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宝石化する、表情までくっきり……いろんな「化石になる方法」を紹介

「化石になりたい」人のための一冊

「わかる……」。

『化石になりたい』という本のタイトルを見て、思わずそうつぶやいてしまいました。何万年もの時を経て、地中から掘り出された太古の生物の痕跡。何も語らないけれど、たしかに存在していたことを静かに示す化石には、吸い込まれるような魅力があります。博物館で「自分が化石になったら……」と想像したことのある人もいるのではないでしょうか。

私たちが化石になる。あるいは、大切なものを化石にして永久保存する。そんな空想を、「タフォノミー(化石生成論)」という古生物学の分野に基づいて真面目に研究した本が、『化石になりたい –よくわかる 化石のつくりかた−』(土屋健著、前田晴良監修)です。

化石とは「掘り出されたもの」

皆さんは、化石と聞いてまずどんなものを思い浮かべるでしょうか? アンモナイト、恐竜の骨格標本、押し潰されて石板状になった古代魚などがメジャーですが、実際にはもっとたくさんの種類があります。著者は冒頭の入門編で、化石の定義について次のように述べています。

そもそも、日本では「化石」という字を使うものの、英語の「fossil」に「石」という意味はない。語源はラテン語の「fossilis」で、「掘り出されたもの」という意味だ。そう考えれば、必ずしも石のように硬い必要はない。シベリアの永久凍土から見つかった冷凍マンモスや、琥珀の中に閉じ込められた昆虫たちなど、一見して石のようではない標本も、れっきとした「化石」である。

ふさふさの毛並みのマンモスも、体の成分が変化していても、地中から掘り出された生物の痕跡であれば化石になるのです。本書では、そんな化石を「洞窟編〜人類化石実績No.1!〜」「火山灰編〜鋳型として残る〜」など、生成条件などによって12種類に分類。それぞれの特徴と代表的な化石、生成過程、化石になるための準備や注意点を紹介していきます。

虹色に輝く“オパール化”した恐竜の背骨

具体的な例を見てみましょう。たとえば「湿地遺体編〜ほどよい“酢漬け”で〜」では、表情がはっきりわかるほど状態良く保存された人体化石(湿地遺体)が写真付きで紹介されています。

中でも、現状最古の湿地遺体である「トーロンマン」は、発見者が殺人事件を疑って警察に通報したほど。調査によって紀元前375年に死亡したものと推定されたのですが、紀元前に死んだとは思えないリアルさです。

死後に体の成分が変化して、宝石になった化石もあります。これを紹介しているのが、「宝石編〜美しく残る〜」。ここでは、表面が鮮やかな赤や緑に輝くアンモナイトが紹介されています。この化石は「アンモライト」と呼ばれ、実際に宝石として取り引きされています。

アンモナイトは無脊椎動物のため、脊椎動物の人間が同じように宝石化することはできないのだそう。ですが、人間と同じ脊椎動物が宝石化したケースもあります。

本書では、オパール化した虹色に輝くクビナガリュウの歯や背骨の化石を写真とともに紹介。これは骨の内部にある微細な空洞に、オパール成分が流れ込むことでできあがる化石です。骨自体は溶けてしまい、オパール成分だけになっていることも多いそう。生きていた時の体の成分は溶けてなくなり、代わりに流れ込んだオパールが、その形を何千万年も未来まで伝え続ける。化石の不思議さ、奥深さを感じさせる話です。

化石になること自体が奇跡的

そもそも、命を終えた動物が綺麗に化石になるには、死後に肉食動物に食べられたり、風雨で壊れたりしないうちに地中に埋まることが重要です。本書を読むと、その工程で失われた化石(正確には化石になる前のもの)がたくさんあることがわかります。

動物たちは私たちと違い「化石になりたい!」とは考えていなかったでしょう。たまたま整った条件下で命を終え、化石となって発掘されるのは、それだけで奇跡的な確率なのだと思わされます。

そんな貴重な化石に敬意を示すように、本書では化石の写真がふんだんに掲載されています。ほぼすべてのページに化石標本の写真が掲載されており、眺めているだけでも好奇心が刺激されます。

また、化石がとてもたくさんの情報を持っていることにもあらためて驚かされます。骨格、細胞、生きていた時の年代、食べていたもの、死んだ時の状況、地質や水質……。これらの情報は、過去の生態系を研究する古生物学や地質学とも関係しています。本書は化石がどのようにしてできるのかを研究するタフォノミーをテーマにしていますが、他分野への足がかりとなる内容にもなっています。

「どんな化石になりたいか」想像をめぐらせて

ただし、具体的に化石になる方法が提示されていても、日本の法律上、本当に化石になることはできないことは触れておかなければいけません。これは実践書ではなく、あくまで思考実験を楽しむもの。このことは、本書の中でも繰り返し注意喚起されています。

がっかりした人もいるでしょうか? しかし本当になることはできなくても、漠然とした想像が明確に、鮮やかになっていくのは楽しいものです。どんな化石になりたいか、そのためにはどの地域で地中に埋まればいいのか、未来の研究者に役立つ化石になるにはどうすればいいか。本書のわかりやすい文章と豊富なイメージは、そんな想像を最大限に掻き立ててくれるはずです。

いつか本当に化石になれるのなら、あなたはどんな化石になりたいですか?

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