大学院か就職か?私が院に行かず学部卒でエンジニアになった理由

はじめに

「理系であれば大学院を修了してあたりまえ」、そんな構図が少しずつ崩れようとしているようです。投資銀行・コンサルティングファームであれば、研究内容自体が業務推進に役立つといったことはほぼないので、学部卒でも構わないのかもしれませんが、エンジニアであっても大学院に進まず、学部で就職するといった道を聞くようになりました。

どうしてそういった選択をしているのでしょうか?実情を詳しく聞いてみましたので、ご覧ください。(本記事は外資就活ドットコムからの転載です。)
 

とにかく動くものが作りたくて、研究がじれったかった

私は某帝大情報系学科に所属しており、同期の9割以上が大学院に進学する中、就職活動をしてメガベンチャーのエンジニアになりました。大半が大学院にいくので、流されるままに…という方もいるでしょうが、理系の学生にとって「大学院に行くか学部卒で就職するか」ということは、一度は悩む問題ではないでしょうか。

考え方のヒントになるか分かりませんが、私がなぜ院進学しなかったについて、自身の経験に加え、学部卒で就職した友人や大学院に進学した友人・大学院を中退してエンジニアになった友人から得た経験談をもとにお話ししたいと思います。
※なお、文章内で「エンジニア」という言葉を多用していますが、基本的にはWebサービス開発に関わるソフトウェアエンジニアを想定しています。

大学での進路を考える際、「新しいWebサービスを作りたい」「実際に人に使われて役に立つものを作りたい」と思い、開発について勉強できる情報系の学科を選択しました。当時は修士課程へ進学するものと思っていたのですが、いざ研究室に配属されてみると「これを研究して、社会で役に立つのはいったいいつになるのだろう」と感じる日々が待っていました。

研究が社会に影響を与えるまでに時間がかかるのは当たり前のことですが、直接的な影響・スピード感のある反応に価値を感じる私にとっては、研究へのモチベーションを維持するのは大変でした。先輩たちに話を聞いても、研究は辛いけど楽しいという方もいる一方、私と同じような「コレジャナイ感」を抱えている人もいて、「将来がもっと見えていたなら学部卒で就活していたよ」と言っている方々も一定数いました。9割以上が大学院に進学する学科とはいえ、皆が皆研究をしたいわけではないのです。

新しい技術や知見を開拓せずとも、既存の技術で作れるものはたくさんあるのではないか。こういった想いが募っていくようになり、研究にあと2年を費やすよりも、学部卒でエンジニアになって、動くもの・使われるものを今すぐにでも作りたいと考えるようになり、就職活動を始めました。

社会人になったほうがコーディングは身につく?!

実際、修士や博士の先輩方と共に1年間研究をしたのち、大学院に行かずメガベンチャーのエンジニアとして働いてみた結果、私の選択は間違っていなかったと思っています。その理由については以下の3点です。

1.院ではコーディングスキルがさほど身につくわけではない

大学院で研究していればエンジニアとしての下地が出来ると思っている方も多いと思いますが、それは基本的に間違いです。なぜなら、大学院の研究で身に付く力と、サービスにおいてコードを書いて開発する力はまったくの別物だからです。

一般的に、大学院で身に付く主な力とは、研究の基礎知識を身に付け、自分なりの仮説を立て実験により検証し、それを他人に分かりやすいプレゼンや論文にまとめる力です。それ自体は非常に重要な力ではあるのですが、研究発表に重きを置く以上はプログラミングはツールであり、研究能力には院卒と学部卒で大きな差があれど、開発能力は実は期間の割には大して変わりません。

例えばC++を使ってパケットの解析や通信手法の提案を2年間行っていた先輩の話だと、プログラミングは検証および理論の実証やデモのために用いるのがメインで、サービス開発に関する力としては、C++と通信周りの実装に慣れた程度だと話していました。そのため大学院を出れば開発チームに入って集団の中でスピーディにコードが書けるようになるかというと、決してそうではありません。

もしあなたがソフトウェアエンジニアとして活躍したいのであれば、エンジニアとして働くことが1番の近道です。

院で研究していた内容が、仕事に直結する人はほとんどいません。 大半の人は研究分野と直接的な関係のない分野に入り、研修や開発現場で1から勉強して力をつけているのです。

2.現場のプレッシャーが最速成長を促す

フルタイムかつ実戦的な環境で働いていれば、0からでも技術はすぐに身につきます。 エンジニアとして開発現場に配属された場合、企業によっては3ヶ月も経てば即戦力としてサービス実装を任されるようになるでしょう。実装を任されるということは、自分の手がけたプログラムがバグを出したり納期に間に合わなかったりすると、売り上げ損失に直結するということです。

例えばECサイトやソーシャルゲームでは、サービス規模にもよりますが、あなたが実装しきれなかったことで、100万円、1,000万円単位で損失が発生してしまうかもしれないのです。月間の売り上げが億単位のサービスも増えているため、あり得ない話ではないでしょう。

このような環境下において、担当した仕事を必死にこなしていくうちに、携わっているプロジェクトのレベルに追いついていくのが実情なのです。

また、個人的なサービスの開発経験が豊富にあっても、それだけではIT企業サービスの開発現場ではほぼ通用しません。企業が提供するサービスは、個人のサービスに比べて要求水準もサービスの利用者数も桁違いなので、大量のトラフィックを短時間かつ少ない資源でさばいたり、サービスがより使われるために絶え間ない開発や改修を行わなければなりません。

