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プラズマクラスターの製品化、支えたのは産学連携プロジェクト

「プラズマクラスター」という名称を一度は耳にしたことがあるのではないだろうか。エアコンや空気清浄機をはじめ、冷蔵庫、洗濯機、ドライヤーなど、シャープ株式会社の生活家電の多くに組み込まれている技術だ。実はこのプラズマクラスターが産学連携の賜物であったことはあまり知られていない。

プラズマクラスターは、西川和男・野島秀雄の両名を中心に、シャープの研究所で1990年代後半から2000年にかけて開発された。空気中でプラズマ放電(非平衡プラズマ)をおこなうと、「ラジカル」と呼ばれる反応性の高い物質が作られる。この物質を放出することで、空気中にただよう病原菌や悪臭の原因物質を分解できる。これがプラズマクラスターの技術原理だ。

プラズマクラスター開発初期の技報はネット上で公開されており、自由に閲覧ができる。
原理モデルの科学的妥当性について一部で議論が続いているものの、ECサイトや消費者コミュニティに掲載されている使用レビューを見る限り、一定の効果の除菌・脱臭を実現していることは確かだろう。

フィルター方式に代わる画期的な製品を

この技術が登場する以前は、ほぼ全ての空気清浄機がフィルター方式(フィルターを使って除菌・脱臭を行う方式)を採用していた。しかし、フィルターは定期的な交換が必要であるため、そのたびに追加のコストが発生する。そこから「メンテナンスフリーで継続使用が可能な空気清浄技術が開発できれば、新たな市場を開拓できるのではないか」というアイデアが生まれ、プラズマクラスターの開発が始まった。

だが、フィルター方式には大きな利点が二つあった。一つは、既存の技術を使って低コストで生産できること。もう一つは、効果が目に見えやすいことだ。

空気清浄機の本体を開けてフィルターを取り出したときに、フィルターの表面が汚れていれば、空気中の汚れが取れていることがひと目でわかる。しかし、臭いがなく目にも見えない物質を放出して空気をきれいにする技術の場合、どうすれば消費者は効果を実感することができるだろうか。プラズマクラスターの商品化にあたっては、この「効果の可視化」がコスト以上に大きな壁だった。

産学連携で科学的検証を

そこでシャープがとった戦略が、外部の大学や公的研究機関との産学連携だ。効果が目に見えないのであれば、客観的なエビデンスを積み重ねて客観的な機能担保をねらう。そのために国内外の公的研究機関に依頼して、ひたすら殺菌試験や脱臭試験を繰り返した。

プラズマクラスターのウェブサイトには、試験を行った機関名と内容がすべて公開されている。家電製品の機能を実証するために、これだけ多くの社外機関と連携したのは、プラズマクラスターが初めてのケースだろう。

プラズマクラスターの試験を行った研究機関

ひたすらエビデンスを積み重ねる手法はあたり、結果としてプラズマクラスター技術はシャープのほぼすべての家電に搭載されるほどの一大ブランドに育った。

死の谷を超えた産学連携の効果

研究開発の世界には、「死の谷」という概念が存在する。

新しい技術が開発され、その成果を製品化につなげようとする段階では、コストや耐久性など様々な問題で次のステップに進めないことがしばしば発生する。この、研究フェーズと製品開発フェーズの間に存在しているギャップが死の谷だ。企業で研究をしていると、非常に多くのプロジェクトが死の谷を超えることができないまま終了していくことを目のあたりにする。

プラズマクラスターの場合、「実際の製品で効果を証明する」という死の谷を超えることができたのは、前述したような産学連携の成果があったからこそと言えるだろう。このことは、今後日本で産学連携を推進していく上で重要なヒントになる。すなわち、始めに「死の谷をどう越えていくか」という問いを設定し、産業界とアカデミアが共通の目的意識を持つことこそが、プロジェクトを成功に導くために有効な手立てなのではないだろうか。

 

参考元・出典元

シャープ公式サイト

Hideo Nojima's research while affiliated with Samsung Medison Co., Ltd. and other places

Oh radical reduction and cell protection in the air by atomic hydrogen generated from atmospheric pressure plasma device

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