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雷が起こす原子核反応の初観測に成功

雷と原子核反応

雷や雷雲は自然界における天然の加速器として働き、電子を光速近くまで加速できる。最近では、加速された電子が大気分子に衝突して放出される高エネルギーのガンマ線を最先端の装置で観測できるようになっている。研究グループはこれまでにも、雷雲や雷の高エネルギー放射を地上から観測してきた。その過程で、加速された電子からのガンマ線が雷雲の通過に伴って数分間にわたり地上に降り注ぐ現象「ロングバースト」を既に発見している。過去の観測を通して、この数分間の「ロングバースト」 とは別に、1秒以下の短時間に強力なガンマ線が到来する「ショートバースト」という突発現象があることは把握されていたが、その詳細は謎に包まれていた。

研究手法

研究グループは2015年から、多地点に小型で高性能な放射線検出器を配置し、モニタリング観測を行う新戦略をとっていた。冬の北陸の日本海沿岸には毎年、強力な雷雲が押し寄せ、世界的にも数少ない恵まれた雷の観測場所になる。2017年2月6日、柏崎市に設置した4台の検出器が、わずか数百メートルの近距離で 発生した落雷と同時に強力な放射線を記録した。これは「ショートバースト」と呼んでいた謎の現象であることが確認された。それから35秒ほど遅れて、雷の発生点の風下に位置する検出器が0.511MeV の電子・陽電子の対消滅ガンマ線を明確に捉えた。

研究の成果

京都大学プレスリリースより引用

このプロジェクトでの観測結果は以下のように統一的に説明できる。

1. 雷が地表に向けて放射したガンマ線 (TGF) により、大気中の窒素 14N が原子核反応 (光核反応)を起こし、中性子と不安定な窒素の放射性同位体 13N を生成する。

2. 生成した中性子は大気中で徐々にエネルギーを失いつつ広がる。最終的に大気中や地 表の原子核に吸収されてガンマ線を放射し「ショートバースト」として観測される。

3. 不安定な窒素同位体13N は、雷雲とともに風下に運ばれ、徐々にベータプラス崩壊を起こし13Cに変わっていく。この際に陽電子が放出され、大気中の電子と対消滅して、0.511MeVのガンマ線を出す。これが35秒遅れて検出された対消滅ガンマ線である。つまり検出された「ショートバースト」と「対消滅ガンマ線」は、雷が「原子核」との光核反応を起こした明確な観測的証拠と言える。

この研究は、雷が起こる原因を解明する長い物語のマイルストーンになることも期待できる。

光核反応とは

高エネルギー光子(γ線、X線)によって引き起こされる原子核反応。原子核が光子を吸収して励起され、その励起状態に応じて原子核がさまざまな反応を起こす。光子エネルギーが低いとき、ガンマ線を放出するだけで原子核がもとの基底状態に戻る(γ, γ′)反応が起こる。励起状態が十分高く,核内の核子結合エネルギーを超えると、核子が放出されて核変換が起こる。

対消滅とは

陽電子が電子と結合し、ガンマ線を放出して消滅する現象。このとき放出されるガンマ線は通常2個で、運動量保存のため正反対の方向に放出され、それぞれ

mc^2 = 0.51 MeV (mは陰陽電子の静止質量、cは真空中の光速度)

のエネルギーをもつ。電子対消滅では物質がエネルギーにかわる.ガンマ線が原子核の近傍で消滅し、同時に陰陽電子の対が生成される過程は電子対生成とよばれ、このときはエネルギーが物質にかわる。

 

Nature記事原文

Teruaki Enoto, Yuuki Wada, Yoshihiro Furuta, Kazuhiro Nakazawa, Takayuki Yuasa, Kazufumi Okuda, Kazuo Makishima, Mitsuteru Sato, Yousuke Sato, Toshio Nakano, Daigo Umemoto & Harufumi Tsuchiya (2017). Photonuclear reactions triggered by lightning discharge. Nature, 551, 481–484.

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