尖ったAI人材を育むには?AIインキュベーションKERNELから未来のイノベーター達へ【ディープコア✕NVIDIA】

技術で世界を変える志を持つ者たちの潜在能力を解き放つ――。

AI特化型のインキュベーターである株式会社ディープコア(以下ディープコア)は今年5月、このビジョンを実現させるべくAI人材、特にディープラーニング分野の起業家育成に特化したコミュニティ&コワーキングスペース「KERNEL(カーネル)」を東京・本郷にプレオープン。さらに、GPUの開発で世界をリードし続けるNVIDIA Corporation(以下NVIDIA)と協業し、KERNELに参加したメンバーはNVIDIAからAIインフラ、トレーニング、コンサルティング、起業支援を含む包括的なサポートを受けることができるという。

今回はディープコア代表取締役社長の仁木勝雅さんと、エヌビディア 日本代表 兼 米国本社副社長の大崎真孝さんに、ディープラーニングと起業の可能性について、そして若手研究者や技術者に対する思いを対談形式で語ってもらった。


仁木 勝雅さん
株式会社ディープコア 代表取締役社長


大崎 真孝さん
エヌビディア 日本代表 兼 米国本社副社長

AIの牽引役はスタートアップ!KERNEL発想のもととなった危機感と問題意識とは

ーー今回ディープコアがKERNELを立ち上げた意図と、KERNEL向けに協業を決めた大崎さんの思いについてお聞かせください。

仁木さん(以下仁木):まず、AIに限らずスタートアップを日本で増やしたいという思いが出発点にありました。

その背景として、日本の産業構造が固定化し、新しいものが生まれにくい状況になっているのではないかという問題意識があります。過去の歴史を振り返っても、異分野の企業や新興企業が産業の垣根を崩し、新しい発想で社会を変えることがイノベーションの原動力となっています。AIはあらゆる分野を横断する技術です。今後AIがあらゆる産業に浸透し、革新を起こすであろう状況の中で、優れた若手AI起業家を育成するインキュベーションの拠点"KERNEL"の着想を得ました。メンバーは、若手のAI技術者や研究者、応用分野人材を対象にしています。

大崎さん(以下大崎):仁木社長もおっしゃったように日本はスタートアップが少ないこと、更に今後の産業の鍵となるAIを活用したスタートアップが出遅れていることに危機感を覚えています。

NVIDIAは、インセプションというAIスタートアップを支援するプログラムを展開し、全世界にある約2,800社のAIスタートアップをパートナーとして迎えています。その多くは米国と中国で、日本はやっと100社に届くところです。

全世界的な潮流を見ると、AI、とりわけディープラーニングそのものを盛り上げているのは実はスタートアップです。彼らのディープラーニングに特化した技術基盤がもとになり、様々なAIのフレームワークやAIのアプリケーションが生まれて活用されています。このままだと日本は取り残されてしまうのではないか、という危機感から、まずはAI人材を育む土壌づくりが必要だと考えています。

ーーこれまで産業界を牽引してきた大手企業がAIの導入や技術発展をリードすることはないのでしょうか?

大崎:大手企業は優秀なエンジニアがたくさんいますし、立派な研究施設もありますから、大手がイノベーションを起こせないということは決してないと思います。ただ、ディープラーニングはコンピューティングとデータサイエンスの両方の側面を持ち合わせている特殊な技術なので、今までの技術のみの延長線上ではイノベーションが起こりにくい可能性があります。

しかし、大手企業はこれまで培ってきた技術と知見が大量にあります。スタートアップの持つ技術とマージすることで、スタートアップのみでは成し得ない新たな技術や製品を作ることができるのではないでしょうか。

ーー先ほど、AI業界を牽引するスタートアップは中国と米国に多いと伺いました。大崎さんは以前、米国のテキサス・インスツルメンツで数年間働かれていたとのことですが、米国のスタートアップにはどのような空気があるのでしょうか?

