『rescale』で加速する大規模シミュレーション研究〜LabTech海外事例最前線〜

スーパーコンピュータを用いた大規模シミュレーション。それは常に数値研究の最先端を切り開いてきた。「我々も気軽にスーパーコンピュータが使えたら」、そう思う研究者は少なくないだろう。その要望に応えるのが計算環境のクラウドサービスを提供する『rescale』だ。

1.初期コストの大きさが参入障壁となる

大規模シミュレーション研究を支える計算機(主にスーパーコンピュータ)と解析ソフトの技術向上は目覚ましい。年々、より高速で詳細な数値解析が可能となってきている。

しかし、それを利用できるのは潤沢な研究費と、計算環境構築に関する専門知識を持つ一部の研究者だけであった。高性能な計算機の購入には通常数百万円*を要し、スーパーコンピュータともなれば、いち企業、いち研究室がとても運用・維持できるものではない。

環境構築の煩雑さも敷居が高い原因の1つだ。一口に「シミュレーション」と言っても、そこには複数のソフトウェアが登場する。計算空間の形状などを設計するメッシャー、実際に数値計算を行うソルバー、結果の可視化やデータの抽出を行うポストプロセッサなどだ。

これらをデータの互換性を保ちつつ運用し、十分に活用するには多大な学習コストを要する。資金面の問題と導入の煩雑さ。これらは多くの研究者にとって、高い参入障壁となっている。

* 参考:HP社のワークステーション価格 (http://jp.ext.hp.com/workstations/ )

2.クラウド上にある計算環境をレンタルする

大規模シミュレーション研究の世界に求められていたもの。それは、計算の実行から結果の後処理までを統一的に扱えるシステムと、より安価な参入コストだ。この要求に応えつつあるのが『rescale(リスケール)』だ。『rescale』ではクラウド上に用意された計算環境を課金制で利用する、いわば計算機のシェアハウスだ。

解析に必要な計算ソフト・ストレージ・後処理の機能を統一的なプラットフォームで提供しており、ハード・ソフト両方の面で計算環境を提供している。計算環境をレンタルする形になるため、初期費用も安価に抑えられる。

3.使いやすいUIで手軽に大規模シミュレーション

『rescale』は直観的に操作できるインターフェースも魅力の1つであり、ウェブ上で解析に関する全ての操作が可能である。解析条件ファイルをアップロードしたら後は利用する解析ソフトウェア(流体解析、構造解析、ディープラーニングなど)とCPU、メモリなどのハードウェアを選んで実行するだけ。ポスト処理に関しても実行時にオプションで設定可能だ。

また、流体解析など計算結果ファイルのサイズが膨大になるものに対して、逐一ダウンロードすることなく、クラウド上で結果の評価が実施できることも強みだ。複数のソフトウェアを1つのウェブシステム上で扱えるため、解析全体の見通しのよさが際立つ。

利用料金については選択したハードウェアの条件と実行時間によって決定される。例として3万円パックで利用できる計算環境を紹介する。

『rescale』3万円パックでの例**
・CPU Onyx 18コア (Intel Xeon ES-2666 V3 2.9GHz)
・メモリ 60GB 一時ストレージ640GB(SSD)
・計算実行50時間程度

先に述べたように、計算機導入コストが数百万円規模であることを考えると劇的なコスト低減である。個人レベルで大規模シミュレーションが実施できる時代の到来を感じさせる。

**CAEソリューションズ ( https://www.cae-sc.com/products/rescale.html )

4.日本では伊藤忠・CAEソリューションがパートナーとして参入

既に日本においても『rescale』の時代が到来しつつある。『rescale』が提供する計算資源とソフトウェアの利用に関する窓口として、伊藤忠テクノソリューションズ***とCAEソリューションズ**が参画している。ジョブの実行に関するトラブルや、運用上でのサポートを受けることが可能だ。国内での『rescale』利用の基盤は既に整っている。

特に、わが国においては十分な研究費が用意できない研究室や企業が多く存在している。『rescale』の登場はコスト上の問題からこれまで数値シミュレーション分野に参入出来なかった研究者達を大きく後押しする。参入障壁が低くなることで、業界全体の技術レベルの向上が期待される。

***伊藤忠テクノソリューションズ ( http://www.ctc-g.co.jp/solutions/rescale/index.html )

5.まとめ

いかがだったであろうか。『rescale』の登場は、膨大な研究資金と計算環境構築技術を要する大規模シミュレーションをより身近なものに変化させている。解析内容のアイデアさえあれば、計算環境についてはクラウド上で安くレンタルして実行すればいい。非常に合理的である。大規模シミュレーションの門戸を開く、大きな一歩だ。

6.LabTech海外事例最前線

研究の未来をデザインするメディアLab-Onが、研究を加速させる様々なLabTechを紹介する本連載「LabTech海外事例最前線」は毎月新しい調査を報告しています。バックナンバーはこちらから。

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