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「SDGsとは、近江商人の三方よし」―「アグリビジネス創出フェア2018」特別トークセッション

農林水産省主催の技術交流展示会「アグリビジネス創出フェア2018」が、11月20日から22日の3日間、東京ビッグサイト(東京都江東区)で開催されました。同会は全国の大学や研究機関が有する農林水産・食品分野などの研究成果を紹介することで研究機関同士や研究機関と事業者との連携促進を目的とするもので、2004年から始まりました。

フェア初日に行なわれたのは、「SDGs実装元年。産学官連携が創り出す新たなビジネス」と題した特別トークセッション昨今注目され始めている「持続可能な開発目標(SDGs)」と産学官連携やアグリビジネスがどのような形で関わるのか、登壇者がそれぞれの立場から話題を提供し、これからの時代に何をなすべきかを考える場となりました。

2015年9月に開催された国連サミットの「持続可能な開発のための2030アジェンダ」採択以降、地域創生や企業のCSR活動といった場面で「SDGs」を耳にする機会が増えました。2018年6月に閣議決定された「統合イノベーション戦略」では、持続可能で包括的な経済社会システム「Society 5.0」が掲げられ、SDGsの達成に向け、国が戦略的に動いていくことが明言されました。

今年のフェア全体のテーマは、スマート農業。スマート農業とは、ロボット技術やICTを活用した超省力・高品質生産を実現するための新たな農業です。農林水産省は実現に向けた研究会を2013年に立ち上げ、農業現場への速やかな導入に必要な方策を「農業版Society 5.0」と位置づけて、研究成果の社会実装を加速させようとしています。

農林水産省の「農林水産技術会議」は、スマート農業の推進に必要な具体的な施策を立案し、産学官連携や他の事業セクタとの連携を促進することで、研究成果の社会実装を加速させる任務を担います。

2018年は、産学官連携におけるSDGs実装元年。そこで、前述の「農業版Society 5.0」の文脈から、SDGsが産学官連携によって新たな価値をもたらしビジネス創出に貢献することに着目し、今回の特別トークセッションを開催するに至りました。

トークセッションは、農林水産技術会議事務局の久納寛子氏が司会を務めました。冒頭、日経BP社「日経ESG」シニアエディターの藤田香氏は、自身の著書である「SDGsとESGの生物多様性・自然資本経営」をもとに、SDGsとSDGsを加速させるESG(環境・社会・ガバナンス)投資について言及。アグリビジネスにおいて生物多様性がもたらす恩恵を享受してビジネスが成り立っていることを意識し、さらに定量評価を行い情報開示することによって、社会からの信頼を得ることの重要性を訴えました。以下、藤田氏の発表要旨を紹介します。

SDGs世界を変えるための17の目標(国際連合広報センターのサイトより引用)

 

SDGsとはどのように定義されるか?

地球全体と地域の課題解決を両立させるという意味では、SDGsの取り組みは、企業のCSV(共通価値の創造)活動と変わりありません。しかし、地域や地球全体の未来を異なる立場の人たちがともに考えるための適切な設計図であるというところが、CSV活動と大きく異なる点です。

世界中のさまざまな企業が、SDGsの番号に紐づけたKPIを自社でつくっています。例えば、以下は伊藤園グループの掲げるサステナビリティとSDGsです。

引用元:伊藤園公式HP

 

SDGsのポイントは「アウトサイドイン」

SDGsで一番重要なことは「アウトサイドイン」。自社が持っている技術や仕組みから何ができるのかを考えるというのではなく、17項目からなるSDGsの目標課題(アウトサイド)から逆算してどのようなことができるかを考える(イン)ことが求められます。

SDGsの本質は、リスク対応にとどまらず、課題をもとにビジネスのあり方を変え、新しいビジネスの機能や仕組みをつくるというところにあります。そのために、国や企業、大学、研究機関、地方自治体とのさまざまな連携が必要となるのです。

SDGsを生かしたアグリビジネスの一事例としてのキリンの試み

SDGsの発想をアグリビジネスに活かしている企業の例として、キリングループの取り組みをご紹介します。

キリングループは、国産ホップ農家が年々減少する中、原材料を海外ホップの輸入のみに依存するのではなく、国産ホップの産地を活性化を考えました。そうすることで産地となる地域の活性化につながるだけでなく、ホップ農園は草地を残した状態で栽培されるため、里山の生態系維持も期待できます。

さらに同社は岩手県遠野市と協定を結び、収穫体験や民泊、ビールツーリズムを行なっているほか、地域の小学校ではホップ生産と生態系について学ぶ機会を提供。このように、農家、環境NGO、キリン、地元自治体などが一体になった取り組みを行なっています。