大崎:アメリカで一番最初にとまどったのは議論の進め方でした。いろいろな人がいろいろ意見を言うので、話がすぐ発散するんです。「今さらそんな話するの?」という空気を読まない発言や、脈絡のないアイディアが次々に出る。それでも互いの意見を尊重しますし、人も多様で流動的だからこそ、フラットに発言できる雰囲気があります。

仁木:確かに、意見がはっきり言えるというのは大事ですね。先日KERNELメンバーが集まるイベントを開いたのですが、積極的に話す人が多いので驚きました。技術力だけでなく自分の意見をはっきり言えるコミュニケーション力を持っている、というのはかなり心強いと感じましたね。また、多様な人材という点ではKERNELのメンバーの中には留学生も1割ほどいて、積極的に募集しています。いろいろな立場の人材がオープンな議論をすることで、新しい発想やアイデアが生まれやすくなるんだと思います。

すべての産業を繋げる。AI技術がもたらす破壊的イノベーションとは?

ーー*Society5.0(超スマート社会)の実現に向けて、AIやIoTを始めとする先端技術を産業や社会への取り込むことが挙げられています。今後AIは社会にどのようなインパクトをもたらすのでしょうか?

大崎:AIはすべての産業を繋げる技術だと思っています。これまでの技術は、例えば「車を動かすための技術」、「インターネットを繋げるための技術」というように、利用先が限定されていました。しかしディープラーニングは一つのアルゴリズムで分野横断的に活用できます。丁度インターネットがあらゆるところで繋がっているようなものですね。毎日のように話題に出ている自動運転、ものづくりの自動化であるファクトリーオートメーション、あるいは医療の分野でも、共通してディープラーニングという技術が活用され始めています。

今までの産業革命と比較しても、ダイナミズムというか爆発的にテクノロジー自体が成長するポテンシャルを持っていると思います。

仁木:ディープラーニングでできるのは画像解析だったり自然言語処理の生成だったり、すべてのものを横串で繋げるものです。そのためKERNELのメンバーも、AIの技術者や研究者だけを対象としているわけではありません。AIと掛け合わせる分野の専門性を持った人たち、たとえば農業や医療、ロボティクスに特化したメンバーもいます。

*参考:未来投資戦略2017(内閣官房⽇本経済再⽣総合事務局)

ーー日本においては特にどの産業でどのように活用されるといいでしょう?

大崎:私はものづくりだと思っています。ずっと世界のトップを走ってきたクオリティや性能、今まで伝承されてきたクラフトマンシップを保ち続けるためにAIというブレーンをいれたいんです。AIは破壊的イノベーションを生む、とよく言われますが、実際は破壊ではなく融合による加速だと思っています。

仁木:たしかに製造業はキーになりますね。例えば、アパレルや食品といった業界において、上流から下流までの構造は細分化されていると、段階ごとに機械化されていても全体を繋ぐ際は手工業的になってしまいます。各パートごとにAIを導入することも当然考えられますが、全体をAIで最適化することでより効率的な構造が作れるのではないかと思います。

尖った人材にさらなる活躍の場を KERNELの根底にある思想とは

ーーKERNELは、AIの技術者や研究者、AIの応用分野の専門性を持った人が集まるメンバー制のコミュニティと伺いました。KERNELに入ると、具体的にどういった支援が受けられるのでしょうか?

仁木:24時間オープンのコワーキングスペースで、豊富な計算資源の利用が可能です。食事の提供もあります。また、企業との共同プロジェクト(実証実験など)に参画する機会や、メンターのサポートなど、起業を考えている方への支援を提供しています。優れたAIスタートアップには投資も検討します。8月にフルオープンする予定です。

大崎:NVIDIAからは、世界最先端のGPUアーキテクチャやクラウドベースのプラットフォーム「*NVIDIA GPU Cloud (NGC)」の提供を行います。さらにKERNELメンバーへの技術コンサルティングと、インセプションプログラムを活用した起業支援など、あらゆる面でサポートできればと思います。

*NVIDIA GPU Cloud (NGC):クラウド上で利用することができるGPU

ーーKERNELメンバーにはどのような期待をもっていますか?

