「視る」という行為は日常生活で欠かせませんね。

意識している、していないに関わらず、我々は常に目をかっ開いて外界の情報を得ようとしています。

人間は五感を使って情報を収集する、とよく言いますが、実はその8割は視覚に頼っているそうです。これは驚異的な数字ですね…

人間から視覚を奪ったらどうなるのでしょうか

試しに目を閉じてみてください。あなたの外界の捉え方はどのように変化しますか?

ものの位置がわからない、形状がわからない、それがなんなのかがわからない…視覚を奪われるだけで生活がとても不自由なものになりますよね。

今回のテーマは、「視る」ことについてです!

みなさんは普段、無意識に目を使って自分の周りの環境を「視て」いますよね。実体を「視る」ことでそれを認識し、それに基づいて行動していると思います。

でも、この「視る」という行為ってなんなのか、説明できますか?

「視る」という行為、実はとても奥が深いんです。

光とはなんなの?色ってなんなの?生物はどうやって光を知覚するの?なんで生物は視覚を取得したの?

そんな疑問にお答えしつつ、もはや生理現象とも言える「視る」という行為の科学的な側面を明らかにしていきたいと思います。

物理的に解説!「視る」こととはなにか? 

生物はありとあらゆる方法で生きるために光を使っていますね。ここでいう光とは、可視光だけでなく、それ以外の波長の光も含みます。つまり、図1の赤外線、紫外線なども含めて光と定義することにします。

ただ、生物によって光を認知する方法はそれぞれです。

図1 光と波長 (出典:農研機構)

あなたはいつ視覚を使っていますか?

本を読むとき。パソコンを使うとき。すれ違いざまに人をよけるとき。いくらでも例は挙げられますね。

動物の世界はもっとシビアですね。視覚が生死を左右します。

草食動物はなるべく早く肉食動物を見つけられるように、視野がほぼ360°あるといわれています。逆に肉食動物は遠近感が重要なので、目が前についていますね。

鳥類は遠くにいる虫などの獲物を見つけられるように、視力がとてもよいといわれています。それに対して深海にすんでいる魚は視覚が退化しています。

昆虫はどうでしょう。蜂が黄色と黒に反応するのは有名な話です。また、昆虫の中には紫外線を見ることができるものもあります。

また、植物も「視る」ことは出来ます。まじかよ!と思うかもしれませんが…

ひまわりやアサガオが太陽の方向に葉を向けるのは有名ですね。

これは一般的な「見る」の定義とは異なりますが、ここでは光を何らかの形で認識することを「視る」と定義しましょう。

どのようにしてどのような光を見ているかは生物によって異なります。

紫外線や赤外線を見ることができる生物は、我々とは全く違う世界が見られていることでしょう。

そういった生物は必要に迫られて今の視覚を取得したのではないかと思います。

しかし、「視る」ことに関して、地球上の生物は全て、ある一つの共通項があります。

それは太陽です。

私たちの身の回りにある自然の大部分は、何らかの形で太陽からの光を散乱しています。

つまり、生物が太陽が放出する波長の光を見ることができるというのは、自分の外界を視覚を使って感知できることとほぼ同義になります。

図2に太陽のスペクトルを示します。実際、私たちが「視る」ことができる可視光の領域で非常にエネルギー(=明るさ)が高くなっているのが分かると思います。

まとめると、地球上で共通の光源である太陽、こいつを知覚できるようになるのが進化の過程では非常に重要だったわけです。

図2 太陽のスペクトル(出典:放送大学)

へ―そうだったのかー

と、言いたいところですが、面白いのはここからです。

考えてみてください、太陽は自ら光を発しているから見えますよね?

でも、私たちが普段見ている多くのものは光を発していません。

だって太陽が沈んでしまっては、何も見えなくなってしまいますからね!

私たちは普段、何を見ているのか?

