学振特別研究員に対する副業の制限が緩和へ

学術振興会特別研究員、通称「学振」は、優れた若手研究者が研究に専念できるように、博士課程の学生やポスドクに対して生活費及び研究費の援助を行う制度です。特別研究員は学振を使うことにより支援を受けられることと引き換えに、これまで様々な収入上の制限を受けていました。

しかし、平成30年4月1日から
1. 副業の制限
2. 海外渡航の制限
3. インターンシップの制限
の三つに対して規制が緩和されることが同年1月19日付で発表されました。

これまでの制限

これまで、特別研究員となる場合は研究に専念することが最優先とされたため、研究以外の業務に対して報酬を受け取ることが原則として禁止されていました。またインターンシップは年度につき3ヶ月以内であることや、海外渡航は採用期間の二分の一以内であることなどの制限により、研究に専念するための環境を整えづらくなってしまうという問題がありました。
研究者からは、こうした制限が特別研究員を取り巻く現状に合わないとされ、規制緩和を求める声が多く上がっていました。

規制緩和の内容

来年度からの規制緩和について、学術振興会からの通知によれば、次のような変更が予定されています。

1)副業禁止の規定について

現状で例外的に認められている非常勤講師などの仕事も就業時間の制限が厳しすぎること、地方自治体などで研究に関わる業務を無報酬で行う場合に労災保険が適用できないことなどが問題とされていました。
これに対し緩和後は、①研究に支障が出ないこと②常勤職でないこと③指導教員など受け入れ研究者が認めていることを条件に、副業で報酬を受け取ることが認められました

2)海外渡航の制限について

分野によっては海外で長期にわたるフィールドワークが必要とされ、現状で認められている期間では研究が十分に行えないケースがありました。この問題を受け、緩和後はすべての特別研究員に対して海外渡航を採用期間の三分の二まで認められることになりました。

3)インターンシップ制限について

これまではインターンシップに参加することによって奨励金が減額されるという規則がありました。しかし今回の緩和により、この減額規則が撤廃されると同時に、インターンシップに参加できる期間が年度につき3ヶ月以内から6ヶ月以内にまで引き伸ばされました。

予想される効果

平成30年度からの規則変更により、特別研究員が研究に必要な業務や海外渡航をする際の不自由が以前と比べて大幅に緩和される運びとなります。しかし、副業として認められる業務内容がいまだ限られていることや、インターンシップの参加期間制限など、生活費を安定的に稼ぎ研究に専念する環境を整えられる状況になったとは言い難いのが現状です。

また、副業を制限している一方で特別研究員と学術振興会との間に雇用関係が認められていないなど、特別研究員を取り巻く経済的な状況にはまだ問題が多く、それらを全て解決させるには至っていません。今後も引き続き特別研究員たちが積極的に問題提起をすることで、日本全体の特別研究員の研究環境が改善されることが望まれます。

 

学術振興会 特別研究員についての掲示 www.jsps.go.jp/j-pd/pd_keiji.html

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