実験のレスキュー隊は進捗を救う!研究所発ベンチャー「Bee Beans Technologies」

いかに効率よく実験を行うか?必要な試料の調製、実験に必要な装置の組み立て、実験結果をまとめグラフにする作業など、ひとつの実験をするにもたくさんの工程が必要だ。またそのための技術を習得するのにも時間がかかる。これらの作業が効率化できれば少なからず研究のスピードは早まるであろう。この課題の解決に挑む会社のひとつが「株式会社Bee Beans Technologies(以下BBT)」だ。

世界に名を轟かす研究所の技術を用いた研究支援

BBTは大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構(以下高エネ研)発のベンチャー企業として、2006年に発足した。高エネ研は「宇宙・物質・生命の謎を解く」をコンセプトに、素粒子物理学を中心に研究を行う機関である。ノーベル賞を受賞した小林・益川理論を実証した実験装置「KEKB加速器(現SuperKEKB)」を有し、世界中の優秀な研究者と技術が集まっている。BBTはその高エネ研の素粒子物理研究で培われた技術を使い、研究を支える業務をおこなっている。

BBTの主なサービス内容は大きく分けて2つ。ひとつは、ハードウェア・ソフトウェア開発、実験サポートなど直接の実験の支援。もうひとつは技術移転による回路基板の販売による間接的な支援である。それぞれについて詳しく説明しよう。

エキスパートによる物理学者のための何でも屋

©︎KEK

 

物理実験の検出器には、主に2つのものが必要となる。ひとつは、検出器自体の設計や測定したデータを読み出すための回路基板。もうひとつは、読みだしたデータを処理するためには適切なソフトウェアだ。しかし、回路基板やソフトウェアのアイディアを設計に反映するには、時間と労力がかかる。そのため、経験豊富なBBTは実験に必要なハードウェアとソフトウェアの両方を開発しているのだ。

販売の対象となるのは、「検出器を使って何かを測定する」実験をおこなう企業や研究所。例えば、東京大学地震研究所では、宇宙から降り注ぐ素粒子であるミューオンを使って火山の中を透視する実験が行われている※。これには、ミューオンを検出するための検出器が必要であり、BBTが創業当初からその開発をサポートをしている。

また、同社は機器だけでなく実験へのサポートも提供している。物理実験には装置の細かい調整や地道なデータ収集がつきものであり、ノウハウと経験が必要であることも多い。BBTは実験機器の特性を理解したスタッフを派遣し、実験手順書の作成や実験準備、データのバックアップなど多岐にわたるサポートが可能。また、検出器から取得したデータは膨大な計算が必要となるが、BBTはその解析作業も研究者に代わっておこなってくれる。

実際にBBTが支援している大強度陽子加速器施設(J-PARK)の物質・生命科学実験施設では、得られたデータの補正やデータのグラフ化、使用する試料の準備や実験機器の動作環境の監視などをおこなっている。

つまりBBTは物理実験に必要なハードウェアの提供からデータ取得の手伝い、解析のためのソフトウェアの開発など、研究を幅広くサポートしてくれる、まさに「何でも屋」なのだ。

BBTソフトウェア開発の実績紹介より

研究成果を広く世に出す技術移転

もうひとつの業務である「技術移転」とは、間接的に研究を支援する業務を指す。高エネ研は検出器からの信号を処理するための先進的な回路基板を多く開発している。しかし、大学共同利用機関法人である高エネ研は開発の成果を直接販売することはできない。そこでBBTが高エネ研に代わって、回路基板を広く大学や研究機関に製造、販売しているのだ。

研究成果を製品に使用するために必要な手続きはBBTがおこなうため、回路基板の購入者は面倒な手続きが必要ない。こうした手間を省くことで、研究者が事務作業に時間を取られることなく効率的に研究をすることができる。

また、BBTはサブライセンス(付与されたライセンスをさらに第三者に付与すること)を持っているため、BBTが他の企業に製造・販売を許可することが可能だ。このような販路の拡大により大量生産が可能となり、また価格競争も起こるため、ユーザーは安価でこれらを手に入れられるようになる。

技術移転の概念図

研究に寄り添う縁の下の力持ち

これらのサービスの細やかさから、BBTが研究者に寄り添う姿勢が伺える。私たちが目にするのは研究の結果だけのことが多いが、輝かしい研究成果を出すには日々の地道な作業が必要だ。BBTは縁の下の力持ちとして、研究を支えるノウハウを持っている。

BBTの支援によって、これからもさまざまな研究が加速していくだろう。今後の動向に注目したい。

関連キーワード
コラムの関連記事
  • 資金提供者の意思決定をスムーズに。「Dimensions」〜LabTech海外事例最前線〜
  • 「テクノロジーに哲学を」理系出身の出版社社長が語る、技術者に必要な教養【後編】
    「テクノロジーに哲学を」理系出身の出版社社長が語る、技術者に必要な教養【後編】
  • 「テクノロジーに哲学を」理系出身の出版社社長が語る、技術者に必要な教養【前編】
    「テクノロジーに哲学を」理系出身の出版社社長が語る、技術者に必要な教養【前編】
  • 宇宙の謎を解きあかせ〜宇宙最小の粒を見る飛跡検出器〜
  • 生体分子を「発見する」とは?~推理小説的に読み解く分子生物学~
  • 「SDGsとは、近江商人の三方よし」―「アグリビジネス創出フェア2018」特別トークセッション
おすすめの記事