塗るだけじゃ物足りない!次世代のUV対策は「飲む」日焼け止め!?

紫外線には2種類ある?肌へのダメージのメカニズムとは

立夏を越え徐々に薄着の日が増えるこの頃ですが、薄着をすると特に気になるのが紫外線。紫外線はシミやそばかすなどの原因となるだけでなく、健康被害にもつながる重大な問題です。

オゾン層は紫外線さえぎる効果をもっており、フロンガスの排出がその破壊につながっていることが問題となっています。高緯度地域を除いた地表でのオゾン層消失の傾向は薄れつつあるものの、オゾン層の破壊物質の現存レベルは依然高い状態で維持されています。気象庁によれば、1990年代はじめの紫外線量の観測開始以降いずれの国内観測地でも紫外線量が年々増加傾向にあり、紫外線への警戒は怠らないほうが良いといえるでしょう。

さらに、スマートフォンやPCの画面から発せられるブルーライトが含む波長も、紫外線と同様に肌ダメージを与えるという研究結果も。太陽に当たらないインドア派の方も油断は禁物です。

では、紫外線は具体的にどのような悪影響をもたらすのでしょうか?それを知るためには、紫外線の構造を知る必要があります。紫外線は、主に2種類の異なる波長の光により構成され、皮膚の奥まで届く波長の長い(320~400 nm)紫外線を"UVA(紫外線A波)"、皮膚の浅い部分に届く波長の短い(300~320 nm)紫外線を"UVB(紫外線B波)"とよびます。

地上に照射される紫外線のうち90%を占めるのはUVA。UVAはUVBに比べ波長が長く、エネルギーはUVBよりも低いのが特徴です。しかし、その照射レベルは時間や季節、緯度や軽度などの影響をあまり受けず、エネルギー量を保ったままガラスや薄い雲なども通過してしまうという特徴があります。

UVAが肌に引き起こすダメージの種類は主に2つ。皮膚の細胞の酸化ストレス応答系の働きの阻害と、紫外線ダメージによる細胞組織の繊維化の促進です。環境ストレスを受けた皮膚の細胞は酸化応答をすることでダメージを最小限に抑えますが、皮膚深部にまで侵入したUVAは酸化ストレス応答系の働きを阻害します。さらに、紫外線による肌のダメージによる組織の繊維化を促進する作用を及ぼすことがわかっています。これらの現象は、特にアジア人において光老化を引き起こすとして問題視されています。

UVAよりもエネルギーが大きいUVBはDNAに直接的なダメージを及ぼします。二重らせん構造の破壊を引き起こし、遺伝子の原材料であるえっきに変異を生じさせ、細胞周期や代謝を阻害する原因となるのです。日焼けにみられる肌の赤みはUVBによって引き起こされる組織の炎症反応。後にシミやしわ、黒化など細胞の老化や皮膚の病態発生を引き起こすとされています(参考)。

塗る日焼け止めの2分類:物理的な日焼け止めと化学的な日焼け止め

紫外線から肌を守るポピュラーなアイテムのひとつ、日焼け止め。従来の日焼け止め製品は、その機能性から2つのタイプに分けることができます。

1つめは金属酸化物などが原材料に用いられ、肌の表面で紫外線を反射・散乱させる膜として物理的に機能するタイプのもの。主に酸化チタンや酸化亜鉛が成分として使用され、その粒子が肌の水分や皮脂を吸着するため肌の乾燥につながることも。2つめは主に有機化合物が原料として含まれるタイプのもの。紫外線吸収作用のある有機化合物が皮膚の上で紫外線を吸収し、熱などの別のエネルギーに変換して放出する仕組みになっています。肌の上で化学反応を起こすため、肌への負担が大きく、反応により生じる物質がアレルギーを引き起こしかねないことが懸念されています。最近では肌への負担を考慮したノンケミカル(紫外線吸収剤不使用)の製品も増えてきているようです。

 

