ネガティブ感情を大事にしてる?心理学から考える、ありのままの自分の受け入れ方

高校生のとき、彼女に振られて浮かない顔をして学校に登校した自分をみて、ある先生が「振られたくらいでくよくよしていたら人生の時間がもったいない!物事の捕らえ方しだいで自分の気持ちをポジティブに保つことができる」と言っていたのを今でも覚えています。この時の自分は、つらいときでも物事をプラスに捉えるほうがよいと思い、いつもポジティブでいなければと自分に言い聞かせていたのですが、果たしてそれは正しかったのでしょうか。
今回は、研究を進めていくみなさんがなかなか実験がうまくいかずもやもやしている時や、人間関係でうまくいかずに気分がどんよりした時に使える、ネガティブな気持ちを受け入れる方法をご紹介いたします。

Too Positive→ Too Bad?

最近の感情心理学やポジティブ心理学の領域で、無理に感情を書き換えることの危険性が唱えられていて、感情をありのままにとらえ(これを感情の真正さ=emotional authenticityと呼ぶ)、それぞれの原因を考えながらきちんと対処していくことが大事なのではないかということを裏付けるエビデンスが多く見つかっています。

例えば、医療現場や介護施設などで看護師や介護士が常に愛想をよくしたりするように、笑顔を保つことが期待される職場では、普段感じる自然な負の感情が抑制され、精神的に消耗してしまう労働者が多いことがわかっています。(Brotheridge,Grandey,2002)

フロリダ州立大学の Garland教授によって2012年に行われた研究では、感情や思考を抑制する人は、抑制しない人に比べてより強いストレスを感じやすいことも明らかになっています。

さらに面白いことに、過度に楽観主義を続けることは短命につながるという研究も報告されています。たとえば、カリフォルニア大学リバーサイド校特別教授 Friedman博士によると、いつもポジティブでいる人は自分の体にもたらされる健康リスクを低く見つもる傾向にあり、結果的に早死にしやすいということがわかっています(2011)。

一方、Adler 教授とHershfield教授が行った実験では、被験者にネガティブな感情を抑制せず、ポジティブ、ネガティブの両方の感情を受け入れるようにすることで、被験者が日常的なイベントに対して深い意味を感じるようになったという報告もあります。

いけばなでネガティブ感情を受け入れやすくなる?

では、どうすればネガティブ感情を受け入れ、ポジティブとネガティブという二つの感情のバランスを保つことができるのでしょうか?

これに関して、とても面白い研究があります。
同志社大学余語真夫教授らによると、自然の花や葉っぱには統合失調症患者の緊張や不安を低減する効果があり、また、手先を使うことは心理的な健康につながるため、いけばなをすることで、被験者がよりネガティブ感情を受け入れやすくなるということがわかっています。
また、実際に花をいけなくても、花を眺めるだけでも一定の効果があるようです。

他にも従来からよく知られている方法として「手書きで自分の感情や体験を書くこと」が挙げられます。

ネガティブな感情を手書きで書くことで、ネガティブ思考をより客観視することは、感情の鎮静につながるだけではなく、免疫力の向上にもつながるようです(遠藤, 2009)。

ちなみに、反対にポジティブ感情を筆記することによって、
・主観的な幸福感が高まる
・よく眠れるようになる
・運動の頻度が高くなる
・身体的な不調が減る
などの効果が得られることもわかっています(Robert, 2003)。

手書きで何かを書くことを日常的に行うと、より充実した毎日が過ごせるかもしれないですね。

ポジティブもネガティブも自分の幸せのためにある

実は最近、自分が大尊敬している方に「もやもやしたときってどうしてますか」という質問をしたら、「ポジティブな感情もネガティブな感情も自分が幸せになろうとして生まれているものだから、大事にしてあげるといいよ」と言われてすごく感動しました。確かにこうして実証研究を追っていくと、自分の感情を受け入れるということは大事なのかもしれませんね。

というわけで、悲しいなぁとかいらいらしてるなぁとか感じたときには、「こう感じている自分はだめだ」と自分の内的な状態を否定するのではなく、ときどき立ち止まって、「なんでこういう気持ちになっているのだろう」と考えてみることをおすすめします。

<参考文献>

Adler J., Hershfield H. E. (2012), Mixed emotional experience is associated with and precedes improvements in psychological well-being. PLoS ONE, 7, 1-10. doi:10.1371/journal.pone.0035633 Google Scholar

Brotheridge, C.M. and Grandey, A.A. (2002), “Emotional labor and burnout: comparing two perspectives of people work”, Journal of Vocational Behavior, 60, 17-39.

Friedman, H. S. & Martin, L. R. (2011), The Longevity Project: Surprising Discoveries for Health and Long Life from the Landmark Eight-Decade Study. NY: Hudson Street Press.

Garland, E.L., Franken, I.H., Sheetz, J.J. & Howard, M.O. (2012), Alcohol attentional bias is associated with autonomic indices of stress-primed alcohol cue-reactivity in alcohol dependent patients. Experimental and Clinical Psychopharmacology, 20, 225-235.

Robert A. Emmons, Mccullough E. Michael. (2003) ,Counting blessings versus burdens: An experimental investigation of gratitude and subjective well-being in daily life. Journal of personality and social psychology 84: 377-389.

Yogo, M. Ogawa,N. & Hamasaki, E. (2008), Some promising methods of emotion activation and regulation. Paper presented at the Doshisha Symposium of Behavioral Medicine (Kyoto).

遠藤寛子(2009),「怒り経験の筆記が精神的健康に及ぼす影響」『感情心理学研究』,17,3‒11.

コラムの関連記事
  • golden gate bridge san francisco
    Air Miners ~空気に価値を見出す探究者たち~
  • 「白いうさぎを追いかけて」〜理系女子キャンプは自分の好きな道を歩む女子高生へのエールにあふれていた
  • 月3万、完済に15年。その奨学金、本当に借りますか?
  • 目指せ!コケもんマスター 地衣類GOで街中のコケを探してみた
  • 仮面ライダービルド"勝利の法則"を導く物理学アドバイザー、白石直人さんに迫る!
  • ホワイトデーに贈る、πが導くラブストーリー ~数学科女子の妄想~
おすすめの記事