英語で論文を書くことは世界中の人々に向けて自身の研究を発信することであり、あなたの研究の価値を一層高めるためには非常に重要であると言えます。影響力の強いジャーナルは、例外なく国際的な英語論文だと言い切って間違いないでしょう。

しかし、多くの日本人にとって英語での論文執筆は大きな壁です。日常表現も怪しいのに、いきなりアカデミックライティングを英語で、と言われても戸惑ってしまう方が多いのではないでしょうか。

そんな皆さんに朗報です。実は英語論文で用いられる表現は独自の”型”があり、それを知ってしまえば意外と書けるものなのです。この記事では英語論文の執筆を強力にバックアップするツールを紹介します。

読み手が慣れている表現で書こう

文章表現に絶対の正解はありません。しかし、アカデミックライティングの世界ではいわゆる”お決まり”の表現というものがあり、あらゆる分野の論文に対して汎用的に用いられています。例えば、

・Recently, there has been renewed interest in …(研究の重要性について述べる)

・Most research on X has been carried out in …(先行研究における手法を紹介する)

・The results of this investigation show that …(結果のまとめを述べる)


などは分野を問わず論文中で目にする表現です。このような頻出表現を用いることは、読み手が慣れている表現で書くことであり、非常に親切な書き方であると言えます。見慣れたフレーズであるからこそ、一語一句を丁寧に追わずとも文章の意図を伝えることができるのです。

このような表現方法を調べるのに便利なサイトを以下で紹介します。

〇オススメのサイト

Academic Phrasebank ( http://www.phrasebank.manchester.ac.uk/ )

Academic Phrasebankのサイト外観

こちらは論文の章立て(イントロ、手法の紹介、結果の議論etc)ごとに頻出の定型表現をまとめているサイトです。例えば Introducing work(イントロ)の項目を見てみると、

大量の構文が出てきました。図のように「研究の重要性を主張するとき」、「研究の目的を述べるとき」、「先行研究での状況について述べるとき」など状況ごとに頻出構文がまとめられています。自身の論文構造に漏れがないかのチェックとしても使えるため、非常に有用です。

Online Phrasebook ( http://englishforresearch.com/phrasebook/ )

Online Phrasebookのコンテンツ例

基本的なコンテンツは先ほどのAcademic Phrasebankと大差はありませんが、こちらには「使用を避けるべき表現」や「アメリカ英語とイギリス英語の混同に気をつけろ」など、記述スタイルに関する注意書きが豊富に載せられています。上の図の例では、避けるべき口語表現とその修正案について述べられています。

語句の使い分けをするために、フリーソフトを使ってオリジナルの辞書を作ろう

同義語が多い英語では「どちらの表現を使えばよいか?」と悩むことがあります。例えば

 ・英語で”研究”と書きたい ⇒ "research"と"study"のどっち??

といったような状況です。このような場合、辞書で調べても少ない例文からではどちらも正解に思えてしまうので、考えてもなかなか解決しません。

そこでオススメしたいのが、同じ研究分野の論文を集め、その集めた論文からテキストデータを抽出して辞書を構築する方法です。参照元が同じ研究分野の論文であるため、書きたい文章に限りなく近い例文を大量に取得できます。そんなあなた専用の辞書が、以下のフリーソフトを使えば簡単に作れるのです!

〇用意するソフト

AntConverter :論文のPDFデータを.txtに変換

AntConc:論文の.txtファイルを読み込むことで文章のデータベースを作る

(どちらも http://www.laurenceanthony.net/ よりダウンロード可能)

〇手順

1. AntFileConverterで論文のPDFデータを.txtファイルに変換

2. AntConcで論文の.txtファイルを読み込み,データベースの完成

辞書を構築する際は、最低でも10本以上の論文を準備しましょう。本数を増やすことで、より確度の高いデータベースとして機能します。

試しに、先ほど例に出した"research"と"study"の使い分けについて、AntConcを使って検索してみましょう。

AntConcによる「research」の検索結果

上の画像は15本の論文データから"research"を検索した例です。ここでは26件の使用例が見つかりました。Antconcでは前後の文脈を合わせてチェックできるので、具体的な使用方法について調べたい時に非常に便利です。文章を見ると、"research"は"program"や"project"といった言葉とセットで出現することが多く、特定の研究プロジェクトなど「研究の枠組み全体」というニュアンスで用いられやすいようです。

続いて、"study"を検索してみましょう。

AntConcによる「study」の検索結果

"study"では先程の"research"の約4倍、99件の検索結果が得られました。上の画像ではSortボタンを使うことで前後にどのような語句が来ているか?という情報を併せて強調表示しています。"study"は"this study"や"present study"などのように使われることが多く、「この論文で取り扱う内容」を指すことが一般的なようです。

このように、微妙な語句の使い分けを調べる上で論文データベースは非常に強力なツールとなります。過去の論文は最高の英英辞典として機能するのです。

おわりに

いかがでしょうか。英語論文の執筆は、普段英語を使い慣れていない方にとってはかなりハードな作業です。しかし、文章に「型」があることを理解し、定型表現を用いてパーツを組上げるように文章を書くことを覚えれば、おのずと論文は書きあがっていきます。表現に悩んでも先人たちの論文がきっと答えを示してくれるはずです。論文執筆に盗作はNGですが、文章の表現方法となれば話は別。積極的に表現を盗んで、効率的に論文執筆を進めましょう!