それでも研究者で兼業や副業してる人が少ないのはどうしてなのでしょう?



 

やり方を知らないんじゃないかなぁ。



 

え、そもそも大学の先生って兼業してもいいの?



 

オッケーです。法人化されて僕らは公務員ではなくなったので。例えば講演を外でして、そこで謝金をもらう場合も兼業です。複数の箇所で研究活動をする場合には、最近できたのはクロスアポイントメント制度っていうのがあって、その人の働く割合を半々にするとか配分をして働くことができたりもします。
 

専門的な話が出来るから講演だったり、外で事業するとか会社のコンサルティングとかもありえますよね。


 

たとえば量子コンピューターだとどんな事業があるんですか?



 

量子コンピューターに関して言えば、実際の応用先に様々な産業から「こんなことってできますか?」という相談が舞い込んでいます。まさにコンサルティングですよね。さらに最近増えているのは、投資関係からの相談です。量子コンピュータ関係の技術が進んでいるらしいけど、実際のところどうなのか?今後のびる分野はどこなのか?などなど色々と相談が来ます。

あーなるほど!投資家の人はお金を握ってても、投資先がほんとに技術もってるかとかわからないですもんね。そういう時に大学の先生「ここに投資しようと思ってるんだけど、大丈夫かな?」って知恵貸してもらえるなら、優秀な頭脳の良い使い方ですよね。
 

企業と大学って、現状すごく離れてるんですよ。清貧になれという先生もいるけど、貧だとどうしようもない。企業の人と関わることで、何が求められるか、こういうことが一緒にやることで出来るという可能性がわかったりする。そうしたら次はどういう研究しようかなという考えの幅がもがります。
 

フリーの研究者と言うのは今後出てきたりしないのでしょうか?大学の研究者向けのアウトソーシングとかあれば、ポストに困ってる研究者も研究人材欲しい企業も助かりそう。

 

出て来るんじゃないですか?個人的にはこのままだと大学はつぶれてしまうと思ってるんで。だって毎年運営交付金を削減されて、人件費も削られて。人がいないから研究も講義もできなくなってくる。フリーの研究者を認めて、大学に所属は残しながら、企業とも自由にやったらいいと思います。
 

大学と企業が抱える不合理さ どうすれば変えられる?

ヨッピーさんのご著書『明日クビになっても大丈夫!』の中で、上司に出す印鑑は「左に傾ける」ように言われてナンセンスだと思った、というエピソードがありました。

サラリーマンやってると不合理なことは色々ありましたよ。稟議書の書式が死ぬほど面倒臭いとか決済にやたらと時間がかかるとか。「お世話になります」って必ずつけなきゃいけないビジネスメールとかもやめちゃえばいいのにね。

 

(苦笑)。同じように理に合わないことが大学内でもありそうな気がします。神エクセル問題とか。そういうのがなかなか変わらないのって、なぜなのでしょうか?

 

 

多くの会社で聞くんですが、2-3年単位で部署を移動させて人をぐるぐる回して、どんな仕事もできるようにさせますよね。だからひどい部署行っても、3年我慢すれば別の部署に行ける。すると改善するモチベーションてわかなくなりますよね。同じように、大学の先生達にも大学を運営するための委員会がたーくさんあって、任期が1-2年なんですよね。まあ数年我慢すればいいと思うと、環境やルールが不合理でも頑張って改善しようと思わなくなる。

教授会のようなものですか? 決めることが多くて大変だと、周りの先生方からよく聞きます。


 

大学によりけりだと思いますが、うちの研究科は教授会は3ヶ月に1回で頑張って終わらせます。研究第一主義という理念を持った大学なので(笑)。


 

私が前にいたラボの先生はもっと多かったです。組織運営研究しながら学生の指導して組織も運営するってすごく大変そうですね……。


 

研究が大好きな先生ならマネジメントにも教育にも興味ないし研究だけやらしてくれって思うでしょうね。分離しちゃえばいいのでは?


 

結局は人がいないから割り振れないんですよね。1人十役くらいしないと回らない。海外では研究する人、教育する人、経営する人と割と分離しているようですが。

 

やっぱお金がないのが問題なんですかね?



