元・無敗就活生が教える本当に気持ちいい財務3表の読み方

2018年3月1日、経団連所属企業の19卒就活が正式解禁となりました。とは言え、既に外資系やベンチャー企業の選考や面接を経験済み、という方も多いかと思われます。3月も3週間が過ぎ、早くも大手企業の一次面接やリクルーター面談に呼ばれている方もいるかもしれません。

さて、「就活を始めてみたけれど、企業の就活生向けホームページがぜんぶ同じに見える」「どんな企業研究をしたらいいかわからない」「面接で何を話したらいいかわからない」そんな就活生の皆さんに朗報です。

 

財務諸表を読んでください。

 

もう一度言います。

財務諸表を、読んでください。

財務諸表が就活の悩みの7割を解決してくれるはずです。

 

財務諸表とは、企業の経営状態や経営の成績が載っている報告書を指します。

就活時、わたしは第一志望群の大手企業の内定を3社もらい、解禁から2ヶ月半で就活を終わらせました。インターンやOB訪問や説明会にはほとんど行かず、企業研究のみを行い、面接では企業研究から生じた疑問について徹底的に聞き漁り、面接で落とされたことは一度もありませんでした。

なぜ私大の文系学部卒がここまで効率的に就活を進められたのか?それは、財務諸表をもとにした企業研究があったからです。財務諸表を読み、その企業がどのような経営や業績を辿っているのかを知ることで、その企業の「これから」が予測できるようになります。そして面接でのウケが良い。財務諸表を読み込んでくる就活生は100人に1人もいないため、「御社の財務諸表を拝見したのですが……」と切り出して経営の展望に関するちょっとした質問をするだけでも「この就活生は将来性を見据えている」「リスク管理をきちんとしている」と評価され、他の就活生と差別化を図れます。そして実際、財務諸表を読むことは、将来のリスク管理にもつながります。

新卒向けの企業Webページは「就活生に夢を見せる場所」です。力強い企業理念、「あなたと働けるのを待っています」と画面越しに微笑む人事部長、キラキラしたカッコイイ社会人先輩の一日。しかし、そこから企業の経営や業績の実態は見ることはできません。新卒就活という機会に、「夢を見せる場所」だけでその企業を判断することは非常に危険です。もし資金繰りに困っていたとしたら?「弊社の業績は毎年右肩上がりです」って、マイナスを必死にゼロに持っていこうとしているだけだったら?もし持っている資産の90%が借金をしているお金だったとしたら?

財務諸表からは、正真正銘の数値的事実が得られます。その事実を知ることは、企業研究や面接において就活生に大きな恩恵をもたらします。だからわたしは全就活生に「財務諸表を読めるようになろう」と言いたいのです。財務諸表は、充実した就活ライフを送るために欠かせない、と。

そもそも財務諸表って何?

すでに述べたとおり、財務諸表とは、企業の経営状態や経営の成績に関する報告書のこと。たとえばその企業がどのくらい儲かっていて、どの程度の負債を抱えているのか。あるいは、どの程度の「儲ける力」があるのか、昨年はいくら設備投資をしたのか、機械や工場のような固定資産をどのくらい持っているのか、それらが金額ですべて記載されています。

少々聞きなれない単語かもしれませんが、就活生が注目すべきは「財務3表」と呼ばれる「貸借対照表」「損益計算書」「キャッシュフロー計算書」。それぞれのざっくりとした説明は各項目に譲ります。

財務諸表を調べるには、投資家向けに企業が経営情報を公開している「IR情報」ページを探し、そのページに載っている「有価証券報告書等」にアクセスしましょう。財務諸表は有価証券報告書という報告書に含まれています。多くの場合、IRページで最新のものから数年前までの有価証券報告書を辿ることができます。もしIR情報に関するページがわからなければ、「XX(企業名)、有価証券報告書」と検索すると一番上に出てくるはずです。

森永製菓株式会社の例。TOPページからこのようにして探すことができます。

 

また、「第XXX期、第△四半期報告書」という表記で財務諸表を載せている企業も多く存在します。この報告書は、業績を四半期(=3ヶ月)ごとに区切って前年度の有価証券報告書との比較を行った評価であり、言ってしまえば「ミニ・有価証券報告書」のことです。年度ごとの業績や経営状態の移り変わりを見たいならば有価証券報告書、ここ1年や数ヶ月の変動を見たいのであれば四半期報告書をチェックしてみてください。

