Vieteらによる2018年の論文[1]で、一億年以上前に発生した地震の痕跡をガーネット(柘榴石)の結晶から読み取る手法が提唱されています。成長途中の結晶の中を地震波が通過すると圧力にムラができることから、化学組成の微小な変化としてガーネットの結晶の中に地震のイベントが記録されるといいます。これにより、今まで情報を得ることが難しかった約1億4000万年前のプレートの沈み込み帯での地震イベントまで、その痕跡を辿ることができるようになります。

科学者たちのタイムカプセル

映画『ジュラシックパーク』では、琥珀に閉じ込められた蚊の血液から恐竜の遺伝子情報を蘇らせるという試みが描かれています。『ジュラシックパーク』はフィクションの世界の話でしたが、実際に科学にとって古い時代に起こったことを知る手がかりを得ることは、生命の起源や地球環境の変化を探るためにとても重要な課題です。古い文書を解読することはもちろん、化石から地層の年代を特定したり、放射性炭素同位体の量から有機物がどれだけ古いものかを測定したりと、これまでに幅広い分野で研究者たちがそうした手がかりを求め、人類が生まれる遥か昔、ときには数億年前の出来事まで時間を遡る方法を確立してきました。
とくに地震を研究する分野では、地震の規模と発生率の関係やプレートの動きについて調べるために過去にどのような地震イベントがあったかを遡る必要があります。
過去の沈み込み帯地震を辿るための地質学的な手がかりとして、これまでは津波による堆積物、干潟やサンゴ礁に残る隆起と沈降の痕跡などが利用されてきました。

沈み込み帯地震の足跡を辿る

地球表面のプレートがマントルへと沈み込んでいるところで発生する地震は大きな津波を伴うことがあり、2004年のスマトラ島沖地震や2011年の東北地方太平洋沖地震が沈み込み帯での大規模な地震として記憶に新しい例です。最も沈み込み帯地震の頻度が高く、エネルギーも大きい傾向にある深さ30–70kmあたりでは、既存の岩石が地中で温度や圧力の変化によって組織構造や化学組成を変化させる作用を受けた変成岩と呼ばれる岩石から地震の規模と発生頻度についての情報が得られると考えられており、今回の研究では高圧・低温の変成岩で一般的に見られるガーネットを利用して、大昔にあった地震イベントを特定する方法が提唱されています。

津波堆積物などを利用したこれまでの測定方法では約250万年前、おおよそ人類が出現した時代に起こった地震までしか遡ることができませんでした。いっぽう今回提唱されたガーネットの結晶を利用する測定方法を用いると約1億4000万年前の地震イベントまで辿ることができるとされ、さらにいままでデータを得ることが難しかった地下深い場所で発生する地震についての新しい情報源になることが期待されます。

ガーネットという鉱物

2018年に米科学雑誌Science Advancesに発表された論文では、柘榴石(ざくろいし)の和名で知られる鉱物ガーネット(図1)が、大昔の地震の記録を読み取るためのタイムカプセルとして利用されています。

図1 Viete, et al. (2018)で用いられたガーネットの結晶サンプル([1]より引用)

ガーネットは宝石として加工された姿を見ることが多いですが、変成岩の中に斜方十二面体や二十四面体のザクロの実のような結晶として現れることの多い鉱物です。その化学組成は M12+3M23+2(SiO4)の一般式で表され、M1とM2にあたる金属元素の含有量によってさまざまな名前と性質を持ちます。硬度(傷つきにくさ)が高く採掘量が多いため、宝石のほかに研磨剤としても利用されます。

ガーネットは”地震の化石”?

Vieteらは、カリフォルニア州サンフランシスコにあるフランシスカン複合岩体から産出した、ガーネットを多く含む変成岩をサンプルとして用いました。この変成岩に含まれるガーネットはおよそ500〜600℃の温度、1〜2GPaの圧力の下で結晶が成長したとされています。
沈み込み帯の変成岩によく見られるガーネットは、結晶の内部から表面にかけて化学的な成分の変化が帯状に分布していることがよく見られます。今回の研究ではこの帯状の模様に地震との関連が見いだされました。

古い時代の気候を研究する分野では、木の年輪が1年に1層ずつ気候によって幅が広くなったり狭くなったりしながら増えていくことを利用して大昔の気候変動イベントを特定しようとする試みがなされています。ガーネットの結晶には木の年輪のようにして、大昔の地震イベントが記録されていると言えます。

図2 ガーネット結晶中のマグネシウム含有量が木の年輪のようなパターンで変化している([1]より引用)

X線を利用した結晶を構成する元素の分析を行ったところ、マグネシウムやマンガンなどの金属元素の含有率が主に結晶の外側で縞状の変化のパターンを示していることがわかりました(図2)。これはガーネットの結晶が木の年輪のように外へ向けて成長していく過程で、一度成長した結晶の表面が再び溶け出すような作用がはたらくために成長速度が遅くなる時期を数回挟んでいることによるものです。今回使用したサンプルからは、このような成長速度の変化を起こすようなイベントが少なくとも4回あったことが確認されました。
ガーネットの結晶成長の速度にむらがあるのは、結晶成長の途中で周りの温度や圧力が急に変化したことが原因だと考えられます。これらの関連を調べるために、結晶中の圧力を調べる最新の分光測定を行ったところ、ガーネットの結晶成長速度の変化は岩石の変成作用が起こる間に周囲の圧力がおよそ100〜350MPaの範囲で変動するイベントが少なくとも4回起こったことによるものだという結果が得られました。

岩石から測定される高圧・低温の変成作用を受けていた期間とプレートが沈み込み帯を通過するのにかかる時間のスケールが整合的であるこや、結晶の成長途中に化学組成の変化の縞模様が生じる時間間隔が津波堆積物などの既存の根拠から得られる沈み込み帯地震の発生頻度と整合的であることから、ガーネットの結晶に見られる化学組成の変化の縞模様は沈み込み帯地震に伴うプレート内での急激な圧力変化によるものだと結論づけられました。

私たちが生まれるより遥か昔の出来事を知るための手段はこれからも活発に研究されていきます。手段を尽くして地震の足跡を辿ることで、地球内部でどのような活動が起こっているか、そして大昔にどのような地震活動が起こっていたのかを知ることができ、地球の歴史に触れることができるでしょう。

 

【参考文献】

[1] Viete et al., Metamorphic records of multiple seismic cycles during subduction. Sci. Adv. 2018;4:eaaq0234
[2] https://www.nature.com/articles/s41561-018-0106-8