仁木:KERNELは技術で世界を変える志のある方を募集していますが、現在既に集まっているメンバーは思っていた以上に尖った人が多い印象を受けました。自分の研究を極めたい人もいれば、すぐ起業したい人もいますし、好きなことをひたすら追求している人もいます。その人ならではの尖りやこだわりがイノベーションに繋がればと思います。

大崎:仁木社長が仰ったように、こだわりや尖ってる部分というのはぜひ大切にしてほしいです。日本人は個で動く以上にチームワークが得意で、これは海外にも誇れる日本の強みだと米国で思いました。ただKERNELには尖った技術で一発当てたい、とか探究心を持って技術を習得したい人が集まったコミュニティになってゆくと思うので、そうした人が切磋琢磨することでより尖った人が活躍できる環境になるのではないかと思います。

仁木:日本の学生の皆さんの多くは、「働く」という言葉から「企業に雇われる」姿を想像すると思うんですが、そうした「働く」という概念そのものも変えていきたいと思っています。KERNELのメンバーには、企業への就職だけでなく、起業もオプションの一つだと考えてもらえれば嬉しいですね。

ーー単に好きなことをひたすら追求している人もいるというお話でしたが、KERNELメンバーは全員起業を目指さないといけないのでしょうか?

仁木:そんなことはありません。AI技術で社会を変えたいという思いがあれば、必ずしも起業意欲がなくても大丈夫です。もちろん、KERNELでの活動を通じて起業に興味をもってくれれば嬉しいですね。例えば、KERNELで立ち上がるであろうスタートアップの創業メンバーとして参加してくれてもいいと思います。起業する人は当然全力でサポートしますが、起業って1人でできるものではないんですよね。基本的には個性の違うメンバーが必要で、CEOのポジションが向いている人もいればCTOとかCFOといった立場の方がいいという人もいます。それぞれの強みを生かしてこれからの社会を引っ張ってほしいなと思います。

ーー最後に「これからディープラーニングを使って何かを成し遂げたい」と考えている方に向けてメッセージをお願いします。

大崎:ディープラーニングってすべての産業を貫くので、エンジニアの可能性をより広げるものだと思うんです。たとえばNVIDIAでいうと、スーパーコンピューターに特化したエンジニアも、ディープラーニングをフックにロボットメーカーや自動車メーカーの人と話ができます。ディープラーニングはタコツボ的な技術ではなく、医療・ファイナンス・リテールといった分野にもアイデア次第で何でも使える。これはディープラーニングをこれから学ぶ方にとっても夢が広がって面白いのではないかと思います。

仁木:ディープラーニングは、それ自体が目的ではなく、目指すものを実現する優れた手段の一つだと思います。「社会をこんな風に便利にしたい」とか、皆さんそれぞれが根本的に持つ情熱を、この革新的な技術でぜひ形にしてほしいと思います。

<KERNEL募集要項(抜粋)>

今回の応募にあたっては以下の条件を踏まえてご応募ください。

応募条件

18歳以上の学生または社会人
KERNELに一定頻度来ることができる方

歓迎要件

人工知能に関心があり、機械学習 (特にディープラーニング)に一定の理解がある方(または、これから学習する強い意欲がある方)

理工系の大学生・大学院生

コンピューターサイエンスの実社会への応用に関心がある方

※低学年の方も実績の有無にかかわらず、積極的に応募歓迎いたします

その他詳細については、下記リンクをご覧ください。

KERNELへのエントリーはこちらから

関連キーワード
  • 人との出会いを資産にする―世の中の新しい「当たり前」を作るSansanの挑戦
  • 異分野の技術をつなぐ場を企業へ提供―「リンカーズ」が目指すものづくり産業の変革
  • 尖ったAI人材を育むには?AIインキュベーションKERNELから未来のイノベーター達へ【ディープコア✕NVIDIA】
  • 研究者はいかに社会で生きていくか?キャリアディスカバリーフォーラムで見つける、研究者の未来の仕事
  • 理系脳を生かせ!社長人材を求むUSEN-NEXTグループの若手社員インタビュー
おすすめの記事