キリンは自社事業にも踏み込んで、国産ホップを用いたクラフトビール市場の創出を目指しています。一般的に販売されているナショナルブランドのビールと異なり、クラフトビールはフルーツを原材料に使うことで、原材料を作る地域の個性を出すことができます。同社は、3種類のクラフトビールが提供できるビールサーバーを全国の飲食店に展開し、地域のクラフトビールと地域の食材を楽しむ新しい集いの場、食の場を創出しようとしています(SDGs 2.3に分類される取り組み)。

SDGsの外部発信とそのキーワード

二人目の登壇者は、金沢工業大学SDGs推進センター長の平本督太郎氏。SDGsの推進において重要な3要素を紹介するとともに、SDGsの目標達成に必要な、連続的、非連続的の両方のイノベーションの概要について言及しました。

SDGs達成への取り組みの発信を

日本ではSDGsの達成に貢献する活動を既に織り込んで事業を展開している組織が多く存在しますが、必ずしも外部に対する情報発信が十分であるとは言えません。SDGsの何番に取り組んでいるかを発信し社会に共有することで、他の業界の人たちとの新たなビジネスチャンスにつながる機会も増えています。

また、取り組みをグローバルに発信していくことによって同じ課題感を持つ人々が集まり、さらに進んだ取り組みへと歩を進められる可能性もあります。逆に、海の向こう側で起こっているとその解決方法を、自分たちの地域にも応用できるかもしれません。情報の伝達や収集、共有もSDGs達成のために非常に重要であると言えます。

SDGsで覚えておきたい3つのキーワード

SDGsの活動の本質を理解し行動を起こすために必要なのは次の3つの観点です。

 

1)地球規模
地域の課題解決が地球全体の課題解決にもつながりうることが、SDGsを他の似た取り組みと分ける大きな特徴です。例えば、能登の耕作放棄地を耕して農作物を育てて販売することは、ふるさとの風景が失われていくことに危機感を持っている世界中の人たちと同じ課題感を共有することを意味します。

2)バックキャスティング思考
バックキャストとは、現状の延長線上で解決策を考えるのではなく、妥協しない未来を描き、その後に何をすべきかを考える方法にシフトするという考え方です。現状から未来を予測して行動を起こす「フォーキャスト」とは、物事の優先順位も異なります。

3)誰ひとり置き去りにしない
これは、SDGsのもっとも根底にある考え方です。効果が高く表れそうなところに資本を集中投下するという従来の手法では、受益者がいる一方、恩恵を受けられない人も出てきます。その結果、恩恵を受けられない人は取り残されてしまいます。

例えば、産業が発達した平野部と過疎化が進む山間部の両方を抱えた地域において、どちらの地域に住む人も公共サービスの恩恵を受けられるようにするには、どうしたらよいか。SDGsではどちらかをとるのではなく、両方をとれるような仕組みを考えます。環境・社会・ガバナンスの観点をすべて満たしていくことを目標としているからです。

しかし、現実にはしばしばトレードオフの問題が発生します。その解決のために、以下のようなステップの段階的実現が推奨されています。

SDGsは「近江商人の三方よし」

これまで日本の地方部の中小企業が取り組んできたことの多くは、SDGs達成の活動に通ずるものがあります。「近江商人の三方よし」の精神、つまり、「自分たちのことだけでなく世間のことも考える」「売上だけでなく世間のことも考えることによって、地域で一流の経営者として認めてもらえる」という信念を持って経営を続けてきた経営者が、日本には多く存在します。そうした活動を海外に発信することで、今後日本を中心とした大きなムーブメントが生まれるかもしれません。

2人のゲストによる発表の後、短いながらも全体のラップアップの時間が持たれました。地球規模という「ひとつ上のレイヤーで考える」ことで、異なるセクタ共通の目標をさぐり、非連続的なイノベーションを「誰ひとり置き去りにしない」課題解決の事業として落とし込む、多視点からのビジネスメイキングの発想は、農研機構の主導で進められている「プロジェクトメイキング型からビジネスメイキング型へ」の研究支援の流れとも軌を一にするものです。SDGsに関わる農林水産・食品分野におけるビジネスメイキングの動きには、これからも目が離せません。

 

参考

  1. アグリビジネス創出フェア2018
  2. 2030アジェンダ(国際連合広報センター)
  3. 統合イノベーション戦略(内閣府)
  4. Society 5.0(内閣府)
  5. SDGsとESG時代の生物多様性・自然資本経営(日経BP社)
  6. 遠野エリアの地域活性化に関する連携協定締結(遠野テレビ)
  7. SDGs推進センター(金沢工業大学)
  8. 白山市SDGs未来都市計画(白山市)
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