今回は、企業のお金の流れを読む練習のために、「財務諸表っていったい何?」という就活生向けに、各財務3表の簡単な読み方をひとつずつお伝えします。

その会社、資産の出どころ危なくないですか?―貸借対照表ざっくり読み

 

貸借対照表とは

左側に持っている財産(=現金、建物、機械などなど)、右側にその財産の出どころ(=自社の財産か、よそから借りた財産か)が記載されています。自前の財産を「自己資本」、借りている財産を「他人資本」と呼び、「今保有している資産はどのように手に入れたか」がわかります。

貸借対照表から最も簡単に読み取れるのは、「保有しているすべての資産のうち、その企業自体が持つ(=借りものではない)資産はどの程度の割合なのか?」という情報。これを知ることで、経営状態がどの程度安定しているかを知ることができます。

「資産全体に対する純資産(=自己資本)の割合」を「自己資本比率」と呼びます。

引用:『決算書は「直感」で9割読める』、梅田泰宏

 

業種によってバラつきはありますが、自己資本比率は20~40%あれば「安全な企業」であると考えて良いとされます。他人資本の割合が高くなるということは、平たく言えば「いつアテにできなくなるかわからない」状態であるため、経営は不安定になりやすくなります。

その会社、ちゃんと儲けていますか?―損益計算書ざっくり読み

損益計算書とは

1年間でいくらの売上があったのか、そこから経費や税金などのコストを引いたらいくらの利益が残ったのか、など、利益に関する金額が記載されています。

「1年間でどの程度の利益を出すことができたのか」について、以下の5項目に分けられます。

① 売上総利益、いわゆる「粗利」

売上高(=売上で得られた額)から原価を引いた額

② 営業利益

売上総利益から人件費や広告費などの経費(『販売費及び一般管理費』と表記されます)」を引いた利益。つまり、営業活動によって得た儲け

③ 経常利益

営業利益から、営業活動以外で得られた利益(預金や貸付金から得られる利益など)と損益(銀行の利息の支払いなど)を足し引きした額

④ 税引前当期利益

経常利益から法人税などの税金を支払う前の額

⑤ 当期純利益

税金などを諸々支払い最終的に手元に残った金額

 

損益計算書で就活生が注目すべきは、③の「経常利益」です。経常利益は、ざっくり言うと「非常事態が起こらない状態で儲けられる利益」を指します。経常利益からはその企業の「儲ける力」がわかるため、ここ数年の「儲ける力」が向上しているのか、それとも衰えているのかを読み取ることができます。

ではどのように「儲ける力」を見分けるのか?この経常利益と売上高の関係性について見てみましょう。売上高に対して経常利益を計算することで、その企業が営業活動によってどのくらい利益をあげているかの利益率が分かります。これを「売上高経常利益率」と呼びます。

ここで注意すべきは「売上高は利益ではない」ということです。売上高から原価や人件費などを引き、営業活動以外で得られたお金や減ったお金を勘定して始めて「利益」が分かります。いくら売上高を大きくしても、コストとして出ていく額が大きければ利益が少なくなってしまうため、売上高と併せて必ず各利益を確認しましょう。

少し古い資料ですが、中小企業庁の調べによれば、中小企業の経常利益の平均値は3.48%、大企業の平均値は4.34%となっています。とは言えグラフを見る限りでは、中小企業は0.8〜2.5%あたり、大企業は1.2〜3%あたりに多くの企業が分布していることが読み取れます。

引用元:http://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/H28/h28/html/b2_6_1_1.html

経常利益も自己資本比率と同様に業種ごとのばらつきが多い指標ではありますが、中小企業であればおよそ1.5〜3.5%、大企業であれば3%以上あれば安心と言えるでしょう。

売上高経常利益率は、

①時系列で数年分を調べて、企業の儲ける力の推移を予測する

②同業他社と比較し、他社と利益率が異なる理由を推理する

この2種類の使い方がオススメです。

余談ですが、中小企業庁の最新の資料によれば、最近の中小企業の経常利益は「過去最高水準にあり、景況感も改善傾向」とのこと。景気の善し悪し感はメディアの情報や日々の生活に依存しがちですが、このような数値からも推し量ることができます。

 

その会社、うっかり倒産しちゃいませんか?―キャッシュフロー計算書ざっくり読み

 

