オンラインTeXエディタ

組版システムTeX(テフ)は、書式を気にすることなく論文が書ける優れもの。ただし、環境の構築を複雑に感じる人も多い。そこで便利なのが、オンラインのTeXエディタ"Overleaf(旧WriteLaTeX)"である。

手軽に使えるが、論文には向かないワープロソフト

文書作成ソフトと言われて大体の人が思い浮かべるのはMicrosoft Wordではないだろうか。複雑な手順を覚えることなく気軽に文書を作成できる点で、やはり便利なソフトではある。

ただし作成する文書が論文となると、使いづらい点が多々あるのも事実だ。そもそもが欧文を中心に開発されているのだろう、日本語(和文)で文書を作成しようとするといろいろな不都合が出てきてしまう。設定を変えれば対処できるものの、限られたエネルギーを書式設定に割くのはなるべく避けたい、と考える研究者も多いのではないだろうか。

自由度の高いTeXは、導入の面倒さが課題

そこで頼りになるのが組版システムのTeX(テフ)である。TeXはアメリカの数学者ドナルド・クヌース博士によって開発されたシステムであり、一度スタイルを指定してしまえばあとはフォーマットを気にすることなく書き進めることができる。手間のかかる参考文献リストも自動で成形してくれるなど、心強い存在だ。

TeXを使えば、数式から楽譜まできれいに書き出すことができる。使いこなせさえすれば、これほど自由度の高いシステムは他にないだろう。

ところが、そんなTeXにも唯一の弱点がある。環境の構築に手間がかかる点だ。

TeXを使って論文のPDFファイルを作成するにはちょっとした準備が必要となる。便利な統合パッケージが配布されているとはいえ、複数台の端末すべてに環境を作るのはやはり面倒である。

オンラインで執筆、投稿までできる"Overleaf"

そこで利用したいのがオンラインのTeXエディタ"Overleaf"である。ブラウザ上で執筆できるため、ローカル(各端末)に環境を用意する必要がない。デスクから離れていても、タブレットやスマートフォンからアクセスして執筆や手直しができる。

機能面について言えば、画面右側にはリアルタイムのプレビューが表示されるため、文書の見た目を確認しながら書き進めることができる。結果的にワープロソフトと似たような使用感を実現しているのだ。


サイト上には豊富なテンプレートがすでに用意されており、論文フォーマットだけでなく、ポスターやプレゼンテーション、変わったものでは履歴書やカレンダー、書籍のテンプレートもあるのが特長だ。

さらに注目すべきは、有名ジャーナルのフォーマットが配布されている点である。こうしたテンプレートを利用すれば、形式面に気を配ることなく、内容だけに力を注ぐことができる。それだけでなく、出版社によっては"Overleaf"上から直接投稿さえできてしまう。執筆→投稿→査読→出版のフローがシームレスにつながり、研究をスピードアップさせてくれる。

共同執筆機能の便利さは「研究者のためのGoogle Docs」

"Overleaf"上で作成したファイルは、URLさえ教えておけば共著者と一緒に執筆を進めることができる。アメリカのメディアGigaomが"Google Docs for researchers(研究者のためのGoogle documents)"と称したゆえんである。

逆を言えば、URLさえ知られてしまえば改竄される可能性もあるわけだが、有料プランに加入していればその心配はない。有料プランであればパスワード付きの文書を作成することができ、アクセス権限を管理できる。Dropboxへの保存もできるようになり、使い勝手がさらに良くなるのだ。

まとめ

インターネット環境が当たり前となり、共同研究者を探す範囲も全世界へと拡大した今、オンラインでの共同執筆サービスはますます求められていくだろう。

環境づくりの面倒さが取り払われた今であれば、これまでTeXを使ってこなかった層にも利用が拡大することが考えられる。すでに"Overleaf"上では、日本語用のテンプレートも数多く配布されている。「以前は挫折したけれど、これなら使える」という研究者も多いだろう。今後の展開に期待したい。

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