みなさんは高専という教育機関をご存じだろうか。以前、“高専”に通う女の子を描いたマンガ「それゆけ女子高専生」を取り上げ、高専の実態を作者へのインタビューを交えながら解説した記事を当サイトに挙げているため、是非とも一読してほしい(実は理系の最先端 !?高専の知られざる世界【それゆけ女子高専生作者インタビュー】)。

さて。今回は、高専本科から高専専攻科へ進学し、トータル7年間のコッテコテの高専生活を歩んできた筆者が高専の実態をお伝えしようと思う。前編では、「高専から大学(大学院)への進学について」、後編では「高専からの就職、大学(大学院)編入後の就職について」の2部作でお伝えしようと思う。きっと高専ボーイや高専ガール以外にも是非理系大学生・大学院生らにも知ってほしい、知るべき内容になっている。

高専(高等専門学校)とは

まずは高専を知らない人のために、高専の概要について軽く触れておきたい。

高専とは、高等専門学校の略称である。高校1年時から大学2年相当時までの5年間を通した一貫教育で短期で技術者を育成するための教育機関であり、今年で第1期校(全国で12校)創設55周年を迎える(2017年現在)。高校から大学2年時までの一貫教育ということで、もちろんセンター試験や進学校のテスト地獄、大学進学争いは一切無い。卒業後の学位は「準学士」と呼ばれ、専門学校・短大卒と同じ扱いとなる。しかし、専攻科と呼ばれる高等教育機関が2年間あり、そこを卒業し審査に合格した場合、大卒同様「学士」が与えられる。しかも、高専の学費は国立大学の半分以下である(大学が53万円/年、高専は23万円/年)。また、進学校の赤点が30点〜40点であるのに対し、高専では60点が赤点に設定されており、そのため、留年者率は一般的な高校に比べ異様に高い(単に勉強をしないだけだけど)。テストに関しては基本的には大学生のテスト勉強法と同じで、「一夜漬け」が基本である(だから留年する)。その一方で、就職希望者の就職率は全国平均で99~100%を推移しており、大学を大きく上回り、全体の57%が就職をしている。しかも、その大半は誰もが知っているような大企業へ就職する。進学率は40%ほどである(国立高専機構HPより)。

                      表1. 全国高専卒業生の就職率推移

                      表2. 全国高専卒業生の進学率推移

高専といえばオタクなイメージをお持ちな人もいるかもしれないが、案外そうでもない。むしろチャラい。オタクなイメージはロボコンのイメージが強いからだろうが、ロボコンに携わる学生は1割にも満たず、あくまで部活動の一環として行われている。女子学生は全体の約2割で、物質・生物工学系に多い。

高専では一般的にどんな流れで就職・進学をしていくのか

中小企業を含め、多くの企業には、高専生を採用するための特別推薦枠が設けられおり、各科ごとに毎年数百社という企業からの求人が届けられる。そのため、形式としては通常の大学では少ない学校推薦、という場合が多く、自由応募で企業を受ける人はほとんどいない。給与形態は大卒よりもやや低く設定されているが、高卒と比較し、大学の給与形態に近いことが以前の卒業生アンケートからわかっている(市場は「高専」をどのように評価しているか)。学費も安く・時間も短期間に、誰しもが知るような有名企業に入りやすい「高専」は実に最高の教育機関なのかもしれない。

                      表3. 高専卒の学歴別平均給与

進学としても、高専卒業後の専攻科進学、大学3年次(2年次)編入が許されている。センター試験の苦労に比べて圧倒的に楽な場合が多く、高専からの編入の大半、筆者の肌感では9割以上は国立大への進学である。編入試験は各大学によって違うが、専門科目と数学・英語(もしくはTOEIC・TOEFL換算)というところが多い。高校から国立大へ進学するよりも圧倒的に少ない労力で国立大学卒の称号を得ることができる。東京大学への編入も毎年10名前後、旧帝大レベルでも100名以上が毎年編入をしている。恐るべし高専。

                表4. 平成26年度高専本科卒の3年次編入大学先一覧

高専から大学編入・大学院編入(専攻科進学)のメリットデメリット

上記では高専のいいところを話した。それでは筆者は高専から3年次編入をしたのか、それとも就職をしたのかというとどちらでもない。筆者は九州の高専を卒業し、その後大学編入をせずに高専の高等教育機関である専攻科へと進学後、大学院へと進学した。理由は主に以下の2つである。

