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『OSF』で社会に開かれた研究室へ〜LabTech海外事例最前線〜

 

1.求められる研究の透明性

 研究者には、常に「オープンサイエンス」が求められている。具体的には、実験や分析の過程を正確に記録し公開するなど、研究に携わるすべての人々は、研究の透明性を高めるよう努めなければならない。

 

 研究プロセスを辿ってみよう。まずは先行研究を調べ、アイデアを提案し、仮説を立てて調査や実験をスタートする。ときに軌道修正をしながら、データを積み重ね、成果を論文に落とし込んでゆく。こうした一連の手続きを整理して公開するのは手間がかかるだけでなく、研究を進めるうちにあっという間に増える参考文献や実験データの管理も煩雑になっていく。

 

 また、チームで実験や論文執筆を始めると、データの共有やお互いの進捗状況の把握に手間取ることも。限られた時間の中で、効率よくオープンサイエンスを可能にするにはどうしたらよいだろうか。

 

 そこで紹介したいのが、その名も “Open Science Framework(OSF)”だ。

 

2.プロジェクトと研究ツールの一括管理を実現

 OSFは、米国の非営利団体Center for Open Science(COS)が提供する無料のプロジェクト管理リポジトリ。研究プロセス全体を、一つのプラットフォーム上で一括管理できる。

 

 また、プロジェクトの公開・非公開をコンポーネントごとに細かく設定できるため、共同作業にも適している。プロジェクト内容を一般に公開することで、新しい共同研究者との出逢いも期待できるだろう。

 

 科学研究のための便利なツールは数多くある。「データの保管には○○、バージョン管理には○○、参考文献と論文執筆には○○」と、研究ツールを複数利用している研究者も多いことだろう。すでに使用している研究ツールを一箇所で管理できるのもOSFの強みだ。

 

 OSFでは、GoogleドライブやDropboxなどのデータストレージサービスを始め、GitHubやFigshare、参考文献整理に役立つ「Zotero」や「MENDELEY過去記事)」もリンク可能だ。上記以外にも様々な研究ツールをアドオンできるため、プロジェクトの途中でもOSFを使い始めることができる。ストレージに関しては、ひとつ5GB以上のファイルは追加できないものの、アップロードできるファイルの数に制限はない。

 

3.OSFを使いこなそう

 OSFでは、作業内容を整理しやすくするためにプロジェクトの下層に「コンポーネント」を設定する。たとえば、あるプロジェクトの中に「データ」「分析スクリプト」「論文原稿」という3つのコンポーネントを作成し、サブプロジェクトとして置く。このようにプロジェクトを入れ子構造にすることが可能なのだ。

 

 チームで作業をする場合は、プロジェクト全体の編集権限をメンバー全員に与えられるだけでなく、役割によって一部のコンポーネントしか編集できないように設定することもできる。プロジェクトに参加する「コントリビューター」がOSFのアカウントを持っていない場合は、メールアドレスから招待を送ることが可能。

 

 便利な機能はほかにもある。取り込んだtxtデータ、Wordデータなどを、OSF上から編集・保存でき、ファイルのバージョン管理が簡単におこなえるのも魅力のひとつだ。

 OSFでは、ファイルの更新日と編集者が一目でわかるようになっており、同じ名前のファイルを追加した場合でも上書きせずに元のバージョンを保持してくれる。そのため、複数人が同時に一つのファイルを編集する際に、間違えて上書きをして元のデータを消してしまうトラブルも避けることができる。

http://help.osf.io/m/projectfiles/l/524182-file-revisions-and-version-control
<各ファイルには「version ID」が与えられ、編集者や更新時間がわかる>

 

 研究プロジェクトを公開する場合は、「タグ」を有効に使うことで、OSFの中だけでなくGoogle検索などからも自分の研究が見つかりやすくなる。一般公開プロジェクトは、ファイルのダウンロード数やデータの引用回数を見れば、そのプロジェクトのインパクトが一目でわかるのだ。さらに、”Analytics” という分析機能を使えば、プロジェクトページへの訪問者数の推移や人気のコンポーネントを分析することも可能。

 

 プロジェクトの公開に留まらず、OSFではプロジェクトのレジストレーションやプレレジストレーション、プレプリントの発行をすることができる。2018年8月27日現在で、OSFREGISTRIESに登録されているプロジェクト数は約27万件、OSFPRIPRENTSから検索できる論文数は約220万報にのぼる。

 

4.日本でも広がるOSF

国立情報学研究所オープンサイエンス基盤研究センターでは、OSFを国内用にカスタマイズし、GakuNin RDMという管理基盤を提供している。2020年から、全国の大学や公的研究機関向けのサービスとして正式に提供される予定だという。

 

 国内のニーズに合ったサービスのリリースは待ち遠しい。しかし、海外にいる研究仲間に向けてプロジェクトをオープンにし、国際的に価値が認められる研究にするためには、OSFのような世界に開かれたサービスを使うほうがよいだろう。

 

 日本の研究者の利用も広がっているようだ。OSFREGISTRIESに国内の大学名を入れて検索してみると、すでに登録されている日本の研究者のプロジェクトをたくさん見つけることができる。これから研究の道に進む、学部生、修士学生は、余裕のあるうちにOSFを使いこなせるようになるとよいかもしれない。また、本格的な研究プロジェクトに限らず、学会での資料共有や、大学や企業で行うワークショップでの利用も有効だろう。

5.社会に開かれた研究室へ

 2010年代初め頃から始まったオープンサイエンスの動きは、今や当然のこととなりつつある。高度化・複雑化した研究プロジェクトの透明性をいかにして高めるか。こうした努力は、研究不正や剽窃事件のようなトラブルから身を守ることにもつながると言える。

 

 また近年、研究資金調達のためのクラウドファンディングや研究の事業化の動きが盛んになりつつある。こうした状況のなかで、研究プロジェクトを一般に公開し、プロジェクトの中身について理解を深めてもらうプロセスは避けて通れない。産学官連携の場でも、OSFのようなプラットフォームの活用が期待される。

 

LabTech海外事例最前線

 研究の未来をデザインするメディアLab-Onが、研究を加速させる様々なLabTechを紹介する本連載「LabTech海外事例最前線」は毎月新しい調査を報告しています。バックナンバーはこちらから。

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