのように活かしているのでしょうか。昨今のグローバル化の動きの中で、いま一度、ローカルな科学の活性化に着目してみましょう。

産官学連携を促進する3つの事業

「研究開発ポテンシャルを有する中核的な都市とその周辺に着目し、同エリアにおける産学官連携事業の促進を通じて大学等の『知恵』を活用し新技術シーズを生み出し、新規事業等の創出、研究開発型の地域産業の育成等を目指す」

これは、都市エリアにおける産学官連携を促進するために文部科学省が打ち出した方針。この方針を基に、研究交流事業や共同研究推進などの事業が展開されました。

施策開始時に対象とした事業は①連携基盤整備型、②一般形、③成果育成型(発展型)の3つ。連携基盤整備型では、「産学官連携の実績がある地域において新技術シーズ創出をはかる」ことを目的に課題の探索や研究交流を行います。残り2つに関しては、「一般形の終了地域のうち、今後の発展が見込まれる地域において、さらなる発展と継続的な新事業の創出をはかる」ことを目的とし、産学官連携の経験がある事業の展開を目指すというものです(参考)。

連携基盤整備型の規模の目安は事業につき年間0.6億円程度で、一般形においては1億円程度。発展型においては年間1.4億円を、いずれも3年間支援されるかたちになります。開始された2002年度には19の地域が採択され、総額25億円の予算が当てられています。

地域に貢献した大学シーズー連携からうまれた産業事業

では、実際に政策として取り組まれた事例にはどのようなものがあるのでしょうか? 地域への貢献および大学シーズ成長における影響という側面から見てみましょう。

今回紹介するのは、2003年度から連携基盤整備型として採択された秋田県米代川流域の事例。これは、地場産業の木材産業の活性化を達成するため、秋田県立大学と地域の民間企業が協業した例です。具体的には、

①木材の採集から廃棄に致るまでの循環を最適化しシステム化を目指した「秋田スギ等地域材流通システムの構築」
②新たな木質材料の生産供給の提案を目指した「地域材を用いた木質材料及び構法の開発とその実現化」
③廃棄予定の木材の二次利用法の開発提案を目指した「木質バイオマスの総合利用」

の3つの研究テーマを挙げています。拡大の過程で参画機関が当初の3.5倍に増え、高い地域波及効果を体現した例として評価されています。

実は、秋田スギに関しては2002年度にも連携基盤整備型として取り組まれており、当時の実績として、「事業採択によって研究者と事業者・官職がお互いに顔が見えることが発展要因のひとつである」との好評価をつけています(「自己評価報告書」1ページ目)。

さらに、学会参加や学術論文の執筆などの成果も。事業終了後も、秋田県のみならず外部資金の調達にも成功(参考)。2008年度からは別途計画を策定し、能代市は地域資金として1.06億円もの委託研究費を獲得しています。経済的な効果や技術的インパクトが見込まれ、事業と研究の両者にとって成功したと言える事例でしょう。

政策のその後ー大学シーズからうまれた学問領域

産学連携は「協業して終わり」ではありません。その先の事業と研究の継続があってこその「成功」と言えます。

新潟大の日本酒学はまさにその「成功例」とも呼ぶべき事例です。この事例の目標と内容を「大学の取り組み」「産業側の取り組み」「行政機関の取り組み」の3つの視点から見てみましょう。

「日本酒学(Sakeolory)の普及」は、2018年春より新潟大学で始まった産官学連携事業。日本酒に関して、原料の生物学的研究から流通やマーケティングといった商学的領域までをカバーし、分野横断的な研究と教育を実現するべく始まりました。「日本酒学」は世界初の学問領域であり、この領域自体の発展も目的のひとつです(参考)。

日本酒に関するあらゆる講義が学生と一般参加者の両者に向けて開講され、どちらも定員を超える申し込みがあるほどに注目を集めました。その評判や注目度の高さもあって、同年11月から約1カ月間、東京・文部科学省にて日本酒学をテーマとした展示が実現しました。

この学問領域は、発酵や技術における知見だけでなく、医科学や経済学にまでまたがっているようで、同年8月に行われた国際シンポジウムでは幅広い分野からも注目を得ていた模様。ワイン大国であるフランスのボルドー大学のワイン科学研究所とのコラボレーションも実現しています(公式FaceBookページ)。

広がる「大学ー地域」コミュニティ形成の潮流

地域を巻き込んだ大学の活動は活発になりつつあります。日本酒学プロジェクトに携わる新潟大学の鈴木一史教授は、アカデミストジャーナルのインタビューにて「大学は街のなかにあって街の中で生きているのだなということを実感する」とコメントしています。

自然環境や地域産業と大学のシーズを組み合わせる産官学連携は、事業の展開や経済発展だけでなく、学問の発展にも寄与します。地方や地域から始まる小さな一歩が、日本の科学を推し進め、新たな価値を創造することができるのです。千里の道も一歩から。グローバル展開が急かされる流れが主流となりつつ昨今、今こそ地方の土壌に埋もれる大学のシーズに目をむけ、水を与え、陽の目をみさせることで未来は変わるでしょう。

関連キーワード
学術の関連記事
  • 地域産業と大学はどう手を結ぶか?ー地域密着型の産学連携事例紹介
  • ビジネス ベンチャー
    研究開発ベンチャー起業のいろは ~政策とその歴史
  • 科学史 近代 経済史
    科学技術政策は「成功」の歴史であるか?-政策が支えた今日の科学技術とその課題
  • フラクタルの研究は自然科学に何をもたらすか
  • 生体分子を「発見する」とは?~推理小説的に読み解く分子生物学~
  • なぜ生物は生物たりえるのか? ― 生命の理解を加速する「クライオ電子顕微鏡法(cryo-EM)」
おすすめの記事