3.現場で2年コーディングし続ければ、十分すぎる技術力がつく

あなたが大学院で過ごしている間、学部卒のエンジニアは2年間フルタイムで開発経験を積んでいます。勉強方法や効率の差はあるものの、結局は書いたコードとかけた時間の量がものをいいます。

例えばフルタイムで2年働いた場合、年間休日約120日(土日/祝)として、2年×240日×8時間=約3,800時間もの時間を、エンジニアとしての実務経験にかけることになります。これは大学や大学院からプログラミングを勉強してきた人の経験量を遥かに上回る数字です。 実際私が働いている会社でも、プログラミング経験が無い状態で入社するエンジニアもいるのですが、2年も経てば開発リーダーを担当する人がたくさんいます。学生時代のちょっとした経験の有無は、入社後の努力で簡単にひっくり返ってしまうのです。

また学部卒だろうが修士卒だろうが、会社に入ってしまえばスタートラインは同じです。現に私のいる会社では、学部卒・修士卒関係なく研修やOJTを通して学んでいきます。修士卒の方が学部卒より優秀かといえば必ずしもそういうことはなく、結局は入社後の努力によるところが大きいというのが率直な感想です。大学院に行きたい理由がエンジニアとしての下地を作るためなのであれば、進学せずに最初から働いた方が、よほど良い選択ではないかと思います。

Googleに行きたい場合はオススメできないかも…

このように学部卒で働くことを推奨してはいますが、ニーズによっては大学院に行った方がいいと思われるケースもあると思います。3つあげてみます。

1.学生特権を活用したい

大学院に進学することで社会人では得られない、学生だからこそ得られる特権があります。さまざまな企業でインターンをしたり、色々な社会人にアポをとって話を聞いたりできるなど、利害関係やシガラミから話を聞きにくくなる社会人とは異なり、自由に行動することができます。

また進路やキャリア以外でも、学生のうちにやり残したことがある人もいるでしょう。研究室によっては難しいかもしれませんが、学生は一般的に社会人よりも自分の都合に合わせて時間を使えるので、起業や学生団体、サークル・旅行や遊びなど、モラトリアムを満喫するために進学するのもよいと思います。学生の特権は就職したらなくなってしまうものなので、使い倒すために大学院に行くのもありではないでしょうか。

2.学術的素養を十分に養いたい場合

研究自体に興味関心があり、もう少し研究をしてみたいのであれば、大学院に進むという選択肢もありだと思います。単に進学するだけはおすすめしませんが、明確な目的意識を持ち2年間で結果を出すことが出来れば、相応の自信も付きます。また学問における本質を捉える力や議論を行う能力は、学部卒と比べて飛躍的に優れたものになるでしょう。

エンジニアに学術的素養や研究能力を求める企業を目指す場合は、修士課程での研究成果や経験が役立つかもしれません。

3.技術的要素が強い分野を将来やりたい場合

機械学習や自然言語処理、人工知能、ディープラーニングなど、学術的要素が強い分野のスペシャリストとしてエンジニアになりたい場合、大学院で研究を続けた方が良いでしょう。これらの分野は大学院での研究内容を仕事に直結させられることも多く、また、入社後に一から学ぶのも非常に難しいためです。

やりたい分野で学術的要素がどれくらい重要なのかがわからない場合は、教授や開発現場で働いている人に直接聞いてみるのがいいでしょう。

また会社にもよりますが、アメリカでは情報系修士が、エンジニアとして就職する必須要件になっていることが往々にしてあります。某帝大情報系院ではちらほらGoogleに就職する方を見かけますが、残念ながら学部卒をこれまでみたことがありません…。

おわりに

もしこの記事を読んで、それでも就職するか進学するかで悩むのであれば、インターンなどに行ってみることをおススメします。 会社の雰囲気も見られますし、社員と話せる機会もあります。 会社にしても大学院にしても、現場の人と話してみるのが何よりも参考になります。自分の考えを率直に話せば、相談に乗ってくれる方もいるでしょう。

学部卒で働くか大学院に行くかは、結局何をやりたいか次第です。 やりたいことを学生としてやるか社会人としてやるか、また修士課程の2年間をたかが2年と見るかされど2年と見るか、どちらが良いかは人によって違います。 自分のやりたいことを洗い出して、実際にやっている人にぶつけてみましょう。 皆さんが後悔のない選択をできるよう願っております。

本記事は外資就活ドットコムからの転載です。

【関連記事一覧】

海外で研究するということ~理系海外大学院生に聞いてみた

理系学生が研究室の拘束をうまく振り切って就活する方法

大学院生の就活~学部生と比べて不利なのか?強みをどう生かすべきか?~

Google/Microsoftにソフトウェアエンジニアとして就職する方法

総合商社を蹴ってベンチャー!?日系選考で感じた違和感と「選んだ選択肢を正解にする」冒険のススメ​​​​​​​

キャリアの関連記事
  • 異分野の技術をつなぐ場を企業へ提供―「リンカーズ」が目指すものづくり産業の変革
  • 尖ったAI人材を育むには?AIインキュベーションKERNELから未来のイノベーター達へ【ディープコア✕NVIDIA】
  • 研究者はいかに社会で生きていくか?キャリアディスカバリーフォーラムで見つける、研究者の未来の仕事
  • 理系脳を生かせ!社長人材を求むUSEN-NEXTグループの若手社員インタビュー
  • 必要とする人に最適な広告を!株式会社GeeeN若手エンジニアインタビュー
  • 全ての業界で求められるデータサイエンティストの最先端と魅力に迫る ARISE analytics様インタビュー
おすすめの記事