① 「学費が安い」

② 「大学編入をすると研究が継続できない」
*ここで言う「大学」には技科大は含めない。

この2つは大学のデメリットにも繋がるが、特に②に関しては筆者の思うところがある。大学では、基本的には3年次から専門分野の勉強を始め、4年次で研究室に配属される。それも自分が主導の研究テーマを持てず先輩のテーマのお手伝いということも多い。大学では4年次でやっと研究が始まるので、基礎を学ぶという点で理にはかなっているのだが、高専ではどうだろう。既に高専では5年(大学2年相当)次に卒業研究・卒業論文を経験しており、研究のイロハを学んでいる。専門科目に関しては大学で学ぶ内容を高校1年次から学び始めており、大学3年の内容は殆ど把握済みで、復習にしかならないことが多い。しかも実験も多く、レポート作成や授業に追われ、実にハードな1年を過ごすことになる。編入をした高専生はみんな口を揃えて言う。「大学3年はマジでキツイ」(多分高専の5年生が楽だからそう感じるのかも)

一方、高専専攻科へ進学した場合はどうか。高専本科の流れのまま、新しい環境に順応する労力も使わずに専門課程を極める事ができる上、自分が主導の研究を行うことができる。専攻科では卒業研究とは別の「特別研究」という名で2年間研究を進める。高専生にとっての専攻科生は、学部生にとっての大学院生のような存在のため後輩指導要員としても重宝される。殆どの高専専攻科では学会発表を義務付けされており、中には学部生の年齢で国際学会を経験するものも少なくない。その後、「学士」を持って本科同様大企業へ就職するもの、3年時編入同様、旧帝大・国立大への院編入をするものに分かれる。専攻科進学者の35%(平成26年度)が大学院へ編入している。

では大学編入のメリットはなんだろうか。

① 「視野が広がる」

② 「就職の枠も広がる」

③ 「情報の多様化」

筆者が考えることはこの3つである。

①に関しては何より学生数もサークル数も部活数も学部数も格段に多い。これだけで大学に編入する価値はあると考える。高専は基本的には閉鎖空間で、専門知識は高いが、視野が狭くなることが難点だ。サークル活動や部活動もあまり盛んでない場合が多く、社会性にやや欠けている気がする。また、文系科目や社会科目が重要視されないため、一般教養を身につける授業がかなり少なく一般常識に疎いことが多い。

②は筆者が実際に企業に問い合わせをした際、「高専(専攻科含む)採用は行っていない」という回答をする企業も多く見られた。そもそも、高専出身です、というと「高専?」と聞き返す人も数名。その点、四大卒の就職先は自由に決定でき、インターンシップへの参加も自由である。一方高専専攻科ではインターンシップへの参加は授業の都合や大学とのシステムの違いから困難である場合が多い。

③は、①や②を総しているが、大学編入をすることで、結局のところ情報を得るチャンスが圧倒的に増えるということである。そもそも機会は転がっていても高専にはそれを活用できるシステムがなく、なかなか自由な時間を確保できない現状がある。そういう意味では、大学編入をした方が将来性が広がることは間違いない。

結局のところどっちがいい?大学編入?大学院編入(専攻科進学)?

① 大学院に行くこと前提ならば専攻科に

② 就職がしたければ大学へ

と筆者は高校生を含め、高専生、大学生の皆さんにお伝えしたい。

実際筆者は①の道を選んだが、インターンシップを通した就業経験(ベンチャー含む)、サークル活動やボランティア活動は大学院からでも十分遅くないと感じた。学部段階までの比較であれば、研究経験も含め、高専のほうが断然コストパフォーマンスが高い。中学から高専に進学し、「あっ…違ったな…」という場合は(絶対1割はいる)早めに見切りをつけて辞めてしまうか、気力で5年間頑張って大学編入しよう。もちろん文系編入も可能だ。

ここまでは高専の基礎知識や高専の実情について扱った。「高専から就職はダメなの?」、「大学に編入して、どうやって企業を見つければいいんだ!」ということに関しては後半にお伝えしようと思う。次回は高専生を含め、大学生にも役立つ情報となっているので、ぜひ後編も読んでいただきたい。