 

金はないといえばないし、それは今に始まった話ではないから、あるといわれたらたぶんあるんですよ。使い勝手と使い方の問題だと思います。期限が短いのと使用先が限られてるから問題。成果が出てるとお金はつぎ込まれるけど、数億円もらっても一定の期間内に使い切らないといけない。そのお金を数年と言わず10年にしてもらえればできることがあるわけです。人を雇うとか。この前3年のプロジェクトを申請したんですよ。優秀な人を雇って一緒にもりたてるという内容で。そうしたら、通してやるけど1.5年ね、と言われました。申請内容わかっている?って呆れてしまいました。そんな短い時間、引っ越しして新しい仕事をやるなんて相当なハードルですよね。

あーなるほど。民間でも同じようなことがありますね。僕広告の仕事やってるんですが、忙しいのって9月と12月と3月なんです。要は予算の締めで、広告費用って半期でこんだけ、年間でこんだけでとってくるから、予算をちょっと余らせておくんです。で、余った予算を使うために「9月末3月末になんかやってくれ」って依頼される。

大学では、2月3月くらいに文房具とかパソコン買わないでくれという通達が来ますね。使い切っているように思われないため、という。期限が決まっていると相当計画立ててやらないと研究費を効果的には使えないですよ。そう言ったマネジメントの訓練をされた人がやっているわけでもないし、そういう人を雇うこともできないルールですし。上手く配分して制約取っ払う、さらにマネジメントができる人を雇っても良いとする。そうすれば無駄も減って闇雲に予算をとる競争も減るかもしれない。今は年度ごと予算がなくなることが必至だから、とにかく生き延びるために毎回申請書を出さないといけない。だから書類仕事で苦しむのです。研究のできる環境なんてありやしない。

こうなると仕組みの問題であって政治家の仕事ですよね。



 

研究者を守るって言ってもね、投票数につながらないですからね。この手の話って単純にお金がないと訴えがちですけど、他の大事な国の事業はありますから、それは筋が悪いと思います。本当の意義のある改善には繋がらない。ないならないなりにちゃんといい形にするべきですからね。でもそれをうまく伝えるのは難しいですよね。

だから声が届かずに仕分けられちゃう……。



 

たぶん政治家の多くも、大学関係者がどう困ってるかわからないんですよね。



 

政治家だっていやがらせしてるわけじゃないし、現に国は無理のない範囲で、多額なお金を投入しているわけで。僕らはその範囲ででもちゃんとやらないと。ただいますぐにできることはファンを増やして、外からの応援で、できないことをできるようにする。いまの研究をちゃんとやることです。
 

これまでの議論を聞いていて、研究者の発信がキーになるのかなと思いました。個人で研究の営みを発信するのに加えて、複数の研究者でコンソーシアムをつくり、研究しやすい法律や制度を求めるのも重要なのかもしれないですね。最後に、研究者になりたいと思ってる理系学生はどんな能力をつけるべきか教えてください。
 

デザイン力。見せ方をデザインする。やっぱかっこよくないといけない。綺麗だったり面白かったり、魅力があるようにしないと。たとえば「数学が得意です」というのはすごく重要だけど、それは研究者のベースであって、そこからさらに活躍するためには数学が得意なことを知られないとダメで。 
 

研究をバズらせるtipsとかあるんでしょうか?



 

ブログにも研究にも言えると思うんですけど、ちゃんと身近なものに翻訳することですね。「松阪牛をアレンジして美味しく食べる方法」より、「コンビニのおにぎりを美味しく食べる方法」のほうがバズるじゃないですか。千葉逸人先生がビールの泡のでき方をベルヌーイの定理で考察するみたいな事をTwitterでやっててすごいシェアされてたんですけど、やっぱりたくさんの人にとって身近にあるものに置きかえて、マーケットを広げるのがいいんじゃないですかね。たぶん。全部カンで言ってますけど。

あと、この記事を呼んでいる学生の皆さん、

将来偉くなったら仕事を下さい。

大関先生、ヨッピーさん、ありがとうございました!

(取材:須田英太郎 久野美菜子 文:久野美菜子 写真:藤坂景)