理系の学生、とくに大学院生のように専門的な知識や技能を身に着けた学生は、就職先の選択肢が多い分進路に迷うことも多い。

また、研究が忙しいこともあり、大手企業しか考えない、学内推薦で決めるなどの結果、就労意識のミスマッチや早期離職といった問題も起こりやすい。

就職後のミスマッチを起こさないために、理系学生はどのように就活と向き合うべきなのだろうか?就職率97.9%(女子の就職率は98.9%)と、私立理工系大学の中でも高い就職率を誇る芝浦工業大学キャリアサポート課の三船さんに話を聞いた。

理系大学院生がはまりがちな就活の落とし穴とは?

――大学は研究機関、教育機関として社会的に位置づけられていますが、なぜ就職活動のサポートを積極的に行うのですか?

一番大きな理由としては、芝浦工業大学の建学の精神が「社会に学び、社会に貢献する技術者の育成」であるからです。工業大学という名の通り、研究のための研究というよりは実社会の役に立つ研究や社会に出て働くことを期待しており、就職にはかねてから力を入れてきました。

あとは、社会へ優秀な人材を輩出しているというブランドイメージをつけ、大学を存続させたいという意図もあります。

――芝浦工業大学は理工系の大学ですが、理系と文系で就活にはどのような違いがあるのでしょうか?

そうですね、やはり文系と違って選んだ専門に対する思考力や研究に対する想いを問われる事が多いです。

理系の学生は、文系の学生以上に多くのエネルギーを勉強に使っていると思うんですね。よく皆さん面接でサークルやアルバイトでの経験を話すと思うんですけど、なんとかして単位を取ったであるとか、勉強に関するエピソードはあまり話さない。理系環境に身を置いてると研究して当たり前、勉強して当たり前なのかもしれませんが、勉強して得てきたことを自分自身で評価していない事は勿体無いと思いますね。

文系学生との差別化を図るには、研究や学問を進める上での困難をいかにして乗り切ったかを面接で伝えると、もっと良いのではないかと感じます。

――文系でトーク力のある学生に比べると、専門的な研究の話は地味なのではないかなと思ってしまいます。

その研究のバックグランドや展望を説明しないで、概要の深いところしか言えなくて、人事にはわからない説明をしてしまうケースは確かに多いです。これでは難しいことを簡単に説明出来ないと思われてしまうので、キャリアサポート課の職員など、研究の素人の目を一度通してみることが重要だと思います。

――なるほど、つい学会と同じようなスタンスで説明してしまうのは課題かもしれません。この他に理系の大学院生の就職活動における課題は何でしょうか?

私達が感じる問題としては、学部生に比べて大学院生は自信を持っているので、自力で就職活動を行なっていこうという人が多いことです。特に学部時代に就活した人は、一度経験したから大丈夫だろうと思ってします。ここが大きな落とし穴で、就職活動は他人の目を通し客観的に自分を捉える事が重要であるので、自分一人ではなかなか難しいと思いますね。

また、二年間のうちに社会情勢も大きく変わってきているので、そこの情報収集が手薄なまま就職活動を行い失敗してしまうケースも多々みられますね。この辺りが大学院生ならではの課題ですかね。

キャリアサポート科の取り組みについて

――就職活動を支援する上で心がけていることは何でしょうか?

学生一人ひとりが会社に入ってキャリアを積み上げていって、働いてよかったなと思える職場に送り込むことが一番大事だと考えていますね。今の時代一つの会社に入って安泰であるということはまったくなくて、ある日突然職を失うこともあります。会社に就職することを目的とせず一人の人間としてキャリアを積めるようにサポートしています。

――具体的に理系学生からどのような相談を受けますか?

相談される内容としては、エントリーシートの書き方、面接のやり方や内定の断り方などのテクニカルな部分が非常に多いというのが特徴ですね。むしろ、「私はこういった職業に就きたいのですが、どういう企業がありますか?」といった質問をもっとして欲しいと思っています。

――職種について相談されることもあまりないということですか?

そうですね、この相談をしてくる人は少ないですね。やっぱり会社ありきの発想が強くて、職種について考えている人は少ないですね。また職種に関しての幅が狭く、研究開発職に偏ってしまっています。理系学生の場合であればアフターサービス、品質管理、購買や物流などたくさん知識を活かせる職種があるのに、そもそも情報を知らなくて発想がない人が多いです。キャリアサポート課にどういう仕事が世の中にあるか聞いてもらってもいいですし、インターンシップに参加するのも有用ですね。

「就活」と「研究」は分解せよ!理系大学院生への就活におけるアドバイス

――どのように大学の就活支援を利用してもらいたいですか?

就活に際して研究内容を話す場面があると思うんですけども、もっとキャリアサポート課に頼ってもらいたいと思いますね。というのは、相手は研究に対してプロではないのに、ガチガチの説明をしてしまう学生が多いからです。

――大学院生が研究と就活を両立するにはどうすればいいでしょうか?

これは難しい問題ですよね。単純にどちらを優先するということでもないですし、非常に悩んでいる学生も多いと思います。「就活」と「研究」という大きな2つの塊をそれぞれ細かく分解して、今は何をするべきかの優先順位をつけて整理していくことが大事です。

このマルチタスクを行う力は社会にでても重要であるので、大変かと思いますが身につけてほしい技能ですね。「就活」「研究」といった大きな塊を目の前にすると人間プレッシャーを感じるので、細かく分解して、自分一人で抱えないでキャリアサポート課なり、友人なりに相談してみることで漠然とした不安感は払拭出来ると思います。

どこの大学でもそうだと思うんですけど、大学の就職サポートというのは、民間と比べても純粋に学生の立場に立って支援をしている人が多いと思うのでもっと大学を頼りにして欲しいなと思います。