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一家に一台風車を持つ時代!?小形風車「エアドルフィン」開発物語

自立分散型の電源としての”小形”風車

風力発電所を見たことがあるだろうか?都市部に住む方々はあまり見かけることがないかもしれない。風力発電所は国内では山間部など周囲に住宅が少ない地域に建設されることが多く、直径が100メートルに及ぶいわゆる”大型”の風車で構成される。大規模に発電をおこない、多くの人家・企業に常用の電力を届けるのが使命だ。

風車はサイズに比例して発電量も大きくなる。家庭に電力を届けるのは通常大型の風車が主となるが、小形の風車にもちゃんと役割がある。直径数メートル程度の小型風車は、発電量こそ大型の1000分の1程度であるが、非常用、個人用、遠隔地の電源として地位を確立しつつある。

大きな設置面積を要する大型風車と比べ、小形風車は設置場所の選択肢が広く、自立分散型の電源として優秀である。特に日本のように山岳地や離島が多い国では、搬送の問題から大型風車の導入が難しいケースが珍しくなく、「運びやすく、場所を選ばない」小型風車の潜在的需要は高い

このニーズに応えるべく、2004~5年度に小形風力発電機メーカーであるゼファー株式会社を中心として高性能の小形風力発電システムの開発が進められた。産業界と研究機関の英知を結集し、誕生したのが小形風車「エアドルフィン」である。

エアドルフィンの概観

実用的な小形風車を目指し、集ったスペシャリストたち

世界最高水準の小形風車を目指して製作されたエアドルフィン。その大きな課題は、小形風車では達成困難とされた「発電効率の高さ」と「高い安全性と耐久性」の両立だった。両者を実現させるには、微風から強風まで様々な風条件に対応したブレード(羽)、強風時の荷重をやわらげる制御システム、部品点数を減らす設計など、全ての要素技術が噛み合う必要がある。

これを実現する為に集ったのは東レ、日立金属、産業技術総合研究所、東京大学をはじめ風車産業と研究機関、官公庁を代表する精鋭たちだった。それぞれの得意分野で開発を分担し、エアドルフィン製作のプロジェクトはスタートした。


エアドルフィン製作チーム

軽量かつ発電効率の高い風車翼を目指して

大型風車では向かってくる風に合わせてブレードの角度を最適なものに調節するピッチ制御が導入されている。一方で小形風車ではブレード・胴体自体が小さいため、このような制御システムを組み込むのは軽量化・小型化の妨げとなり、現実的ではない。加えて小形風車は1秒間に10回転以上の高速回転をするため、回転に合わせて精度よくブレードの角度を制御するのは技術的にも困難である。

そこでエアドルフィンではブレードの根元部から先端部にかけて3つの領域に分割し、それぞれの形状を「弱い風」「中程度の風」「強い風」に最適化するマルチスタガ方式によって幅広い帯域の風に対応している(下図参照)。

マルチスタガ方式によるブレード設計の概要

あえて制御を用いないことで機構を簡略化し、素材には高い剛性と軽量さを兼ね揃えたカーボンファイバープラスチックを採用。これにより、軽量化に成功した。ブレード形状の設計・解析は東京大学、成形には東レ株式会社が携わった。まさに、流体力学と素材加工のスペシャリストが手を取り合って生まれたブレードと言えるだろう。

綿密な実機試験によって生まれた「安全・頑丈」な風車

ソフト面の開発も負けてはいない。エアドルフィンには、リアルタイムで風車の回転数を計測し、強風時に回転数が上昇しすぎないように調整するパワー制御システムが開発・導入された。一見、強い風のほうが効率良く発電できるように思われるが、強すぎる風は発電機の容量を超える入力となり、機器の破損に繋がるのだ。パワー制御システムは破損を防ぐブレーキの役割を果たし、より安全な運転を可能としている。

このシステム開発を支えたのが、トラックの荷台にエアドルフィンを固定して走行する実機試験だった。トラックの運転速度を調節することでエアドルフィンに流入する風を制御するこの実験。大規模なテストコースと、複数の条件を網羅する時間を要するため、いち実験室レベルで実現できるものではなく、産学連携のプロジェクトならではの計画といえるだろう。

本実験により、風に対する回転数や電流電圧の推移、振動の強さなど、エアドルフィンの豊富な実機データが蓄積された。このデータによってパワー制御のパラメータ設計が可能となり、「安全性と耐久性」を高める風車制御が実現したのである。

トラック走行実験の様子

信頼できる分散電源としての地位を確立

高効率かつ頑丈さを備えたエアドルフィンは、2005年11月には全国各地での実証実験がおこなわれ、翌年2006年にエアドルフィンの販売がスタートした。2005年にはグッドデザイン賞、2009年には「世界最軽量の汎用小形風力発電システムの開発」として産学官連携功労者表彰の経済産業大臣賞を受賞している。さらに国内の導入に留まらず、中国が主導するプロジェクトの一環として電気自動車充電ステーションの電源として採用されるなど、海外での評価も高まっている。

かつては「小形風車は再生可能エネルギー導入の啓蒙用であり、性能は求めない」とまで言われていた小形風車。先人の努力により、実用に耐える高性能の風車が誕生している。今後も遠隔地や緊急時の非常用電源、更には個人用のサブ電源としての普及に期待したい。

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