例えば今僕の目の前にセブンのカフェラテがあります(図3)。

こいつは何で赤と白の部分がこんなにはっきりと分かれて見えるのでしょうか?

別にセブンのカフェラテ自体が太陽みたいに発光している訳ではないですよね??

図3 セブンのカフェラテ(出典:セブンイレブン)

これを理解するためには、光と物質が相互作用するときにおこる4つの現象を知っておく必要があります。

具体的には、発光、透過、吸収、散乱、の4つを見ていきましょう(本当はこれに加えて放出、屈折、反射などの現象もありますが、今回は割愛します)。

・発光

最もベースとなる現象ですね。例を挙げると太陽、たき火、ホタル、白熱電球、LEDなど、現代的なものから原始的なものまで多岐にわたります。これら一つ一つをピックアップするだけでブログが書けてしまうので、今回は省略させてもらいます。興味のある人は「ルミネッセンス」で検索してみてください。

・透過

窓ガラスに代表される現象が透過です。文字通り、入ってきた光をそのまま透過するので、透明で、あたかもそこに何もないように見えます。しかし、透過率100%という物質もなかなかなく、窓ガラスも多少光を反射したり、散乱したりするため、一様そこに窓ガラスがあることが分かります。透過率100%の物質をもし作ることができても、なくさないように細心の注意を払う必要があるでしょう。なぜなら、一度なくしてしまうともう「視え」ないからです。(通常、透過率を議論する際には、どの波長の光に対しては透過率~%という風に考えます。すべての可視光領域に対して透過率を100%を達成することは難しいでしょう)

・吸収

吸収とは文字通り、光を吸収してしまう事です。これを調べるためには、対象物を光源と自分の間に挟んであげればわかります。光源がきれいに見えれば吸収はなし、少し暗くなっていたり、見えなくなっていたりすると、吸収ありです。ただし、散乱の可能性もあるので注意が必要です。

・散乱

少し深く考えだすと、吸収とごっちゃになりやすいですが、吸収は、物質を透過していく中で光の強度がだんだん弱くなることを指します。対して、散乱はいろいろな方向に光をまき散らす現象を指します。ここではあえて深い説明はせずに感覚的なものにとどめておきますね。

散乱、吸収、屈折は実は密接な関係があるので、よかったら自分で調べてみてください。

これらの現象を用いて、身の回りのものがなぜそのように見えているのか解説していきたいと思います。まずは、セブンのカフェラテです。

セブンのカフェラテ

セブンのカフェラテは色がはっきりしています。赤、白、黒。白、黒は全ての波長を散乱しているか吸収しているかなので、面白くないですね。赤に注目しましょう。赤は何故赤色に見えているのでしょうか?当てている光は白なのにもかかわらず。

これは、青、緑の光を吸収し、赤の光を散乱させる特性を持った物質を使っているからなんです。少し変に聞こえるかもしれませんが、赤は全く吸収されていません、赤が全て散乱されているので、赤が見えているのです。

葉っぱ

では少し応用です。葉っぱは何故緑に見えるのでしょう?

先程同様に考えてみましょう。葉っぱは緑に見えますね。これは緑の光を散乱しているからです。逆に、赤の光は吸収されてしまって見えません。

では、吸収されてしまった赤色の光はどこに行ったのでしょうか?

光合成です。

植物は赤い波長の光からエネルギーを取り出し、活動をしています。普段は緑に見えている物なので、少し違和感がありますよね?

ここまでは比較的わかりやすい例を出しました。

読んでいただいた方は、私たちは何を「視る」のか、なんとなく分かっていただけたのではないでしょうか。

最後に、「そういえばあんまり気にしたことないけど…自分たちが視ているものはこんなに奥が深いんだ!」

という例をいくつか紹介したいと思います。

少し複雑ですが、興味がある方、ぜひチャレンジして読んでみてください。

目に映るすべてのものを説明せよ!!

