「グローバル化」

そう叫ばれて久しい今日、世界に占める日本の存在感は今や磐石とは言い難い。日増しに大国への階段を上った20世紀後半のマインドセットは限界を迎え、政界、経済界、アカデミアそれぞれにおいて国際基準を意識せざるを得なくなっている。そんな状況下にありながら、日本から世界へ出て行く若者の数は未だ決して多くないのが現状だ。

参照元:日本人の海外留学状況|OECD、ユネスコ、米国国際教育研究所(IIE)等

経済協力開発機構(OECD)等の統計調査「日本人の海外留学状況」によると、2015年に海外留学した日本人学生の合計は54,676人。2004年のピーク時と比較すると3万人近く減少している。

今回は、そんな未来を担う日本の学生にあらゆる障壁を取り除き、長期的な留学機会の提供を図るトビタテ留学!JAPANの留学支援制度と理系人材に重点を置く理由について紹介したい。

次世代リーダー輩出を図る「トビタテ!留学JAPAN」で経済的負担を軽減

トビタテ!留学JAPANは、官民が連携して実施する返済不要の海外留学金支援制度だ。次代の日本の産業界を牽引するリーダーを輩出すべく、文部科学省と名だたる日本企業を筆頭に、教育、芸術、NPO・NGOや各界の著名人までサポーターとして協賛している。

学生が留学をする上で最も重い負担となりやすい経済面の課題を制度によって解消することで、日本の若者が海外留学に踏み出しやくする狙いだ。意欲と能力のある高校生・大学生・大学院生・短期大学生を募り、書類や面接といった厳密な審査の末に合否を決定する。(以下、合格者をトビタテ生と呼称)

支給される費用は以下の通り。年間で最大300万円程度の支給が受けられる。

  • 生活費:12〜20万円/月
  • 渡航費:10〜20万円
  • 授業料:最大30万円程度

※渡航先によって支給額は異なる

審査に合格して現地に派遣されたトビタテ生は、渡航先で日本の文化や習慣を体現することで対外的に日本の良さをアピールするアンバサダー活動をおこなう。また、留学で得た体験を各々の方法でPRするエヴァンジェリスト活動によって、国内でのトビタテ!留学JAPAN制度の認知拡大を図る。

単なる経済的な支援が受けられるだけでなく、留学の前後で各界のリーダーによる指導や、歴代のトビタテ生や支援企業との関わりも得られるという大きなメリットも魅力の一つだ。

目的に沿って5つのコースから選択可。高度理系人材の留学にも寄与

トビタテ!留学JAPAN日本代表プログラムでは、自分の目的に合致するコースを5つの選択肢から選ぶことができる。

理系、複合・融合系人材コース(一部はロボティクスや人工知能などについて学ぶ「未来テクノロジー人材枠」)
主に理系学生に海外大学・機関での研究開発や技術系インターンシップといった実践的な活動を提供する。

新興国コース
留学期間の過半を新興国に滞在し、現地語の習得や異文化理解に寄与するインターンシップやフィールドワークをおこなう。

世界トップレベル大学等コース
世界大学ランキング上位100位以内にランクインする海外のトップレベルの大学で授業を履修し、単位の修得を求められる。

多様性人材コース
スポーツ、芸術など分野や留学地域を問わず、今後の活躍を期待できる学生を支援する。

地域人材コース
国内における地域活性化に関心があり、地域に定住する意欲のある学生を対象に設けられている。

平成30年度後期(第9期)の採用者実績は以下。

コース名 採用者数
理系、複合・融合系人材コース 229人

(うち27人が未来テクノロジー人材枠)

新興国コース 63人
世界トップレベル大学等コース 91人
多様性人材コース 119人
地域人材コース 132人

引用元:トビタテ!留学 JAPAN 日本代表プログラム第9期派遣留学生選考結果|文部科学省

とりわけ、産官界の高度な理系人材に対するニーズは採用者数から一目瞭然だ。理系学生にとって、海外留学へのハードルは高い。専攻知識と語学力習得を両立させることの難しさに加えて、実習・研究室ごとに教員が必要であることや施設設備費が上積みされるなど、文系以上に学費の負担が大きいからだ。

これまでのプログラムの実例として、バングラデシュのスラムで衛生改善についての共同研究を現地NPOとおこなったり、カリフォルニア大学バークレー校の遷移金属触媒を用いた有機化学反応の研究に参加したりなど、実に多様なフィールドに理系学生を送り出している。

留学を通した自己実現をーー「トビタテ!留学JAPAN」で環境を選択

各国の大学や企業の最先端研究や途上国での技術導入に生で立ち会うと同時に、膨大な情報へアクセスするための語学力を養うことで、自身の研究を高みに引き上げるのに絶好の機会であるトビタテ!留学JAPAN。実は、本プログラムは2020年をもって募集終了が予定されている。制度の継続については、すでに社会進出しているトビタテ生による各界での活躍・成果による証明と、さらなる海外留学の啓蒙が必要となるだろう。

また、トビタテ生が学生の海外留学の気運自体を盛り上げることで、トビタテ!留学JAPAN以外の奨学金制度へと目を向けさせる効果も期待される。国内外の各教育機関や在住地域によるものなど、身近で利用できる奨学金制度に気づくことができるだろう。独立行政法人日本学生支援機構は、条件と目的によって奨学金を検索できるサービスを提供している。詳細はこちらを参照いただきたい。

人が自分について自力で変えられる領域は極めて限られている。能力や可能性が環境によってある程度規定されるとはいえ、「どこにいるか」は自分で選ぶことができる。自身の研究と視野を広げる手段として、トビタテ!留学JAPANをはじめ、海外留学を支援する各種奨学金を利用しない手はないだろう。

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