学会運営の新しいインフラ!イベントアプリ『Whova』の実力〜LabTech海外事例最前線〜

「学術会議をより便利に、運営をより簡単に。」

 

 研究者であれば誰もが望むであろうアプリケーションが誕生した。

 

 今回紹介するのは、学術会議などのアカデミックイベントの運営と、参加者同士の交流を強力にバックアップするイベントアプリ「Whova」だ。学術会議の企画内容・地図・受付情報などをスマホに集約することで、運営側の手間と参加者側の混乱が一挙に解決された。

学会運営に根強く残る”ローテク”が、大きな手間を生む

 学会運営の仕事は意外と面倒なものだ。デジタルの時代には信じがたい「ローテク」に遭遇する場面もしばしばあるだろう。

 

たとえば、参加者への案内は口頭または紙面ベースで行うのが基本であり、受付時に当日のタイムテーブルや会場の地図などを配布する。しかし、参加者全員が細部まで目を通すわけではなく、現地では案内が必要となる場面も多い。さらに、当日に急な変更が生じた場合、修正内容を記した資料の配布や口頭での周知を徹底しなくてはならず、かなりの手間がかかってしまう。

 

 運営側が公式ウェブサイトを準備し、ネット上にタイムテーブルが提供されたり、アナウンスが迅速に伝わる仕組みづくりがなされたりといったケースも勿論ある。しかし、複数の企画が同時に進行するような学会のスケジュールは複雑になりやすく、そうした場合サイトの製作にはデザイン技術に優れたエンジニアが必須となる。資金が潤沢に用意できるような大規模会議ならともかく、規模の小さい会議では難しい。

 

 当日の受付も紙面の参加者名簿とペンによる確認が主であり、ミスも出やすい上に照合に時間がかかる。スタッフの教育に割ける時間も限られているため、来客対応をがおざなりになってしまうこともしばしばだ。

 

 このように、ローテクな運営を続ける限り、学術会議の運営には多くの人員が必要となる。より効率的に情報を伝達し、参加者一人一人に対応できる仕組み作りは火急の課題と言えるだろう。

登録から後日アンケートまで『Whova』におまかせ

 「Whova」は学会全体の情報を統合し、参加者の管理を行えるイベントアプリケーションである。代表的な機能をいくつか紹介しよう。

 

 まずはアジェンダ作成機能。数多くのセッションが同時進行する学会では、タイムテーブルが複雑になりやすく、見通しのよいレイアウトを組むのも一苦労だ。Whovaを使えば発表時間や講演者の情報を入力したスプレッドシートをアップロードするだけで洗練されたデザインのアジェンダを作成することが可能だ。加えて、当日の急な日程変更に対しても参加者全員に一斉に通知できる。

 

 従来の学会運営では、大量のフライヤーと分厚い冊子を配布するスタイルが一般的。これらの情報がアプリケーション内に集約されることで、Whova公式は60%の印刷コストの削減を見込んでいる。

Whovaで組んだアジェンダの例 (Whova HPより)

 次に、参加者の登録・受付の管理機能。小規模な学会では紙ベースで参加者を一人一人確認するのが一般的であるが、Whovaを使えばQRコードをかざすか、アプリ上の参加者一覧をワンクリックするだけで受付が完了する。

『Whova』による受付システム (Whova HPより)

 さらに、事後アンケートの収集や投票も簡単に行えるため、運営の改善や懇親会などのイベントへの参加率の向上も期待できる。

 

 また、参加者同士の意見交換、交流を加速させる為のコメント機能やチャット機能も見逃せない。発表内容に関して意見があればアプリを通じて直接コメントしたり、複数人で議論を交わすことも可能だ。従来であれば交流の機会を逃してしまっていた場面でも、これなら学会が終わった後でもスムーズにコミュニケーションをとることができる。

 

 Whovaを用いての運営が標準になれば、参加者全員がアプリ画面を目にするため、広告効果を高めることにも繋がる。スポンサーとなる企業・大学にとっては喜ばしい話だ。

 

マンパワー不足を補い、よりよい学会運営を

 日本学術会議のデータによると、現在日本には2000を超える学会組織が存在しており、学術会議は一般的にこれらの団体がホストとして運営する。学会組織といっても、その多くは研究員や大学の学生で構成されており、彼らが実質的な運営を行うことも珍しくない。

 

 本来研究発表に時間を割くべき人々が学会運営の仕事で忙殺されるのは本末転倒である。Whovaはこのような現状の課題を解決する新たな一手となるだろう。マンパワー不足を補い、尚且つ充実したサポートを提供する。より洗練された会議が今後開催されることを期待したい。

まとめ

 Whovaは運営の仕事量を削減し、参加者同士の交流を加速させる。チェックイン管理やアジェンダ機能、アプリ内の地図により、運営側の案内にかかる労力のほとんどが削減され、参加者はこまやかなサポートを受けることが可能だ。

 

 会場の案内だけでなく、企画へのコメント機能や個人チャット、グループチャット機能によって活発な議論を後押しする効果も期待できる。ただ話を聞くだけだった受け身の学会からより多くの議論ができる場へ。Whovaが学会を成功へと導く。

LabTech海外事例最前線

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