受験の時に使った赤色のフィルター

今度は透過も入った現象を扱います。

英単語でよくお世話になった方も多いと思いますが、赤色のフィルターです。

赤ペンで書いたものは見えなーい、緑でハイライトすると真っ黒になるーとかやって遊んだと思いますが、その原因、解明できるでしょうか??

先ずは赤線の上にフィルターを置いた時の場合を話します。

赤いフィルターは青、緑の光をカットして、赤の光のみを透過させる役割を持ちます。

なので、赤いペンからの光は赤、白い紙からの光も赤、に見えてしまうため、背景に同化して見えなくなってしまいます。

次に緑でハイライトした場合です。

緑でハイライトした部分は、当然ながら、緑の散乱光を出します。しかし、フィルターを透過できるのは赤い光のみですから、そこで引っかかってしまい、真っ黒になります。

よってもともあった黒で書かれた文章と同化してしまって、見えなくなるわけですね。

このフィルターの効果は海なんかでもよく見られます。図4を見てください。

図4 海を泳ぐ鯛 

これは鯛が泳いでいる映像ですね。奥にもたくさん魚は泳いでいるのですが、実はそのうちの何匹かは鯛です。

でも赤くないですよね?

目の前にいる鯛は赤いのに、なぜ奥にいる鯛は赤く見えないのか?

先程のヒントがあってピンときた方もいるかもしれません。

実は水もフィルターの役割を果たすのです。具体的には青色のフィルターの役割を担っています、当然吸収率が悪いので、少量では透明に見えますが。

近くにいる鯛には光をわざと当てているのが分かりますね。

水は吸収率が悪いので、このように近距離では、赤色を吸収しきれません。

逆に遠くにいる鯛は色が良く分からなくなっていますね。

これは、水の中では、赤色の光が吸収されてしまっているため、全てが青色に見てしまうからです。

空と夕日

それでは最後に、空です!

図5 夕日 

鮮明なコントラストが描く夕日。。。誰もが心を打たれますね。

しかし、なぜ太陽の角度でこんなに空の見え方が変わるのでしょうか。

そもそも、なぜ空は青なんでしょう?ぜひ、自分で答えを出しながら読み進めてみてください。

ヒントです、空にある微粒子は、青い光を散乱させる特徴を持っています。

それではまず、空の色についてです。何故空は青く見えるのか。

先ほど言ったように、空の微粒子は青い光のみ散乱させます。

なので、太陽が上空にある場合、大気を通ってくる光は、青のみが散乱されます。よって青く見えます。

ただし、これが正しいのは、太陽とは別の方向を向いている場合です。太陽近辺の空を見上げている場合、太陽からの赤い光も直接目に入ってくるので、当然、赤も青も混ざった光になります。

よって、空は、太陽の近くでは白、太陽から離れて所では青く見えます。

次に夕日です。

夕日はなぜ赤く見えるのでしょうか?

今回は赤く見える場所に注目してみてください。

太陽近辺ですよね。太陽から離れているところは青いはずです。

ではなぜ太陽近辺は赤くなるのか?

太陽近辺の光は太陽から直接来る光が多いはずです。よって、その中には当然赤い光も含まれています。

ところが、夕日の場合、青い光は、地球の大気圏の中に入ってからあなたの目に入るまで、ものすごい距離を旅してくるわけです。この点が、普段の場合と夕日の場合とで決定的に違うところですね。

よって、青い光は、あなたの目に入るころは全て散乱されきってしまっています。それで、赤く見えるってわけですね。

因みに、夕日って見やすいですよね、昼間の太陽に比べて?目に入ってもあまりまぶしくない。

なんでだかわかります?

ヒントは図2です。考えてみてください!

まとめ

いかがでしたでしょうか、ものを見る、一見シンプルに見えて、じっくり考えてみると、奥の深い物理を味わえるのではないでしょうか。

もしここに書いてないもので、日常的に面白い光の現象がありましたら、ぜひコメントしてください!

次もぜひお楽しみに!