燃え尽き症候群の対処法や回復方法として注目されるワーク・エンゲージメントとは??(前半)

Lab-Onの記事をご覧の皆さんの中には、日々研究や勉強に勤しんでいる方が多いのではないのでしょうか。しかし、成果を出したいがあまり、精神的な負荷をかけすぎてしまい、精神的に燃え尽きてしまうということもしばしば。そこで、今回は燃え尽き症候群の原因を明らかにしながら、個人でもできる燃え尽き症候群の対処法を前半・後半の2回にわたってご紹介いたします。

燃え尽き症候群とは?

心理学における広義の燃え尽き症候群は、それまで意欲を持って一つの事に没頭していた人が、あたかも燃え尽きたかのように意欲を失くし、社会的に適応できなくなってしまう状態の事をさします。

燃え尽き症候群について、初めて学術論文で取り上げ実証研究をしたFreudenberger博士によれば、以下の3つの症状を燃え尽き症候群と定義するようです。

1. 情緒的消耗感(emotional exhaustion)
精神的な疲労感を感じ、心が精神的にからっぽになってしまっている状態をさします。こうした状態に陥ってしまうと、
・集中できない
・睡眠障害
・免疫力の低下
といった問題が発生します。

2. 脱人格化(depersonalization)
(1)によって引き起こされる症状で、こうした状態に陥いると他人の感情を正しく推し量ることができなくなったり、逆に人がどう思っているのかについて客観的にみることができなくなってしまうことをさします。         
こうなってしまうと、
・疎外感
・コミュニケーション障害
・引きこもり
などにつながり、人との共同作業が難しくなってしまいます。

3. 達成感(personal accomplishment)の低下
何もしたくないと感じたり、楽しくないと感じている状態がこれにあたります。こうなると、何か行動を起こすのが億劫になり無気力になってしまいます。

なぜ燃え尽き症候群になるのか

それではどんな時に燃え尽き症候群が引き起こされるのでしょうか。
燃え尽き症候群を引き起こす要素は大きく分けて3つあります。

(1)取り組んでいることへの負荷
何かをする際に、それをするための負荷が高いと燃え尽きてしまう可能性が高くなります。具体的には、

・仕事量が多すぎる
・個人の能力対して仕事のレベルが見合ってない
・周りからの期待にさらされ、常にプレッシャーを感じている

などが挙げられます。

(2)外部リソース
また、要求度だけではなく仕事のリソースの少なさも燃え尽き症候群の原因になります。これに当てはまるものとしては、
・取り組むための時間が足りない
・周囲からのサポートが少ない
・裁量権がない(自分が自由に決定して、取り組むことができる部分が少ない)
・やった成果に対するフィードバック(自分が投下した時間に対する見返り)が得られない
などが該当します。

(3)パーソナルリソース
先の2点に関しては、環境的な部分に依存する部分が多いのですが、ほかにも個人の特性も燃え尽き症候群のなりやすさを測定する変数としてかなり重要になってきます。

たとえば、
・ポジティブさ
・セルフエフィカシー
―自分のやり方しだいで状況をコントロールすることができると思える力
・レジリエンス
―ストレス負荷などが強い状態や逆境に直面したときに、それに圧倒されずに克服する力
・自尊心

が低いほど、ストレスに圧倒されてしまう傾向にあります。

ワーク・エンゲージメントとは

「燃え尽きている」とは反対の燃えている状態のことを「ワーク・エンゲージメント」が高いといいます。

また、(1)取り組んでいることへの負荷、(2)外部リソース、(3)パーソナルリソースが理想的な度合いでコントロールできている状態であれば、人は燃え尽き症候群にならないだけではなく、仕事そのものに大きなやりがいを感じ、幸福感で満たされることが最近の研究でわかっています。
 燃え尽き症候群に関する研究で有名なカリフォルニア大学バークレー校の名誉教授のChristina Maslachは、こうした「仕事に関して、ポジティブで充実した心理状態でありながら、活力を持ち、仕事に関して強く意味を見出し、さらに没頭している状態」を「ワークエンゲージメントが高い状態」と定義づけています。

 組織心理学のBekker教授 とDemerouti教授の実証研究では、このワーク・エンゲージメントを高めることが、創造性を高めたり離職率の低下につながることがわかっています。次回は、燃え尽き症候群を防ぎ、ワーク・エンゲージメントを高める方法を紹介したいと思います。

<出展>
Adler,J.Hershfield,H .(2012) .”Mixed Emotional Experience Is Associated with and Precedes 
Improvements in Psychological Well-Being
”. 
Schaufeli, W. B., Leiter, M. P., & Maslach, C. (2008) .”Burnout: 35 years of research and practice”. Career Development International. 14.
 Bakker,A& Demerouti,E.(2008).Towards a model of work engagement. Career Development International, 13209–23.
Brotheridge, C., and Grandey, A. (2002). “Emotional labour and burnout: Comparing two perspectives of “people work”.Journal of Vocational Behavior, Vol.60, p.p.17-39.
Garland, L.l.Franken,H.& Howard,O. (2012a).” Cue-elicited heart rate variability and attentional bias predict alcohol relapse following treatment”. Psychopharmacology, 222(1)

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