海洋性藻類が提案する新たなUV対策

近年、肌にやさしくUV遮断効果も高い日焼け止めのヒントとしてバイオ由来の成分が注目されています。

その成分とはズバリ「菌類」。生物は紫外線への対策としてメラニンを保有し、人間の場合はそれがシミやソバカス、ほくろなどになって表れます。菌類もこうしたメラニンの生産者であり、ほぼすべての種類のメラニンを合成できるのです。最新研究によれば、海洋に生息する藻類が合成分泌する化合物が、紫外線から皮膚を守る役割を果たすことが明らかになりました。

https://genome.jgi.doe.gov/Aspnid1/Aspnid1.home.html

今回話題となった Aspergillus nidulansの分生子形成器官(Joint Genome Institute: https://genome.jgi.doe.gov/Aspnid1/Aspnid1.home.html)

 

メラニンは自然界においてDihudroxyindole-2-carboxylic acid(DHICA)や5,6-dihydroxyindole(DHI)からなるヘテロポリマーとして存在し、これらは有機物の前駆体がUVから皮膚を有意に保護できることが知られています。今回の研究結果では、海洋に生息するAspergillus nidulansが合成する単量体DHICAが紫外線(UVB)ストレスに起因する細胞内での活性酸素種の産生や細胞死(アポトーシス)を抑制することが判明。さらに、マウスの生体でも外服物として皮膚に添付することでUVBから皮膚を保護する効果があることが明らかになりました。

 

ここで特筆すべきは、比較実験として用いられた市販のSPF20(sun protection faactor: UVBによる日焼け抑制レベルの指標)の日焼け止めよりもDHICAのほうが、生体マウスの皮膚においてUVダメージを抑えられたことです。DHICAの添付による作用やUVB照射後のアレルギー反応により変異を示したマウスはいませんでした。このことから、既成の製品よりも強力で皮膚にも優しい新たな日焼け止め製品の開発を進められる可能性があるとして、今後の動向が注目されています。

他にもある生物由来のUV対策製品

海洋菌類以外にも、生物の中には環境ストレス対策として様々な化合物の合成系を発達させてきた生物がいました。

従来、日焼け止め製品は塗って使用するものが一般的でしたが、今回は生物由来の有効成分が含まれた「飲む」日焼け止めをご紹介します。外服薬と比較し、内服薬は個体・組織レベルで抗酸化活性を高めることができます。内側から肌のシミやくすみといった美容問題を改善し、過去の日焼けによるダメージにもアプローチすることも可能です。

 

【原材料:地中海のシトラス(未熟成なグレープフルーツ)とローズマリーからの抽出物】

スペイン・モンテローザ社とミギュエル大学の共同研究の結果うまれたのがニュートロックスサン®。老若男女を対象に実施した臨床試験の結果、経口摂取を2カ月続けた後に有意に肌のメラニンレベル低下がみられたことから、継続して接種することで紫外線ダメージに対する美白効果を期待できると判明しました。

 

【原材料:フランス原産の海岸松(Pinus maritima)の樹皮から抽出されるエキス

フランス原産の松から抽出されるフラボノイド(Ologometric proanthocyanidins: OPCs)を主成分として東洋新薬(株)がフラバンジェノール®として商標登録済み。女性を対象とした臨床試験から経口摂取を半年間継続した結果、肌のメラニンレベルを示す数値が半分になったことが示されました。

 

【原材料:中米減産のシダ植物(Polupodium leucotomos)から抽出されるシダエキス】

シダエキスに含有される特許成分「フェーンブロック」を主原料としたHeliocare®という製品も販売されています。人手の臨床試験では経口摂取24時間後に皮膚の細胞で紫外線から受けるダメージを有意に抑える効果があることが示されました。アメリカのCantabria社とハーバード大学との共同開発の賜物です。

 

いずれの成分も強い抗酸化作用を示す化合物で、従来の日焼け止めの成分よりも副作用を限りなく小さくしてUVストレスに効果的な耐性を示すことがわかっています。

これらの成分はすべて植物由来のもの。光合成には日光が必要ですが、必要以上の紫外線は細胞にとって悪影響を及ぼします。しかし、とは言え強すぎる紫外線から身を守るために日陰に移動はできない……。そんなジレンマを抱えた植物たちが進化の末に獲得した抗酸化物質。生物の生きるちからは偉大ですね。

 

 

 

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