学会とは、研究者たちが集い、成果の発表や議論などを行う場です。規模は多岐に渡り、一つの分野を研究する数十人が集まる小規模なものから、様々な分野の学者が集まる数百人規模のものまであります。特に国際学会は、世界中の大学から研究者が集まる場で、学術的な成果に加え、様々な人との交流を楽しむこともできます。

私は宇宙物理学を専攻する修士課程2年の学生です。今年(2017年)の夏にオハイオ州立大学で開催された、宇宙物理学に関する国際学会に参加してきました。本記事ではその体験をもとに、学会がどういう所か、どんな準備が要るのか、等をお伝えします。

どんな場所で、何をするか?

今回私が参加したのは高エネルギー天体現象を研究する天文学者が数百人集まる「TeVPA」という非常に大規模な学会です。講演の要項には「相対論的ビーム」「ガンマ線バースト」「最高エネルギー宇宙線」「連星ブラックホール合体」などの怪しげな言葉が並んでおり、分野外の人から見たら特撮好きの集会と間違われそうな雰囲気を醸しだしています。

 

研究集会の行われた会場。発表はいくつかの分科会に分かれて行うのが一般的であり、この会場では「宇宙線」「ニュートリノ」に関する研究発表が行われた。

もちろん自分にとっての主役はいつでも自分の研究発表ですが、研究会では研究内容を宣伝することだけが重要なのではありません。大切なのは、質疑応答の時間に専門家から様々な指摘を受け、それをもとに今後の研究に活かすことです。普段関わる機会のない人々からのフィードバックは研究の質を高めていく上で非常に貴重であり、これをきっかけに思わぬ人脈ができることもあります。発表も大切ですが、「発表の後の時間」も同じくらい大切なのです。

【ポイント①】

質疑応答でできるだけたくさんのフィードバックをもらい、可能な限りその指摘を掘り下げてみよう。

多くの研究会では講演が複数続いたあと、休憩が設けられています。大抵はコーヒーとおやつが振舞われ、自由に時間を過ごすことができますが、この休憩時間も実は重要な研究活動の時間です。面白い発表をしていた人に話しかけたり、自分と近い研究をしている人を捕まえて意見を交換したり、フランクな雰囲気でさまざまな研究者と交流できる絶好のチャンス!その分、帰国後にやることが山のように増えて大変でもありますが(笑)。また、普段論文でしか知ることのなかった先輩研究者の方々と実際にお話しできるのは、とても刺激的な体験でした。

【ここがポイント②】

休憩時間こそ最大のチャンス。上手に利用して気になる人に積極的に話しかけにいこう。はじめは少し気後れするかもしれないけれど、研究者は必ず学びたい意欲のある学生を歓迎してくれる。

また、国際研究会は様々な国の研究者と交流できる機会でもあります。多くの学会では発表会後に懇親会があり、場合によっては軽い旅行に行くこともあるようです。現地の名産品を食べられたり、博物館を見学できたりすることも……?もちろん学会によりますが、懇親会の主催者が精一杯のおもてなしをしてくださり、楽しい時間が過ごせます。

街の美術館が今回の懇親会の会場。中を自由に見て回った後、館内のレストランで歓待を受けた。

せっかく海外に来たので観光にも時間を使いたいところですが、公費で来ている場合、延泊などはやや厳しく制限されることが多いのが残念なところ。「学会の翌日に現地の共同研究者と打ち合わせを入れる」など、滞在を延長する裏技(?)はあるようです。場合によっては自費でで滞在し観光をすることが許されるケースもあるようなので、学会の経験者や資金を出してくれる機関に相談してみても良いかもしれませんね。

どんな準備が必要だったか?

学会参加にあたり大切であることは、発表できる成果を出すことです。しかし必ずしも完了した研究である必要はなく、解析中の最新データに関する発表や、新しいアイデアの発表もあります。私は今回、学術誌に投稿する前の新しい計算結果を発表しました。

どの程度の成果であれば発表を認められるのかについては、申し込む学会により異なります。その判断は学会の主催者に委ねられます。発表希望者は申し込む際に自らの研究内容をまとめた文章としてAbstract(アブストラクト)を提出します。その内容を主催者側が審議し、発表の受理拒否を決定します。つまり学会で発表をしたければ、研究成果をまとめるだけでなく、Abstractに意識を払うことが重要です。主催者は多くのアブストラクトに目を通して審査をしなければならないため、「読みやすく」「分かりやすい」文章を書くことができればアブストラクトの評価は上がるでしょう。)

【ポイント③】

アブストラクトは、分かりやすく簡潔に。提出する前に何度か教官や先輩にチェックしてもらおう。

 

さて、めでたく参加が決まった場合、特に国際学会への参加には多くの準備が必要となります。海外渡航のためのパスポートやビザなどの準備だけでなく、現地の交通事情やチップなどの情報についても調べておくことも必要です。

使ってみて非常に便利だったのは地図アプリです。目的地への道のりやバスの乗り継ぎなど、分からないことをすべて解消してくれて、滞在中は地図アプリを手放せませんでした。また、レストランを探す際などにも便利でした。渡航前に地図・GPSを使えるようにしておくことや端末の充電を切らさないよう注意しましょう。

【ポイント④】

地図アプリを駆使しよう。デバイスの調子は万全に整え、可能であればモバイルバッテリーを持参できれば尚良し。

また、国際学会の場合は発表から質疑応答、その後他の研究者と話し合いをする際なども、言語は当然英語です。私は渡航前に練習を人に見てもらうだけでなく、滞在中は初日から発表日まで、毎朝2回発表の練習をしていました。この「慣れ」のため練習は効果絶大で、当日はスライドを全く見ずに言いたいことがスラスラと出てきました。                    

【ポイント⑤】

口頭発表は事前準備が命。現地入りした後も練習は怠らないこと。

そして、多くの人が不安に思う英語について。研究では頻繁に英語を使う機会が多い(論文の読み書き、セミナーや授業など)ため、専門分野の会話は雑談に較べて乗り切りやすいように感じました。難易度が高いのは雑談です。意外かもしれませんが、雑談をするときはスライドなどの用意がないので、文字で話を追うこともできません。会話の流れを止めないようにコミュニケーションをとるのは至難の業です。英会話の雑談は、とにかく場数を踏んで慣れるしかないようにも思います……。

おわりに

国際学会は、普段関わることのない多くの研究者たちと直接議論を交わせるだけでなく、あらゆる場面で自分を大きく成長させることができるチャンスです。学部生も修士学生も、積極的に自分が参加したい学会を見つけてみてはいかがでしょうか?きっと研究者として大きな一歩を得られることでしょう。