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産学官連携の3ステップ「基礎研究・開発研究・商品化」を担う機関は日欧米でどう違うのか

日本の産学官連携がさらなる飛躍を遂げるために、必要なことはなんでしょうか。アメリカやヨーロッパとの比較から、日本の産学官連携の現状が見えてきます。各国の特徴とはどのようなものなのでしょう。

アメリカとヨーロッパでは産学官連携の風土が異なる

産学官連携発祥の地であるアメリカでは、1970年代にその恩恵を受け経済復興を遂げました。その後、ヨーロッパ諸国も後を追います。しかし、そのシステムは同じではなく、異なる産学官連携の文化が育ちました。

2012年から2013年にかけてアメリカとヨーロッパ3カ国で産学官連携の現状を調査し、その結果と日本との比較をまとめた北海道大学による論文「欧米における産学官連携と日本の特徴」(2014年)から、各国の特徴と日本の産学官連携の可能性を見ていきましょう。

欧米4カ国での産学官連携の調査

筆者が調査を行ったのは、グレーター・ワシントンと呼ばれるアメリカのワシントンDC近郊地域、北部ヨーロッパのアイルランドとオランダ、南部ヨーロッパのイタリアです。 

各地の大学や政府系研究所の産学官連携機関を訪れ、機関の機能や資金調達手段、知財関係などについて調べました。

産学官連携の段階を「基礎研究→開発研究→商品化」の3ステップとし、それぞれのステップを遂行する機関を当てはめたところ、アメリカとヨーロッパに大きな違いがあることが分かったそうです。

企業活動に近い機能を持つアメリカの大学

アメリカの産学官連携における最も大きな特徴は、大学が企業活動に近い機能を持つことでした。

筆者が訪れたグレーター・ワシントンに位置する有力大学では、1年生から起業家教育が行われ、大学内や近隣に設置されたインキュベーション施設では経営専門の大学教授による企業向けコーチングも実施しています。

独自のイノベーションエコシステムを持つメリーランド大学では、地域企業との共同商品開発や国際的企業と大学職員・学生の連携も、組織的に行っています。このシステムにより、1987年から2013年までの間に大学が社会に与えたインパクトは、200億ドルを超えるというのです。

また、インキュベーション施設は大学だけでなく政府系も充実しています。商品化・事業化に向けた施設が、随所に充実しています。

また、アメリカでは全国を対象にしたコーディネーション機能が存在し、効率の良い技術移転を可能にしています。

資金面を見ると、スタートアップを支援するエンジェル投資家やベンチャーキャピタルの規模が、ヨーロッパや日本に比べて格段に大きいことが特徴的です。

図1 アメリカにおける産学官連携

研究vs開発の北部ヨーロッパ

北部ヨーロッパでは、「大学が基礎研究、企業が開発研究」と産学双方のミッションが明確に区別されています。

この対立は、一見すると日本とよく似ています。しかし日本との大きな違いは、基礎研究と開発研究の橋渡しをする大規模な専門的機関・施設が存在することです。この専門機関・施設で、戦略的な製品開発を実施しています。

コーディネーション機関は、各段階で専門のバックアップを行います。そのため、基礎研究志向の強い大学でも、産学官連携においては事業化までを視野に入れた研究を遂行できるのです。

オランダの食品関連企業と大学、研究期間が集積したエリアであるフードバレーで、基礎研究を行う大学と応用研究を行う企業の間を取り持つのは、応用研究センターという機関です。応用研究センターはオランダ応用科学研究機構や食品研究所とも連携し、基礎研究から事業化に至る一連の流れを支援しています。

図2 北部ヨーロッパにおける産学官連携

特徴的な資金調達と教育のイタリア

イタリアの産学官連携では、アメリカや北部ヨーロッパのように特定の地域に産学官の施設が集まっている形態は見受けられません。そこで、筆者がイタリアの中でも組織的な産学官連携が盛んなトリノ工科大学を調査しました。

トリノ工科大学の産学官連携機関では、研究者の探索、共同研究、資金調達、秘術移転契約、イノベーション創出など、幅広い産学官連携業務を担います。

大学内にはインキュベーション施設もあり、10年余りの間に150社の超える大学発スタートアップ企業を輩出しました。経営コーチングを行うスタッフも在籍しており、各企業は創設2年程度で商品を市場化しているといいます。これらの点は、アメリカ型の産学官連携に近いものです。

アメリカとは異なる環境の中、アメリカ型の産学官連携に成功している理由として、筆者は開発研究資金の調達手段を挙げています。

トリノ工科大学の産学官連携ネットワークには、地域の中小企業だけでなく大企業も必ずメンバーに入っています。大企業からの開発研究資金はいわば「寄付」としての意味も持ち、大学財政に組み込まれるのです。また、スタートアップに必要な投融資は政府が行います。

アメリカにおけるエンジェル投資家やベンチャーキャピタルの働きを、トリノ工科大学では大企業と政府が担っていると筆者は指摘します。

もう1つの特徴として、トリノ工科大学ではアントレプレナーシップの教育も盛んです。大学院に進学しても将来教授ポストに就く可能性が低いことを理解している学生は、学んだことや能力を生かすには起業が一番だと考え始めているそうです。

 

各国と比較したときの日本の特徴とは

前述したようにアメリカでは大学が開発領域までおよんでいます。そのため、産学官連携施設はそれほど大型化する必要がありません。

一方、北部ヨーロッパでは、基礎研究と開発研究が大学と企業で分かれていますが、両者をつなぐ政府系の研究機関や大学と一体化した開発研究組織によって、大きく見ると基礎研究から事業化まで一連の流れを作っています。 

イタリアでは、アメリカ型の産学官連携を政府や大企業がバックアップしているといえます。

日本では北部ヨーロッパと同様に、大学での基礎研究志向が強いものです。また、政府系研究機関も基礎研究が強く、企業との間を取り持つ形にはなっていません。大学の産学官連携機関も、基礎研究を適切な開発段階に誘導する力が十分ではないと筆者は述べています。

図3 日本における産学官連携

日本の実情や風土を踏まえて産学官連携のさらなる発展を図るには、強固なコーディネーション機関の設立が最適ではないかというのが筆者の考えです。

日本の産学官連携ネットワークは、大学、地方自治体などのリエゾン組織と地域企業の間でできています。ここに戦略的にコーディネーション機能を加えていくのです。

日本独自の産学官連携を

一口で産学官連携と言っても、各国でそのシステムは大きく違うことが見えてきました。研究における風土や文化の異なる日本が、アメリカと同じような手法で産学官連携を推進しようとしても上手くいかないのかもしれません。

基礎研究と商品化・事業化の間にある溝を埋めることができれば、日本でも大学と企業がそれぞれ持っている力を存分に生かせるのではないでしょうか。

筆者の主張するように、戦略的にコーディネートをできる強い機関が機能すれば、大学や公的研究機関、企業のそれぞれの良さをより生かす連携が進むかもしれません。

現状ではそのような機関がないため、各機関は連携先も独自で探す必要があります。LabBase Xは、日本全国の大学研究者を探すことができるナレッジプラットフォームです。求めているシーズを持つ研究者への橋渡しや、そもそもどういったシーズが自社の開発に必要なのかの相談支援も行っています。

最適な相手との産学連携が実現すれば、事業開発の規模、スピードともに加速していくことでしょう。

 

【参考文献】荒磯恒久(2014)「欧米における産学官連携と日本の特徴」,『産学連携学』10号(1), p.1-12, 産学連携学会

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