研究を進めていく上で、学会・シンポジウムでの口頭発表や学内での試問は避けては通れない。しかし、これまで自分がやってきた研究を、口頭でわかりやすく説明することは案外難しい。特に、初めての学内試問では研究内容及び重要なポイントを要領良く伝えることに苦労する人も多いと思う。それというのも、他人の研究内容は得てして理解しづらいものであり、発表者自身が気をつけないと独りよがりな発表になってしまうからだ。それゆえ、聞き手の理解を助ける為の研究概要を記したハンドアウトの作成が義務づけられていることも多い。

では、どのような内容を盛り込めばより聞き手に伝わる研究概要ができるのだろうか。ここでは研究概要の作成に当たって、項目ごとに留意すべきポイントについて考えてみる。

研究概要の四大要素

典型的な研究概要の構成例として以下の要素が挙げられる。

(1)背景
(2)研究目的・目標
(3)手法・結果
(4)結論

背景や研究目的・目標に関しては自分がやってきたことの意義に立ち戻り、社会及びその研究分野に対してどのように貢献するのかを考える必要がある。そのため研究内容に対する深い理解が求められる。手法や結果については自分の作業内容について直接的に書けばよく、執筆内容自体に悩むことは少ないが、盛り込む内容の取捨選択が重要となる。

1.背景はどこまでを常識とするか

研究の導入部である背景は、一般常識的な内容から少しずつ専門的な視点へとズームインしていくことであなたの研究と社会の繋がりを述べる役割を持つ。解決したい問題について、原因は何か、どのくらいの影響があるのかを具体的・定量的に書く。これによって次の研究目的・目標に自然に繋がっていく。
ここで、背景の書き始めに盛り込む内容は発表の場によって変化することに注意されたい。様々な分野の方が聴講する学内の試問などではニュースレベルの内容から出発するのが望ましいが、専門分野の人々のみが集う学会では分野内での共通認識事項について逐一詳細に述べる必要は無いため、背景の出発点は比較的専門的な内容から始めることも出来る。聞き手は誰なのかをよく考えた上で書き始めることが重要だといえるだろう。

2.テーマの大目標と、自分の研究の目標を分けて考える

研究目的と研究目標。この2つは似ているようで大きく異なる。簡単に言えば、「研究目的」はテーマが持つ大きな視点での解決目標を指し、「研究目標」はその研究での具体的な達成目標を意味する。つまり、「大きな目標の中であなたは何を調査するのか?」ということを段階的に書けばよい。この二つの違いを意識して執筆することで、「あなたが何を解決したいのか?」「課題に対するあなたの着眼点はなんなのか?」というストーリーを読み手が把握しやすくなる。

この2つの違いについて例を挙げて説明しよう。例えばカレー作りをテーマとした研究があったとする。このとき、研究目的(大目標)は「美味しいカレーの作り方を明らかにする」などである。しかし、これではあまりにも漠然としており、具体的にどのような調査をするのか分からない。そこである現象、ある物質が与える効果に着目することでポイントを絞り、そのオリジナリティを明確にする。例えば研究目標として「ハチミツがカレーの風味・口当たりに与える影響を評価する」と設定すればカレー研究者の中でのあなたの立ち位置、着眼点が明らかになる。同じテーマを持つ(ex.美味しいカレーを作りたい)研究者は一般的には多数存在している。コリアンダーの分量に着目する者、カレー専用の米を開発する者、調理手順の最適化を研究する者など、そのアプローチ、つまり研究目標は千差万別である。一方で美味しいカレーを作るという研究目的は彼らの中で共通する事項なのである。

・研究目的:研究を通して最終的に知りたいこと、実現したいこと(同分野の研究者とも共通する)
・研究目標:研究の中で具体的に明らかにしたい事項。(研究者のオリジナリティが現れる)

3.手法・結果は長くなりすぎないように

研究目標であなたの作業の意図について適切に説明できていれば、手法の解説は読み手にとって非常に理解しやすいものになる。その手法があなたの研究室で継続的に行われてきた手法であるならば実績を引用することで手法の説明をある程度簡略化することができる。もし新規に始めた手法であるならば、各作業ステップの意図、工夫点について解説を交えながら書くのがよい。
結果の説明・議論について気をつけたいのが、結果をなるべく多く載せたいという気持ちのあまり、研究目標に直結しない中間段階の成果(予備実験の結果など)を長々と書いてしまうことである。口頭発表の時間を10分程度であると考えると、聞き手が頭に留めておける内容は各発表に対して結果1つ程度だと覚悟しておいたほうがいい。その為、研究概要に盛り込む結果としてはメインとなるもの1つに絞るのが得策である。このグラフ・図を見れば結果が理解できる、という構成にしておくと分かりやすい。

勉強画像.jpg

4.結言では結果の議論の繰り返しになることを避ける

結言で書いてしまいがちなのが、結果で述べた議論の繰り返しになってしまっているパターンである。結言では詳細な議論を除き、着目した事象についてその効果の有無、定量的な結果について簡潔に述べることが大切である。また、この結果が将来的にどのように活かせるのかの展望を付け足しておくことで、あなたの研究の価値がより読み手に伝わることだろう。