キャッシュフロー計算書とは

3つの軸を基に、1年間で現金がどのくらい増えて減ったかが記載されている。

① 営業キャッシュフロー:モノやサービスを売ることでいくら儲けたか(損したか)がわかる

② 投資キャッシュフロー:土地や工場などの投資にいくらお金を使ったか(反対に、それらを売っていくらのお金を手元に増やしたか)がわかる

③ 財務キャッシュフロー:借金の借り入れや返済、あるいは株式の発行数を増やすことなどで手元に出入りする現金の流れがわかる

※ 実際のキャッシュフロー計算書には「営業活動(・投資活動・財務活動)によるキャッシュフロー」と記されています

 

最後にご紹介するのはキャッシュフロー計算書。その名の通り、企業のその年の「現金の流れ」を読み解くことができます。この「現金の流れ」について少し具体的に説明します。

たとえば、あなたが5年間使うことを見込んで10万円のパソコンを買ったとしましょう。そのとき、損益計算書上では向こう5年間にわたり「毎年2万円ずつ『減価償却費』が発生している」と記載されます。一方キャッシュフロー計算書上では、「今年10万円の出費があった」と記載されます。このように、キャッシュフロー計算書には実際にその年に増えた・減った現金の額が記載されるのです。

キャッシュフロー計算書のオススメの読み方は、キャッシュフローそれぞれのプラスとマイナスを見て、全体のバランスを判断することです。プラスの場合は数字のみ、マイナスの場合は「▲」が数字の横についています。

まずは会社にとって生命線とも言える営業キャッシュフロー。健全に利益を出している会社であればプラスが普通で、マイナスだと「営業活動をしているのに儲けが出ていない状況」を表しています。当然ですが、天災などの特別な理由がない限り、マイナスの会社は避けるべきと判断できます。

次に、投資キャッシュフロー。これは、設備投資のために現金を使えばマイナスに、反対に、設備や土地などを売って手元に現金を作ったときはプラスになります。つまり、マイナスの場合は積極的に先行投資をしている証拠であり、反対にプラスの場合は、それらを売って現金を手元に集めたい状態であると推測できます。蛇足ですが、子会社の売却などを行った場合は一時的にプラスになることもあるため、公式なニュースと併せて確認すると良いでしょう。

最後の財務キャッシュフローは、借入金の返済をすればマイナス、借り入れをすればプラスになります。それ以外にも自己株式の取得や新株の発行などによるプラスマイナスはありますが、大まかに「お金を借りればプラス、返していればマイナス」と覚えておくと良いでしょう。大切なのは、プラスマイナスの理由。設備投資を目論んで借り入れたのか、それとも経営が苦しく借り入れたのか。同年の投資キャッシュフローや数年分の売上高経常利益率と併せて判断しましょう。

この3つのプラスマイナスのバランスがわかれば、その企業の現在の経営状態や今後の見通しをある程度推理することができます。

たとえば、「営業・投資・財務」が「プラス・マイナス・マイナス」である場合、これは「営業活動で利益をあげ、設備投資をしつつ借金を返済している」状態であり、経営状態は安定していると言えるでしょう。あるいは「プラス・マイナス・プラス」の場合、「営業活動で利益をあげ、設備投資をして借金をしている」ため、今後積極的に事業を拡大していくフェーズであると読み取れます。反対に、「マイナス・プラス・マイナス」の場合は、「営業で利益が出ておらず、設備を売却してお金を集めつつ借金を返している状態」であり、不健全な状態から脱するためにムダを切り詰めていることが伺えます。

このようにそれぞれのキャッシュフローを読み解くことで会社の経営状態を推理できると、同業他社との比較もしやすくなります。就活時に多いお悩みのひとつに「同業他社の大企業の違いがよくわからず、何を較べていいかわからない」という声がありますが、そんなときはぜひキャッシュフロー計算書を数期分調べてみてください。その会社の業績や経営状態から、個々の会社がくぐってきた修羅場や歴史が垣間見えるはずです。

 

おわりに

本記事では、財務諸表の読み方のほんの一部を紹介しました。今回挙げた読み方以外にも、財務諸表は知れば知るほど面白い数字がたくさん眠っています。たとえば、「A会社とB会社、少ない元手でより効率的に利益を出しているのはどちらであるか」なんてことも、実は財務諸表から読み解けてしまうのです。

普段目にする機会が少ないからこそ、就活という機会を活かして、ぜひ財務諸表をもっと学んでみてください。皆さまの就活の成功を祈ります。

 

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